身長163センチながら今季2勝の20歳!清水悠太が実践するシンプルな食事術【男子テニス】

身長163センチながら今季2勝の20歳!清水悠太が実践するシンプルな食事術【男子テニス】

身体に良いと言われれば多少我慢しても食してきた清水。プロとしては小柄だが、今季はITF(国際テニス連盟)ツアーで2勝を挙げたパワーの源は食にもあるようだ。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

ドーナッツが大量に並ぶボックスを覗き込み、「えー、どれにしよう……」とつぶやく口角が、緩やかに上がっていた。

 この日は、彼が拠点とする“テニスラボ”のメンバー複数名への、ささやかな合同誕生日。そのお祝いに用意されたドーナッツを目の前にして、彼は先輩たちの目を気にしつつ、「チョコレート、好きなんですよね」と気恥ずかしそうに笑いながら、チョコでコーティングされた一輪を選び取った。

 プロ3年目を迎える20歳。最高位は、今年3月上旬に達した313位。

 コーチである父の手ほどきでラケットを握った清水悠太は、幼少期から食事にも自然と気を配る環境下で育ってきたという。

「父はそこまで食事については言わなかったんですが、母親は気を使ってくれていたようで、おかずも多かったし、バランスも考えてくれていたと思います。子どもの頃は、苦手なものは多かったです。キノコや貝類とか、茄子とか……。でも、親には『食べなさい』と言われていたので、いやいや食べていました」
  渋る子どもに食べさせる術を、親は熟知していたのだろう。

「身体に良いから!」

 その一言を耳にすると、悠太少年は「そうかな」と小首をかしげつつも、苦手な食べ物も身体に押し込んだという。

 ジャンクフードや、お菓子が家にあまりなかったという清水家では、甘い飲み物が食卓に上がることも無かった。

「家にジュースなどは無かったです。飲み物は、牛乳か水、あとはお茶でした」

 小柄なスポーツ少年の例にもれず、清水も子どもの頃から、牛乳はよく飲んでいたという。「でも、伸びなかったですね」と苦笑いする彼の身長は、163センチ。ただその小柄な身体を、彼はハンデやコンプレックスに思う素振りは、まるで見せない。

「身長を自己申告するなら、僕はむしろ小さめに言うと思います。ツアーで一番小柄な方が売りになりますし」

 例え上背はなくとも、彼にはそれを補うフットワークと、攻守でコートを広く用いる守備力及び創造性がある。バランスの良い体躯とオールラウンダーなプレースタイルも、食事を含めたバランスの良さを反映したものだろう。

 そんな彼が、食べ物に自発的に気を配るようになったのは、プロになった頃だという。
 「最初に食事を意識するようになったのは、NTC(ナショナルトレーニングセンター)に行って栄養士さんにバランスの良い食事のとり方などを教わった時だと思います。

 でもやはり自分でちゃんと考えるようになったのは、高校を卒業し、テニスラボの人たちと家をシェアするようになった19歳の頃からですね。今は基本3人で一緒に生活しているんですが、こっちに来てから外食を控え、バランスの良い食事を自分たちで作るようになりました。そうしたら、苦手だったものも食べられるようになったんです。

 料理は、あんまり凝ったものは作れないので、炒めものが多いです。肉と野菜をたっぷり。あとは、ヨーグルトや納豆などの発酵食品も取るようにしています」

 そのように、日本にいる時は自炊をする清水だが、難しいのは海外への遠征時。フューチャーズなどの下部大会では、会場のレストランも充実しているとは言い難く、安心して食べられるものも限られる。そうでなくても体調面を考慮すると、食でのリスクは犯せない。
 「海外に行くと、いつもよりバランスが取れなかったりします。外食の値段が高い国も多いですし。でもそこはお金をケチらないで、身体に良いものを食べるようにしています。

 遠征中は、サラダ以外の生ものは絶対に食べない。ジュニアの時に一度あたったことがあるので、日本でも大会期間中は食べないです。あとは揚げ物も消化が遅いと聞いたので、避けるようにしています。

 試合がある日は、始まる2〜3時間前には、絶対に食事は食べるようにします。そこから試合までの間にお腹が空いたら、バナナやおにぎりなど軽いものを。試合中はバナナかゼリー。あとは、電解質の入ったスポーツドリンクを取るようにしています」

 そのような配慮の賜物だろうか。清水はこれまで、試合中にケイレンに襲われたことは無いという。

 そんな彼に、食にまつわるこだわりを尋ねると…、「こだわりなんですが、全然ないんです」と、バツが悪そうな笑みが返ってきた。

「食事だけでなく、テニスの道具とかにも、あまりなくて……」

 だが「こだわりのなさ」とは換言すれば、自分を見失わぬ泰然さと、いかなる状況にも対応できる適応力の高さだとも言える。だからこそ彼は、恥じらいの笑みを屈託のないそれに変えて、幾分胸を張って言った。

「こだわりがないことを、こだわりにすれば良いのかなって。同じものを食べるとかは海外では無理なので、こだわりが強すぎると難しいですから」

 プレーと同様に柔軟性があり、小柄な身体も売りとする発想の転換力こそが彼の武器。ツアーが中断しているこの時期は、弱点とみなされるフォアハンドを強化する好機と捉えて、日々練習に励んでいる。

 一本芯の通った信念と、気負わず苦手も克服していく自然体。それらをバランスよく操りながら、自身と向き合う日常も、ツアーの荒波も乗り越えていく。

取材・文●内田暁

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