168センチのハレップがナンバー1にまで駆け上がれた理由を、過去のインタビューから読み解く【女子テニス】

168センチのハレップがナンバー1にまで駆け上がれた理由を、過去のインタビューから読み解く【女子テニス】

ハレップは2018年全仏オープンで悲願のタイトルを獲得。写真:田中研治

「ローマ大会ですね。あの大会で予選から勝ち上がり、本戦でもラドワンスカやヤンコビッチなど、多くのトップ選手に勝つことができました。この大会をきかっけにすごく自信を深め、その後は、どんどんプレーが良くなっていったと思います」

 これは2013年夏……現在WTAランキング2位のシモナ・ハレップが、今の彼女に至る急勾配の坂道を駆け上がっていた、その最中に行なったインタビューの時。最終的に、このシーズンでツアー6勝を手にした彼女に尋ねた、「躍進のきっかけとなった大会や試合はあるか?」の問いへの返答である。
 
 自分で聞いておきながら何ではあるが、この時、明瞭に自らの転機について語る彼女に、少し驚いたことを覚えている。というのも、それまでの経験で、テニス選手の多く……特に若い選手は、これら安易に「きっかけ」を問う声に、いくぶん何色を示すように感じていたからだ。

 最もありえる返答は、「日々の積み重ね」「それまでにやってきたことが、少しずつ噛み合い始めた」というもの。そこから質問を重ね、具体的な戦績などを見せながら過去を振り返ることで、「あ……そういえば」と、選手が記憶と記録の集積の中から、小さなターニングポイントを拾い上げてくれることもある。だが、それほどにインタビューに時間が取れることは稀だった。
  それに、満塁ホームランや逆転のトライもないテニスという競技の特性上、選手たちは、小さな成果や努力の集積でしか、成功をつかめないことを知っている。ゆえに、彼/彼女たちの言う「日々の積み重ね」こそが躍進の契機というのは、絶対的な真理でもあるだろう。
 
 取材当時21歳のハレップが、ターニングポイントとなる大会を明言したことに少し驚いたのは、そのような理由からだった。そして彼女がこの時に示した、自己分析と目標地点へのスタンスは、今も変わっていないように思う。

 例えば2018年。彼女が悲願の全仏オープンタイトルをつかみ取った後の、優勝会見での言葉も印象的だった。
  ハレップはその前年の17年にも、決勝に勝ち進みエレナ・オスタペンコと対戦している。この時のハレップは圧倒的な優勝候補ながら、リミッターが壊れたかのように全てのボールを強打する20歳の規格外のプレーに自らのテニスを破壊され敗北した。

 特に、彼女の脳裏に「勝敗を分けた」悪夢的な瞬間として焼き付いているのが、ファイナルセットで飛び出した1つのショットだった。オスタペンコの強打はネットに掛かると2メートルほど上方に跳ね、ハレップのコートギリギリに落ちた場面である。

 その敗戦から、1年後。失意の記憶がそこかしこに染み込むセンターコートで、彼女は自身の幻影と対峙し、今と重ね合わせながら過去と異なる道を進むことで、優勝をつかんだと言った。第3セットの試合の趨勢を決めかねないロングラリーでは、相手のドロップショットを地面ギリギリですくい上げ、勝利を指すポイントをもぎ取る。
 「昨年の、あの場面と似ていると思った。だから『このポイントを取れたら、今回は私が勝つ』と自分に言い聞かせた」。敗戦のターニングポイントを心に刻み、目を逸らさず向き合ってきたからこそ、次に似た局面が訪れた時、彼女は危機を勝機へと変えてみせたのだった。
 
 ハレップにインタビューをした2013年の夏は、彼女がクレーと芝の両方でツアータイトルを手にした直後でもあった。そのハレップに「最も好きなサーフェスは?」と問うと、間髪入れず次の答えが返ってきた。

「以前はクレーが一番好きだったけれど、ハードでも良い成績が残せているので自信を持ってプレーできています。今となっては、どれが一番得意というのは難しいし、全てのコートで勝てる選手を目指しています」

 それから、6年半後。彼女はハードコートで11、クレーでは全仏を含む7、芝でもウインブルドンを含む2タイトルの栄冠に輝いている。 

文●内田暁

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