テニスの大会でありがちな光景。ノーアドはどちらがやる? 5−2を大量リードと思っていない?【鈴木貴男コラム】

テニスの大会でありがちな光景。ノーアドはどちらがやる? 5−2を大量リードと思っていない?【鈴木貴男コラム】

ATPカップでも40−40後、次の1本で決める「ノーアドバンテージ方式」が採用されていた(C)Getty Images

2020年のツアーも開幕し、ATPカップで気持ちも高まってきていることと思います。質の高いテニスを見ていると、プレーをしたくなりますし、そんな時は良いイメージでできるはずです。

 プロのシングルスは40−40になった場合、どちらかが2ポイント上回るまで続きますが、プロのダブルスや、ジュニア・一般プレーヤーの試合では、次の1ポイント取ったほうがゲームを取る「ノーアドバンテージ(ノーアド)」方式で行なうことが主流です。

 取ったほうがゲームを獲得できるという緊張感、プレッシャーを感じる場面です。なるべく気分良く、有利に進めたいところですが、草トーナメントに出場している方がやってしまいがちなのは、ここで「どっちにする?」「いいよ」「どうぞ」などと、どちらサイドでやるかの相談や譲り合いを始めてしまうことです。
 
 相手の状態を見て、分析して…などと考える人もいるのかもしれませんが、サーバーが左利きの場合ならともかく、1セットマッチや、8ゲームマッチの短期決戦で、ゲームごとにそれをやっていたら、その場で気持ちを作っていかなくてはなりません。強いペアはこういう場面でどちらがやるか決めています。
  メンタル的に強いほうでもいいです。リターンがうまい、とにかく返せる、パートナーはネットが上手だから役割分担…といったプレースタイルで選んでもかまいません。「この試合は自分がやる」でもいいでしょう。とにかく試合に入る前に、どちらがやるか決めておくのです。

 これによって生まれるメリットは、簡単に言うと「腹がくくれる」ことです。
 ペアの雰囲気は、ネットを挟んでいても必ず相手に伝わります。まるでいつもそうしているかのように「フォアで」「バックで」と、堂々と振る舞えば、相手は何となく嫌なものです。逆の立場から見てください。間髪入れずにサイドを言われたら、「んっ」って思いませんか?

 1ポイントは、エースでもミスでも同じ1ポイントです。そしてテニスは重要な局面でいかに相手にプレッシャーをかけられるかも大きな要素です。そんな時に「堂々と振舞う」ということは、しておくべきことの一つです。
  また、1セットマッチでよくある落とし穴として挙げられるのが“スコアのマジック”です。
 3−0、4−1、5−2といったスコアは、一見すると一方が大量リードをしているように思われがちですが、ここに共通していることは「たったの1ブレークでなり得るスコア」ということです。

 皆さんもこのスコアでリードしていたにもかかわらず、相手に追い上げられた…という経験があるのではないでしょうか?
 
 リードしている側は、もう勝てると安心してはいけません。よほど実力の違いがあればそのまま行けますが、デュース1本のノーアドで取った1ブレークならば、安心している場合ではありません。
 
 一方、リードされている側は、なぜそのスコアになったのかをよく考えてください。ボールを入れにいくだけになって展開が不利になっていないか、打ち過ぎて先にミスをしていないか、リターンがポーチの餌食になっていないか、相手はフォアよりバックのほうが得意じゃないか…などといったことです。
  プロはダブルスの時、こういったことを頻繁に話しています。試合の序盤などは、自分のテニスの調子を掴んでいくことも大事なので、作戦というよりも、相手をリサーチし、それをパートナーと共有するといったイメージです。

 このコミュニケーションも、一般のプレーヤーはおろそかになりがちです。例えばロブが多い相手なのに、ネットに詰めていたり、ポーチで叩かれているのに1本もストレートを打たなかったりということもあります。2人で話し合いをしていきながら、大事な場面でこういう穴をふさいでいけば、やるべきことがわかっていきます。
 
 要は数字だけを追ってしまうと、大事な局面での心理的な影響が大きく、何をすべきか見失うということ。相手のプレー、自分のプレーに意識をフォーカスしていくことでリードしていても、されていても焦ることなく対処できるようになるのです。

●鈴木貴男(すずきたかお) 
Team REC
1976年9月20日生まれ。グランドスラム、ATPツアーを転戦した経験を生かし、現在はプロテニスプレーヤーであるかたわら、ツアーコーチ、トップジュニアの指導、そして愛好家へのクリニックとマルチな活躍を見せている。ジャパンオープンシングルスベスト8、ダブルス優勝。全日本選手権3回制覇。最近はテレビのテニス中継を解説も行なう。
 

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