「成功後の心の準備をしなくてはいけない」シフィオンテク自らが語る、長く女王の座に居続けられる理由<SMASH>

「成功後の心の準備をしなくてはいけない」シフィオンテク自らが語る、長く女王の座に居続けられる理由<SMASH>

シフィオンテクは、成功後も安定した成績を残し続けられていることを「私が最も自分を誇りに思う点」だと語る。(C)Getty Images

大会3日目――レイラ・フェルナンデスが2回戦で敗れた時点で、昨年の女子ファイナリストが2人とも、全米オープンテニスから姿を消した。加えるなら、2018年と20年全米優勝者である大坂なおみ、さらには先のウインブルドン優勝者のエレナ・リバキナも1回戦で敗退している。

 若くしてグランドスラムタイトルを手にしたシンデレラストーリーの体現者が、その後不振に陥るのは、女子テニス界ではよく聞く話。そのような風潮の中で、良い意味で異彩を放つのが、現世界1位のイガ・シフィオンテクだ。

 彼女が19歳にして全仏オープンを制したのは、まだ世がパンデミックに揺れる2020年10月。例年より5か月遅れの深秋のパリの、観客もまばらなセンターコートでの戴冠だった。

 その後もシフィオンテクは、21年シーズンで2度のツアー優勝を手にし、ランキングも初のトップ10入りを果たす。グランドスラムでは全仏オープンのベスト8が最高だが、他の3大会も全て4回戦に進んだ。シーズンを通し16大会に出場し、初戦敗退は僅かに1度。その相手も当時20位、今は5位のオンス・ジャバーなのだから、決して取りこぼしの類ではない。

 今年6月には再び全仏オープンを制し、5か月間にわたり1位に座する彼女が、安定した結果を残せている理由とは……?

 その問いに対し現女王は、「それこそが、私が最も自分を誇りに思う点なので聞いてもらえてうれしい」と控えめに笑った後に、こう続けた。

「“成功後の心の準備”をしなくてはいけないというのは、私にとっては驚きの発見だった。だっていつも、“失敗から何を学ぶか”ばかりを考えてきたから」
 「グランドスラム優勝は人生が変わる瞬間でもある。だから私は、他の大会でも同等のレベルのプレーができることを、自分自身に、そして他者にも証明したいと思っていた。それができたのは、自分でも誇りに思うこと」

 日頃は謙虚な彼女が、「誇り」という言葉を繰り返し使うのは、珍しいことだった。その彼女は“成功後の心の準備”について、以下のようにかみ砕いて語る。

「グランドスラムを優勝したことで、オフコートでの新しい仕事や義務も増えていった。だからこそ自分の中で、至るところでスポットライトを浴びることを望むのか、それとも自分の“仕事”に集中するのかのバランスを取る必要があった。

 ローランギャロス(全仏OP)を優勝した後の数か月間、自分の心が、誤った方向に向かっていたことをよく覚えている。自分がテニスで得た成功を、ビジネス面の拡張に使おうと思ってしまった。

 その結果として気が付いたのは、何より大切なのは良いプレーをすることであり、トレーニングやコート上の出来事に集中するべきだということ。私は比較的早い段階でそれに気付くことができたし、もしかしたらそれが、他のケースとの違いだったのかもしれない。いずれにしても、自分の中での優先順位をはっきりさせること、そして良い人たちを周りに置くことが重要だと思う」

 試合後の会見で急に問われた質問にも、これだけ理路整然と答えられるあたりにも、彼女がいかに自覚的に“成功後の心の準備”を行なってきたかが伺える。加えるなら彼女は、コート上以外の外界に無関心なわけではない。むしろ、ウクライナの支援や、メンタルヘルス問題に関しても自らの意見を発信し、イベント開催や寄付などの形で実行に移している。

 コート上の戦績のみならず、オフコートでの立ち居振る舞いも含め、彼女が現女子テニス界の女王なのは間違いない。

現地取材・文●内田暁

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