【プロの観戦眼14】ジェイミー・マリーのテイクバックならぬ『テイクフロント』を見よ〜森稔詞<SMASH>

【プロの観戦眼14】ジェイミー・マリーのテイクバックならぬ『テイクフロント』を見よ〜森稔詞<SMASH>

Iフォーメーションからのジェイミー・マリーのバックボレー。4コマ目(左上)がテイクバックだが、身体よりも前にセットしており、ほとんど引いていない。左下は森稔詞氏。写真: THE DIGEST写真部

このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のこのショット」がすごいという着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。

 第14回は元ナショナルメンバーで、現在は亜細亜大学テニス部ヘッドコーチを務める森稔詞(もり・としつぐ)氏に話を聞いた。森コーチが注目するのは、ダブルスの名手ジェイミー・マリーのボレーとリターンだ。

「特に彼のボレーを見ると、今まで思っていた常識が変わります」と森コーチ。どこがすごいのか?「とにかく振らないんです!」。

 よくボレーは引くなと言われるが、森コーチいわく「ジェイミーは本当に忠実に身体の前にラケットを用意します。フォアもバックもショートテイクバック……いいえ、あれはテイクバックというより『テイクフロント』ですよ!」。

 だからこそ、ジェイミーは相手にアタックされても難なく返すことができる。

「技術的に理にかなっているんです。時間がない状況で0コンマ何秒を使うなら、ラケットは後ろよりも前にセットした方が効率的。後ろに引くとそこから振るから時間が足りなくなります」
  前にラケットを置いておけば、そこから動かさずにボールをさばける。ボレーだけでなく、リターンも同様だ。「ほとんど引かないから、速いサービスにもそのまま面を合わせられるんです」。その瞬時の対応力が、ジェイミーをダブルス世界ナンバー1たらしめた理由だと森コーチは分析する。

「実際のところ、彼の打ち方が誰にとっても正解かどうかはわかりません。でもそれはともかく、こういう方法もあるんだということを知ってほしい。それによって自分のテニスの幅が広がります」

 今季のツアーは終了したが、来季はぜひジェイミーの“準備”に注目してほしい。見て驚くだけでなく、あなたのテニスのレベルアップにもつながるかもしれない。

◆Jamie Murray/ジェイミー・マリー(イギリス)
1986年2月13日、スコットランド・ダンブレーン生まれ。191cm、84kg、左利き、両手BH。2004年にプロ転向。ダブルスのスペシャリストで、これまでにツアー通算26勝、2016年には全豪・全米のタイトルを獲得し、ランキング1位に上り詰めた。アンディ・マリーは弟。

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

【PHOTO】ジェイミー・マリーの前衛でのバックボレー、30コマの『超分解写真』
 

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