ランキングポイントは? 本当に延期?世界各国で知らせを聞き、帰国したテニス選手たちが抱える不安

ランキングポイントは? 本当に延期?世界各国で知らせを聞き、帰国したテニス選手たちが抱える不安

BNPパリバ・オープン会場の、大会中止を知らせる電光掲示板。(C)GettyImages

「新型コロナウイルスの状況に鑑み、選手やファンの安全を最優先させるためにも、大会は当初の予定日には行なわないことにしました」
 
 BNPパリバ・オープン(インディアンウェルズ)から、選手をはじめとする関係者たちにそのような通達が届いたのは、女子予選開幕のわずか16時間ほど前だった。
 選手間で囁かれる噂を耳にしていたダニエル太郎は、やはりと思い、日本でのデビスカップ後に現地に急行した内山靖崇は、呆然と「やりきれない」気持ちを抱える。

 練習を終え、まだ発表されぬドローと試合予定に気を揉んでいた日比野菜緒は、シャワーを浴び終えた時にその報を知った。
 濡れた髪にドライヤーを当てながらも、「2週間後のマイアミ・オープンは開催されるのかな?」「日本に帰らず、アメリカの後はヨーロッパに向かった方がいいだろうか」などの疑念が次々胸に迫る。それは大会参戦予定だった全員が、異国の地で持て余した「宙ぶらりん」の想いだった。

 日本人を含む多くの選手が抱えたこれらストレスの要因は、実に多岐に渡っている。
 一つは当然ながら、先行きが見えぬ不安。「第5のグランドスラム」の異名を取り、“選手が最も好きなトーナメント”に毎年選ばれるほどの運営を誇るイベントが飛んだ事実は、もはやどの大会にも中止の可能性があることを意味する。
  毎日のように変化するコロナウイルスに伴う世界情勢も、見通しと決断を困難にした。
 また、ランキングポイントがどうなるかも、東京オリンピックの当落線上にいる選手たちの気持ちを大きく揺さぶる。

「夏まではツアー全体が中断となり、その間、ランキングは凍結状態になるらしい」

「ATPとWTAは中断するが、ITF(国際テニス連盟)主催の下部大会は行なわれるようだ」

 それら雑多な噂が飛び交うが、公式な発表はなかなか出ない。
「僕が思うには、今の状況だとツアーを普通に回るのは、クレーシーズン後までは不可能に近い」と持論を述べるのは、ダニエル太郎だ。
 「この事態が落ち着くまで、ツアーをキャンセルするべきだと思います。毎週、世界のどこかで大会は必ずキャンセルされるでしょう。その最中に、他の場所では大会が開催されポイントを貰っている選手がいると、完全にアンフェアになってしまいます」
 多くの選手たちの思いを、ダニエルは代弁した。

 その衝撃のインディアンウェルズ中止の報から、3日後の3月11日(水)。世界保健機関(WHO)が出した「パンデミック」宣言を引き金に、事態は加速度的に動きだす。

 まず米国が、欧州からの入国者を向こう30日間禁ずると発表。それから程なくし、翌週にアリゾナ、そしてメキシコのグアダラハラで開催予定だった男女のチャレンジャーの中止が決まった。

 さらには、マイアミ・デイド郡の郡長が発した「緊急事態宣言」に伴い、強気だったマイアミ・オープンも正式に中止(もしくは延期)を表明する。それに前後し、ATPとITFがいずれも、6週間の全トーナメント・イベントの中断を明らかにした。

 WTAは現時点では、まだボルボ・カー・オープン(アメリカ)やクラロコルサニタス・オープン(コロンビア)など複数のツアー大会中止の発表にとどまっているが、他と足並みを揃えるのは間違いないだろう。
  テニス界が激動したこの日、加藤未唯は、メキシコのイラプアトにいた。単複でのランクアップを視野に、4大会連続のスケジュールでメキシコ入りしていた彼女は、モンテレイのツアー大会でダブルス準優勝の好スタートを切る。そして今週は、イラプアト開催のITF$25,000大会に単複で出場していた。

 そのダブルス2回戦を勝利で終えたのが、夜の10時近く。遅い夕食を済ませ、出場予定だったグアダラハラ大会が中止になったため急きょ帰国の便を予約し、ベッドに入った時にはすでに日付が変わっていた。

 そうして翌朝――目を覚ますとほぼ同時に、コーチから「今出ている大会がキャンセルになった」という驚きの報を聞かされる。「そんなことありえるの?」と一瞬耳を疑うも、国際情勢も不安定な最中、一刻も早く帰国するに越したことはない。予約したばかりの便を再び変更し、その日の夕方には飛行機に飛び乗った。

 今現在、多くのテニス選手は母国および練習拠点に戻り、今後に関する情報を待つ日々を過ごしている。

 ランキングポイントの処置についての、公式見解はまだ発表されていない。
「延期」とされたBNPパリバ・オープンは9月以降の開催を検討されているが、全ては未定のままだ。

文・内田暁

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