遠征にはハプニングが付き物!? 韓国で感じた、たくさんの人の温かさ【プロテニス選手コラム/輿石亜佑美】

遠征にはハプニングが付き物!? 韓国で感じた、たくさんの人の温かさ【プロテニス選手コラム/輿石亜佑美】

初めて韓国へ遠征した時は、タクシーも捕まらず、ホテルにも入れず…という体験をした輿石。写真:本人提供

テニスのツアーは、毎週のように様々な国で試合があります。自分でどの大会に出場するかを決めて、出かけていきますが、私のようにまだまだランキングが低いプレーヤーは、「〇〇の大会に出場したい!」と思っても、ランキングによるカットがあるため、別の国で行なわれる大会に行かざるを得ないこともあります。

 そして下部ツアーの大会は、都市部から離れた場所で開催されます。空港と会場が遠く離れている、会場の近くにホテルがない、スーパーやレストランが遠い…そんなことは頻繁に起こります。

 また、当たり前ですが、言語が違います。英語が通じるところは何とでもなりますが、大変なのは英語が通じない国へ行ったときです。近くの中国やタイ、韓国は日本と同様、その国の言葉だけを話す人が多いように感じますし、カザフスタンへ行ったときは、主な言語がロシア語で、全くわかりませんでした。

 会場へ行ってしまえば、選手も大会のスーパーバイザーも英語を話せるので、ほぼなんとかなります。しかし、一歩会場の外に出ると、タクシーや、レストラン(メニューが全く読めず、写真がないところは勘で注文する)など、色々なところで言語の壁が立ちはだかります。

 不便に感じたことはたくさんありますが、今回は私が初めて韓国に行った時のエピソードをお話ししようと思います。
  私の初めての韓国遠征は、京畿道の高陽市というところでした。1人での海外遠征は2回目だったのですが、飛行機が空港に到着したのが16時半頃、お金を引き出したり、バスに1本乗り遅れたりして、18時過ぎに空港を出発しました。バスの後は電車も乗り継ぎ、20時頃最寄り駅に到着です。都市から離れていたので、最寄り駅にタクシー乗り場もなければ、道を走るタクシーもいません。駅員さんに頼んでタクシー会社に電話してもらいました。電話の間、駅員さんが部屋の中で待たせてくださいましたが、外は真っ暗で車の通りも少なく、とても心細かったのを覚えています。

 日本を出発する前に、母が会場までの行き方を調べてくれていたのですが、今思えば、私自身もちゃんと調べていればよかったな、と後悔しています。
  全くタクシーが捕まらず焦った私は、泣きそうになりながら、ずっと母にどうしよう、と連絡していました。母はとても心配して、すぐにでも韓国に飛んで来そうな勢いでした。空港からホテルの部屋に着くまで、常に連絡を取り、励ましてくれた母ですが、日本にいるので、どうすることもできないもどかしさでいっぱいだったと思います。

 この経験から、遠征に行く前にしっかり調べてから出発すること、初めての場所に行くときは、飛行機の到着時間を昼間にすること、タクシーは大きな町で乗ること、が教訓になりました。

 私のつたない英語に加え、駅員さんはもちろん韓国語だったので、全く会話が成立しないまま時間が過ぎていきました。実際に駅にいたのは、1時間ほどでしたが、初めての場所、通じない言語、夜遅い時間、と不安が募るには十分すぎる状況でした。

 最終的には、駅員さんが道路で何とかタクシーを捕まえ、行先も伝えてくださいました。何回もタクシー会社に電話し、たくさん話しかけ、外に出てタクシーを止めて行先まで伝えてくださった駅員さんには、言葉は通じなくても、とても温かい心を感じました。
  タクシーが出発した頃には、もう21時を過ぎていました。なんとか会場の敷地内には到着したのですが、宿泊施設は学校の寮のような場所だったので、レセプションがなく、さらに電気がついておらず真っ暗。建物がたくさんあってどれかわからない、という次の難関が立ちはだかりました。おそらく着くのが遅すぎて、チェックイン担当の人が帰ってしまったようなのです。

 タクシーの運転手さんも駅員さんと同様、とても優しく、清算が終わっていたにも関わらず一緒に探し回ってくれました。それでも全然見つからずに、うろうろしていたら、通りかかった韓国人学生が、たまたま日本語を勉強しており、通訳してくれたのです。大会のレフェリーに電話をし、ルームナンバーを聞き、カギを取りに行き、部屋まで案内してくれました。その学生さんがいなかったら、私はその日、部屋に入れなかったかもしれません。
  やっとたどり着いたその部屋は、ベッド、シャワー、トイレほどのシンプルな部屋。シャンプー、歯ブラシ、タオル、冷蔵庫などはなく、考えていたオフィシャルホテルとは程遠いものでした。この部屋によくあったな、と思うのは、ドライヤーと歯磨き粉です。歯ブラシがないのに、なぜか歯磨き粉はあったのが今でも不思議ですが…。

 食事も朝だけついていて、昼夜は各自でとることになりました。しかし会場は山の中で、毎日歩いていくには大変…。どうしようかと悩んでいたら、次の日、同じ大会に出場していた唯一の日本人である大前綾希子選手が、「韓国の選手友達に予約してもらうから、ホテルを移動しないか」と提案してくれました。
  それから、3週間、食事もずっと一緒に行き、ホテルも予約してくださり、たくさん助けていただきました。1人の遠征では食事も1人で行くことが多いのですが、その時の韓国遠征は、楽しい食事の思い出がたくさんあります。本当に”あっこさん”には感謝でいっぱいです。

 そんなこんなで、無事に終わった遠征でしたが、海外遠征にハプニングは付き物です。慣れてきた今でも、問題が発生することは多々あります。そのたびに、両親やコーチ、いつも支えてくださる方々に感謝をしなければならないと思いますし、自分も困っている人がいたら、手を差し伸べたいと思います。

 また、海外に行くと、ご飯がおいしく、公共の施設がきれいで、治安がいい日本がどれほど恵まれているか、と実感します。この先どんな国に行っても、日本が恋しくなると思いますし、日本に生まれてよかったな、と思うことでしょう。これからも、事前に準備して、様々なハプニングを経験して、逞しく成長していきたいと思います。


プロテニスプレーヤー
◆輿石亜佑美(竜興化学工業株式会社)◆
2000年7月28日生まれ。埼玉県出身。3歳からテニスを始め、2019年プロ転向。2017年インターハイ準優勝。JOCジュニアオリンピックカップ優勝。 2019年、W15 Gimcheon ダブルス優勝。国民体育大会、成年女子優勝(埼玉県代表)、現在は得意なサーブとバックハンドを武器に海外を中心に転戦中。Twitterは@Kosshiee_tennis Instagramは@kosshieeee_728

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