「あなたに求めるのはほんの少しの配慮だけ」下位選手支援否定のティームに真っ向から反対する、アルジェリア人女子選手に世界中から称賛の声【テニス】

「あなたに求めるのはほんの少しの配慮だけ」下位選手支援否定のティームに真っ向から反対する、アルジェリア人女子選手に世界中から称賛の声【テニス】

ティームのほか、世界ランク8位のマテオ・ベレッティーニも、下位選手への支援について異論を唱えている。(C)GettyImages

新型コロナウイルスの影響で、スポーツ界の多くがシーズンを中断している。毎大会の成績ごとに得られる賞金が変わってくる、個人スポーツであるテニスにおいては、スポンサーのついていない選手は大会に出られなければ収入がない。

 大きな大会で好成績を上げ、一度に莫大な賞金を手にした選手や、長い期間に安定した成績を収めてきた選手でなければ、無収入となる現状が難しい状況であることは言うまでもない。そんな選手たちのために、ノバク・ジョコビッチをはじめとするビッグ3が金銭的支援を提案したことに、世界3位のドミニク・ティームが苦言を呈したのは記憶に新しい。

 ティームは、スポーツを最優先に考えていない下位ランクの選手たちは、飢えて倒れるほどに困っているわけではない、明日を生きるのも難しいほどに苦しんでいる人々に支援した方が良い、と主張した。
  このティームの主張に対し、困難に直面している下位選手のひとりであるアルジェリアのイネス・イブーが、自身のInstagramへ反論動画を投稿し、世界中で話題となっている。

「親愛なるドミニクへ」と、ティームへの呼びかけから始まったこの動画は、9分を超える。現在21歳で世界ランク620位のイブーは、キャリア通算での獲得賞金は27,825ドル(約298万円)。誰しも生まれる場所を選ぶことはできないが、北アフリカ出身の女子選手がトップスポーツ選手として成功するのは難しいと伝えた。

 アルジェリアでは、プロトーナメントが開催されない。「両親にプレゼントを買えるだけの余裕を得られる日を心待ちにしている」と語るが、自身の戦う姿を見せることすら難しいのだ。プロの大会に出場するには国境を越えなければならず、常に最安の航空券を探し、一人きりで孤独な旅をしているという。
  母国にスポンサーとなってくれるような企業もなく、海外から優秀なコーチやスタッフを雇うことも、世界各地で行われる大会に参加することもままならない。常に経費の工面と、アルジェリア人であるがためのビザの問題に頭を悩ませている。

 また、テニスでは通常、コートの種類によってシューズも種類を変えるが、資金難からこれも叶わず、どこに行っても1足のシューズで戦い抜いているというイブーは「もしティームと同じような条件でプレーできたら、成績は変わっていたでしょう」と嘆いた。
 「プレーヤーへの支援がなければ、競技自体が生き残れない」とし、ティームに対しては「あなたに求めるのは(お金などではなく)、ほんの少しの配慮だけ」と語ったイブー。彼女の競技の未来を見据えた訴えには、世界中から称賛の声が数多く集まった。テニス界からも、元世界ランク1位のビーナス・ウィリアムズがInstagramを通じて「あなたは私のヒーロー」とコメント。イブーと同様にティームの主張を批判していたニック・キリオスは「リスペクト」と投稿し、彼女への支援を約束した。

 さらに、彼女のメッセージはアルジェリア政府をも動かした。10日にはアルジェリアのアブデルマシド・テブン大統領がTwitterに「アルジェリアはイブーのようなスポーツの才能を失うわけにいかない」と投稿し、さらに11日にはアルジェリア政府のスポーツ大臣が、チュニジアに滞在中のイブーと連絡をとり「政府として彼女への支援を確約した」ことをFacebookで明かしている。

文●誉田優
フリーライター。早稲田大学スポーツ科学部卒業。
Twitter:yu_honda/instagram:yu_honda

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