「彼との試合はテストなんだ」グランドスラム20勝を誇るフェデラーを成長させた「ナダル」という不可欠な存在【男子テニス】

「彼との試合はテストなんだ」グランドスラム20勝を誇るフェデラーを成長させた「ナダル」という不可欠な存在【男子テニス】

フェデラーとナダルは2020年4月までに通算40回対戦しているが、その度に相手へのリスペクトを高めている。(C)GettyImages

テニス界で長きにわたりトップランキングを維持する一流選手たち。そんな彼らが発する言葉には、テニスの上達はもちろんだが、仕事やプライベートでも役立つヒントが数多く隠されている。

 ロジャー・フェデラーの強さの秘密を考える上で、忘れてはならないのがラファエル・ナダルの存在だ。ナダルがいなければ、もっと優勝数が増えたと思うかもしれないが、フェデラー本人はそのようには考えていない。

「ラファ(ナダル)のおかげで、自分にはもっと特別なトレーニングが必要だと考えるようになった」

 2004年のマイアミ・オープン、フェデラーは当時新人だったナダルとの初対戦で敗れている。この時からフェデラーは、ナダルが強くなるとはっきりと感じていた。

 そしてその予感どおり、最大のライバルとなった。
  フェデラーは2006年から3年連続で全仏オープン決勝に駒を進めるものの、その全てでナダルに敗れて生涯グランドスラム(4大大会の制覇)を阻まれた。しかも3度目となる2008年大会はストレート負けを喫している。試合後の記者会見では、

「ラファは素晴らしいプレーをした。今日のような彼に勝つのは難しい。それが僕に言える全てだ」

 と当時世界ランキング1位だったフェデラーが、ナダルの強さに脱帽した。そして最後には泣きそうになるのをこらえながら

「今日のような負けは本当につらい…。でも、前に進まなければ……」

 と自分に言い聞かせせるように声を絞り出した。

 そして同じ年のウインブルドンでは、絶好調のナダルに大会6連覇を阻まれる。この試合は全仏オープンの時とは異なり、当時史上最長となる4時間48分に及ぶフルセットの激闘となった。

 翌日、多くのメディアが“史上最高の決勝だった”と褒め称え、フェデラー本人もそれが非常にハイレベルな戦いだったことを認めている。

「ラファと僕が全力を尽くした戦いだったので満足している。僕たちは最後まで戦い抜いた。テニスには引き分けがないので、勝者と敗者ができてしまうのは仕方がないことだ」

 すると初優勝にも関わらずナダルは、「僕もつらい敗戦をたくさん経験してきた」と敗れたフェデラーを気遣った。この時すでに2人は、ただのライバルの関係を超えていた。

「ラファは僕を強くしてくれる。彼との試合はテストなんだ」

 とフェデラーはナダルとの関係について語っている。
  ウインブルドン終了後、237週連続でランキング1位だったフェデラーが、そのトップの座をナダルに明け渡すことになった時には、

「ひどいプレーをした末にトップを譲るのは嫌だった。だから、ラファが苦労してそこに到達したのはうれしい。彼は王座にふさわしいプレーヤーだ」

 とライバルを称えている。

 翌2009年、フェデラーに全仏オープン優勝のチャンスが訪れる。ナダルがケガの影響もあり、4回戦でロビン・ソダーリングに敗れたのだ。すると苦労しながら決勝まで勝ち進んだフェデラーは、ナダルを破ったソダーリングと対戦した。

 念願のタイトルが懸かった1戦では、緊張のためかフェデラーにしては考えられないようなミスを連発した。だがそれでも、ついに生涯グランドスラムを達成できるサービスゲームを迎える。その時の心境を次のように語っている。

「ほとんどプレーできる状態じゃなかった。ただ、いいサービスが入って欲しい。そして、相手には4本ミスして欲しいと願っていた…」

 そしてこのゲームをキープしたフェデラーは、見事に生涯グランドスラムを達成する。
 「ラファが決勝に上がってこない時に、自分が決勝にいたら勝てるだろうと思っていた。そんな日がいつかくると思っていたし、信じていた。それが完璧に実現した」

 と優勝インタビューでは、ナダルのことを口にした。

「フェデラーよりも、自分こそがナンバー1にふさわしいと思うか?」と、ナダルはよく聞かれるそうだ。そんな時に彼はいつも、「ロジャーの偉業は明白で、他の人が簡単に破れるものではない」と答えている。

 心が通じ合う強力なライバルのナダルがいたからこそ、フェデラーの偉業は達成されたと言えるだろう。

文●中山和義

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