“ボールを追うだけがテニス選手の役割じゃない”フェデラーが示す環境問題への一歩進んだアプローチ【海外テニス】

“ボールを追うだけがテニス選手の役割じゃない”フェデラーが示す環境問題への一歩進んだアプローチ【海外テニス】

地元スイスの環境活動家グループに標的にされたフェデラーは、そこから逃げることなく大人の対応を示した。(C)GettyImages

20年に及ぶツアーでロジャー・フェデラーは、1500以上のゲームを積み重ねてきた。その経験から彼は、対戦相手への対処法を学んだ。

 しかし一方で、彼は意外な方面から攻撃された場合に、テニスコートの「外」で反応する方法も知っている。その際の戦術はほとんど同じだ。すなわち、理解することを示し、自らが鋭く反応する前に問題を真剣に受け止めるというやり方である。

 今年の初めフェデラーは、世界的に広く名前が知られるようになった17歳のスウェーデン人環境保護活動家グレタ・トゥンベリから、熱心な支援を受けたスイスの若い気候環境活動家グループの『標的』になった。

 彼女の約400万人のフォロワーへのリツイートで、グレタはフェデラーの『クレディ・スイス銀行との関係』に反対した。環境グループはこのパートナーシップを何カ月間も繰り返し批判しており、フェデラーに「クレディ・スイスとの関係を解消する」よう求めている。

 活動家の主張によれば、クレディ・スイス銀行は「石炭などの化石燃料を促進する企業に数十億ドルを投資しており、環境と地球温暖化に対する有害な影響について気にしていない」そうだ。

 昨年11月、活動家グループがクレディ・スイス銀行の複数の支店を占拠した。そこで彼らはテニスをプレーしながら、「もしもロジャーがこれを知っていたならば!」と叫び、抗議を行なった。そして参加者の何人かが、住居不法侵入の疑いで逮捕された。ちなみにこの活動を起こすために作られたハッシュタグは、『Roger Wakeup now !』( フェデラーよ、今こそ目を覚ませ!)である。
  1月に裁判が開始され、20歳から25歳の学生が全ての無罪申し立てを取り消されたが、その際、フェデラーは非常に深い理解を示すかのように反応してみせた。

 全豪オープン開幕直前の声明で、彼は次のように語っている。

「4人の子どもの父親として、私は若者らの気候変動に関する運動に大いなる敬意を持ち賞賛をしています。私たち全員が日頃の行動を見直し、革新的な解決策を探すことを余儀なくしてくれた若い気候活動家に感謝します。私たちの責任を改めて認識するところです」

 さらに、「私は自分の責任と特権的な立場を認識しており、これらの重要な問題についてスポンサーとの対話を求めていこうと思っています」と結んだ。
  フェデラーのこのような素早い反応と行動は珍しい。

 アスリートが自らの重要なスポンサーの活動を批判したり、疑問を呈することは非常に稀なケースだと言える。通常、企業は契約を結んでいる選手が何らかの不祥事を起こした場合、その『ブランド大使』から距離を置く。ゴルフのタイガー・ウッズが良い例だ。ウッズの不愉快な事例が知られるようになるや、いくつものパートナー企業が契約を解消した。

 その後、フェデラーがヨットに乗っている様子がソーシャルメディアに登場したり、海路で到着できるトーナメントについて語り合うようなことも起こったが、環境問題に関してフェデラーは『お手本』ではないことを認識している。昨年12月のドバイでのインタビューで彼は、こうも語っている。

「私たちは完全に異常な生活を送っています。私のようなレベルのテニス選手は1年中、世界を飛び回っており、飛行機の移動で多くの時間を費やしているのですからね。だから、あまり飛び過ぎないようにと、注意することなどできないのです」

 フェデラーは「私に罪悪感はあるのだろうか?」と自問する。
  ある? ない? もしも、「ある」と答えたら、すぐさまキャリアを終わらせなければならない。それが質問に答えられない理由なのだ。だから環境と地球温暖化への関心は正直、あまり強くないといったところだ。

 それでも彼の行動が間接的に環境問題にコミットしているのを忘れてはいけない。フェデラーは2009年にクレディ・スイス銀行と契約を結んだ。同社はアフリカ南部の子どもたちにより良い教育を提供する目的でロジャー・フェデラー財団に年間100万ドル(約1億800万円)を資金援助する。また同社は将来的に石炭火力発電所への融資を中止する予定で、気候に優しい戦略の追求に努めると発表している。

 銀行の幹部は「次のフェデラーとの会議で、彼は何がどう進んでいるかを正確に知りたがるはずだ」と語る。ボールを追いかけるだけがテニス選手の役目という時代はフェデラーの場合、通用しないということである。

※月刊スマッシュ2020年4月号から抜粋・再編集

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