左利きの黄金パターン。アドサイドからのスライスサービスを活用【西岡良仁が自ら語る、戦略・パターン/3】

左利きの黄金パターン。アドサイドからのスライスサービスを活用【西岡良仁が自ら語る、戦略・パターン/3】

西岡良仁が左利きの選手がよく使うパターンを教えてくれた。写真:THE DIGEST写真部

現在、自己最高ランキング48位につけ、錦織圭に次ぐ堂々の日本ナンバー2の西岡良仁。170センチの小柄な西岡は、人一倍考えてテニスをしている。どんなことを考えて試合を展開しているのか。戦略と得意なパターンについて教えてもらった。

 3回目は引き続きパターンについて。左利きは必須でマスターするべき黄金パターンでポイントを取る方法を話してくれた。

「左利きが得意とするサービスからのパターンです。アドサイドからスライスサービスをワイドに打ちます。スライスなので、バウンドした後もコートから逃げるように跳ねるため、相手はバックで遠いボールに対応しなくてはなりません。多くの場合、コートの真ん中あたり(※写真コート図の黄色部分)にリターンが返ってきます。そのボールをオープンコートにコントロールすれば、このポイントの主導権は握れたも同然です。この形が一番楽です」

「相手がリターンをストレートに打つこともありますが、これはリスクが高いショットです。相手にとっては厳しいコースに打たなくては意味がなく、甘いコースに入った場合は、走ってオープンに返球することで対応できます(※写真コート図の2´)。リターンでアングルに引っ張るのも難易度が高い上に、僕のフォア側になるのでストレートに打つのは難しくありません(※写真コート図の2”)」
  このパターンの成功のカギを握る、ワイドへのスライスサービスだ。回転をかけてボールを曲げるために、構える場所から工夫している。

「サービスを狙う場所はサイドライン際です(※写真コート図の黄色い部分)。サービスラインに近い場所になると、あまり回転がかからず曲がってくれないので、できるだけ手前にコントロールして、バウンド後に逃げていくボールにしています。この場所を狙い回転をかけてボールを曲げるためのポイントは、構える場所です。シングルスではセンターマークの近くから打つのが普通ですが、僕はかなり離れた場所から打ちます。その方がボールの軌道に角度が付き、ボールが逃げてくれます。このサービスはコースと回転量が重要なので、スピードが遅くても気にしません。ただ、相手のリターンが緩いサービスに合ってきたと感じたら、時々思い切りコーナーを狙って打っています」(※写真コート図POINT1)。
  しかし、対戦相手も左利きの選手はこのパターンを使ってくると警戒するはず。それはどう攻略するのか。実は相手にバレていても問題ないと言うのだ。さらに、的を絞らせないように工夫もしている。

「相手は当然警戒してきますが、だからといって相手がファーストサービスの時からコート内で構えることは、ほとんどありません。すると、反応を早くして斜め前に入ってボールを捉える必要があります。少し反応が遅くなると甘いリターンになり、僕が主導権を握れます」

「的を絞らせなければ、さらに効果的です。スピードの差をつけたり、回転量や打つタイミングを少し変えたりと工夫しています。バックが得意な人には対応されやすいので、その時はセンターに打つサービスの数を増やして絞らせないようにします。バックが苦手な人にはワイドを打っておけばOKです。IMGアカデミーで練習していた時に、ニック・ボロテリーに『8、9割ワイドでいい』と言われたほどです」(※写真コート図POINT2)。
  加えて西岡は、ワイドへのサービスの精度が上がったことで、それほど速くないサービスでもセンターでエースが取れるという効果も表れたと言う。

「15年の全米オープン前ぐらいから、ワイドのサービスの精度が上がってきました。技術の向上、身体ができてきたこともありますが、『ここに打てる』という自信が付いてきたことも要因です。今はライン際を狙うのが怖くありません。かなり回転をかけて曲げているぶん、自然とライン際に行きます。曲げすぎるとアウトしますが、それは仕方ないと考えています」

「ワイドへのサービスの精度が上がったことで、センターにエースが取りやすくなりました。僕のサービスは最速でも時速190キロぐらいで、170、180キロが普通です。それでもエースになるのは、相手がワイドを意識するのでセンターが空くためです。だから、ピンポイントに入れられればエースになります」(※写真コート図POINT3)。
  そして、このパターンは相手の疲労が蓄積される試合後半になると、ますますポイント獲得の可能性が上がるそうだ。

「相手が疲れてくると、このパターンの成功率は上がります。基本的に僕はミスが少なくしっかり返球していくので、相手は通常よりも多くボールを打つことになります。もちろん僕も疲れますが、走ることには自信があるので問題ありません」

「逆に相手は通常よりも多く打たされていると感じて疲れてきます。すると、最初はワイドのサービスを斜め前に入ってリターンできていても、反応が少し遅れて横に動くことになり、動く距離が長くなります。そのぶん、コートに戻るのも大変になり疲労が蓄積します。だから、バックのリターンがうまい人でも、試合終盤はこのパターンに手こずるのです」(※写真コート図POINT4)。
  これが、左利きは必ずアドサイドからのスライスサービスを打てる必要があると言われる理由だろう。そのサービスの精度が上がれば、かなりの確率でポイントが取れそうだ。西岡は最近センターへのサービスを増やして、確実にほしい場面でこのパターンを出すなど、変化も加えているが、左利きの選手にとって黄金パターンであることは間違いない。

 逆に、右利きの人は、左利きの選手と対戦する時は、相手はこのように考えているのだということを思い出して作戦を練っておこう。

【プロフィール】
西岡良仁 Yoshihito Nishioka(ミキハウス)
1995年9月27日三重県生まれ。170センチ、64キロ左利き。4歳からテニスを始める。2011年に盛田正明テニスファンドのサポートでIMGアカデミーに留学。13年にフューチャーズ優勝、14年にチャレンジャー優勝と順調に成長。高田充コーチとツアーを転戦し17年3月20日に58位をマーク。直後に故障しツアーを離脱。リハビリ中はYouTube(Yoshi’sチャンネル)など様々なことに挑戦。復帰後ツアー初優勝を果たした。2020年2月4日に自己最高48位にランクイン。父親はテニスコーチでスクールを運営、兄もテニスコーチ。

構成●スマッシュ編集部、取材協力●HEAT JAPAN
※スマッシュ2016年4月号から抜粋・再編集

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