「なぜ、ネガティブな報道ばかりなんだ…」理不尽な地元メディアの扱いにワウリンカが反撃!【男子テニス】

「なぜ、ネガティブな報道ばかりなんだ…」理不尽な地元メディアの扱いにワウリンカが反撃!【男子テニス】

悪意すら感じるスイスメディアによる一連の記事に、ワウリンカ本人のイライラは募るばかりだ。(C)GettyImages

クイズを出します。「直近のグランドスラム(四大大会)で、ロジャー・フェデラー、ノバク・ジョコビッチ、ラファエル・ナダルの3人以外で優勝した選手は誰でしょうか?」。

 ヒントを1つ。「その選手はこれまでグランドスラムに3度優勝し、今も現役を続けています。また2019年の全米オープンでは、ジョコビッチを破りました――」

 アンディ・マリーと答えた方は不正解。正しくはスタン・ワウリンカである。

 ここ数年の戦績を辿ると、2014年全豪、2015年全仏、2016年全米といった具合に、ワウリンカは着実に実力を伸ばしている。ところが左ヒザにケガを負ってしまい、2017年夏に難しい手術を受けなければならなくなった。

 これはかなり複雑な症例で、担当した外科医が「もう一度、トッププレーヤーとしてやっていけるかどうか、保証することはできない」と伝えたほど手術の難易度が高かった。

 しかし幸いにもオペは成功、ワウリンカは再びコートに戻ってきた。

 ワウリンカにとって2019年はとても良い結果に終わったと言える。負傷離脱のため前年は世界ランキングを263位まで落としていたが、必死の頑張りによってトップ10を狙えるまでに上昇。16位でシーズンを終えたのだ。

 19年10月に行なわれたスイス・インドアの大会期間中、私の記者仲間の1人が「全盛期のような強さに戻るのに、まだ足りてない部分はなに?」と質問を投げた。するとワウリンカは堰を切ったように喋り出し、それは数分間にわたる“独演会”となった。

 彼はその中で自らの業績を語る一方で、地元スイスメディアへの不満を爆発させた。聞かされる側の我々はしばらくの間、どこで反論すべきか糸口さえ見つからないほどの勢いだった。
 「俺は現在世界ランク17位。かんばり次第では『ATPファイナル』にも出場できるかもしれないポジションにある。それなのに『全盛時を取り戻すのに足りないものは?』と聞いてくる。この6年間、ビッグ4以外でグランドスラム(世界四大大会)を制している唯一の選手。その事実を忘れてないだろうね? おまけに大怪我を克服して、ここまで挽回してきたんだ。

 今季のロッテルダムとアントワープの大会では決勝戦に進んだ。全仏では(ステファノス・)チチパスに、全米ではジョコビッチも破っている。トップ10に名を連ねる好調な選手に勝ったんだから、総括してみれば良いシーズンだった。自分的には十分に自信も取り戻せたと思っているんだけどね――。

 もちろん、2019年シーズンはグランドスラムで優勝することはできなかった。だけどその優勝者に勝っている。わかるかな、この意味。今の自分は来シーズンに向けて、スペシャルなポジションにいるってことじゃないの」
  そして、ここから地元スイス・マスコミへの批判を開始した。

「とにかくスイスのマスコミは、いつもネガティブな報道ばかりしている。俺が何かをやるたびに、あるいはパーティに参加しただけでも否定的な論調になる。私生活のことも、コート上のケガのことも陰気に報道される。マスコミには悪意さえ感じるよ。

 いいかい、世界ランク17位って記者さんたちが考えている以上に大変なことなんだ。数年後のスイス・テニス界を想像してみてほしい。グランドスラムを取れるようなスイス人選手はすごく少なくなると思う。とくに男子はね。そうなって初めてマスコミは『世界17位ってそんなに悪くないかも』と気づくわけさ」

 ワウリンカがこれほど強くスイスのマスコミを批判する原因がどこにあるのか、私なりに少し立ち止まって考えてみたところ、思い当たる1つの記事が脳裏をかすめた。なるほど、ああやって書かれたならば、彼ならずとも激怒するに違いないと納得したのである。
  それはモンテカルロで開催されたパーティーでのことである。リラックスしてシャンパンを飲むワウリンカが、薄手の服を身にまとった女性らと談笑している。それはどこにでもある光景だ。ましてやリゾート地でのパーティである。そんなありふれたシーンの一部分だけを切り取ったスイスの新聞社が、ワウリンカの素行の悪さを印象付けるようにしながら悪意のある記事に仕立て上げたのだから、彼が苛立つのも無理はないだろう。

 2020年春には35歳を迎えるワウリンカ。今後は現役をいつまで続けられるか、時間との闘いにもなるだろう。地元メディアから発せられる雑音を断ち切る意味でも、彼の真価が問われる1年となるのは間違いない。

文●レネ・シュタウファー
ITWA(国際テニスライターズ連盟)正会員で、経験豊富なスイス人ジャーナリスト。ヨーロッパを中心に第一線で活躍しており、フェデラーやヒンギスとも親交が厚い。2018年に発刊されたフェデラーをテーマにした著書は、スイスでベストセラーとなっている。

構成・翻訳●安藤正純

※『スマッシュ』2020年2月号より修正して転載

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