【プロの観戦眼20】トップスピンとフラットドライブの打球感覚を完璧に備えたアルカラスのフォアを見よ!〜吉冨愛子<SMASH>

【プロの観戦眼20】トップスピンとフラットドライブの打球感覚を完璧に備えたアルカラスのフォアを見よ!〜吉冨愛子<SMASH>

19歳にして多彩なショットを駆使するアルカラス。特にスピンとフラットの両方の感覚を持ち合わせているのは特筆に値する。左下は吉冨愛子プロ。写真:Getty Images、田中研治

このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがすごい」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。

 第20回は、ITFツアーのダブルスでキャリア8勝を挙げている吉冨愛子プロが解説。女子選手離れしたトップスピンが武器の彼女が注目するのは、今を時めく超新星、カルロス・アルカラスのフォアハンドだ。特に、トップスピンとフラットドライブの2つの感覚を完璧に備えているのがスゴイという。

「あれだけ弾むトップスピンを打っていて、いざ強打する時はフラットドライブの低い弾道でとんでもなく速い! これはスゴイことなんです」と吉冨プロ。なぜスゴイのか?

「スピナーで回転の感覚になじんでいる人が、ドフラット的にスピードも出せる。全く違う2種類の打球感覚を持っているわけです」

 通常トップスピナーの強打は、スピンをベースにできるだけ厚く捉える性質のもので、いくらスピードを上げてもやはり落ちる球種、言うなれば“エッグボール”のような弾道になる。しかしアルカラスの強打は「明らかに速くて、スピン系の弾道とは思えない」とのこと。男女の違いはあれトップスピナーである吉冨プロの目から見ると、「そんな打ち分けができる10代なんてまずいない」そうだ。
  例えばナダルは、今でこそ弾道の高いスピンと、破壊力のある強打を打ち分けるが「10代の頃はそこまでできていなかったように思います」と指摘する。

「ナダルやジョコビッチは、もともとはディフェンシブなところからスタートし、だんだん攻撃力を高めていきました。でもアルカラスは19歳にしてディフェンシブとアグレッシブの両方が最高級。後ろでラリーしていて、コートの中に入っていくスピードが本当に速い!」

 しかもアルカラスは、それに加えてドロップショットやロブの感覚にも優れる。「引き出しをいっぱい持っていて、ペースの上げ下げができる」のが類まれなところだ。

 アルカラスのスピンとフラットドライブの差は、「高い位置から見ても実感しにくいので、なるべくコートに近いレベルで見たい」と吉冨プロは言う。通常のテレビ中継は俯瞰が基本だが、それでも時々、低いアングルからの映像が入ることがある。そんな時は2つの球質の差をぜひ見比べてみてほしい。

◆Carlos Alcaraz/カルロス・アルカラス(スペイン)
2003年5月5日、スペイン・エルパルマル生まれ。185cm、72kg、右利き、両手BH。16歳でツアーデビューを果たし、21年に18歳でツアー優勝、ネクストジェンATPファイナルズを制す。今年はマスターズ1000のマイアミ、マドリードをはじめ4タイトルを手にし、一躍ブレーク。コーチは元世界1位のファン・カルロス・フェレーロ。現在ATPランク6位。

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

【連続写真】将来の王者候補アルカラスの動かされても力強く返球したフォアハンド
 

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