伊藤竜馬や今西美晴らが激戦を制して準決勝進出!その向こう側にある"思い"とは?『BEAT COVID-19 OPEN』【国内テニス】

伊藤竜馬や今西美晴らが激戦を制して準決勝進出!その向こう側にある"思い"とは?『BEAT COVID-19 OPEN』【国内テニス】

ツアー中断中に32歳の誕生日を迎えた伊藤竜馬は「悔いを残さず、全て出し切りたい」と身体もシェイプさせ(右)新たに頂点を目指す。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)、内田暁

「ファンも一体となって作る大会」を標榜し、クラウドファンディングにより運営される賞金大会『BEAT COVID-19 OPEN』(7月1日〜3日)。大会は2日目の時点で男女それぞれのラウンドロビンが終了し、ノックアウト形式の準決勝に挑む各4選手が確定した。

 男子は、ダニエル太郎や伊藤竜馬ら上位選手に加え、ワイルドカードの斉藤貴史が4戦全勝で決勝トーナメントへ。

 女子では、日比野菜緒が肩の痛みのため棄権する波乱含みの展開のなか、今西美晴や加藤未唯ら地力のあるワイルドカード出場者たちが、実力と高いモチベーションを示して準決勝へと歩みを進めた。

■「3年」を1つの区切りとする2人の男子選手■

 首や胴回りのシルエットが、明らかに一回りシャープになっている。

「体型、変わりましたね?」と声を掛けると、「ええ、変えました!」と、マスク越しでもわかるいつもの柔和な笑みが返ってきた。

「全然テニスをしていなかったら、けっこう太っちゃって。栄養士さんにも管理してもらって食事を変え、かなり体重落としたんです」

 ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かった彼の決意が、その姿に明確に表れていた。

 3月にツアーの当面の中断が決まった後、伊藤竜馬は、ラケットを握らぬ日々を過ごしたという。
  環境的に練習がしづらくなったこともあるし、「精神的な疲れ」もある。ならば思い切って休んでみようと、1カ月コートから離れた。

 その休養間に、彼は32歳の誕生日を迎える。残された時間の限りをリアルに受け止めた時、「悔いを残さず、全て出し切りたい」との思いが強まった。ケガなく回復力の高い身体を目指し、食事療法を始めたのも、それら覚悟の発露である。

 伊藤が「勝負」とみなすのは、ここからの「2〜3年」。

「練習やトレーニング、食事療法など全てやりきって、新たな自分を試してみたい。それでどういう結果が出るか……最後、出し切った感を見せたいです」

 今大会は、その「勝負の2〜3年」へのスタートとなる。
  伊藤と並んでもうひとり、「3年」を一つの区切りにあげた選手がいた。

 今大会最年少の18歳、プロ1年目の山中太陽だ。

 豪快な片手バックハンドがトレードマークの山中は、初戦でダニエル太郎を剣ヶ峰まで追い詰め、自らの存在を鮮烈にアピールした。

 観る者を引き付ける超攻撃型テニス。そして今大会の会場でもあるビーンズドーム――この2つの要素が重なった時、彼のキャリアの原点が浮かび上がる。

 山中が、ビーンズドームで行なわれるジュニア合宿『関西・兵庫トレセン』に呼ばれたのは、小学4年生の時だった。戦績的にはそこまで高くなかったが、上位選手たちが辞退したため、僥倖的に周ってきたチャンス。その機を生かすべく10歳の少年は、「インパクトを残してこよう」と全力でラケットを振った。

 果たしてその狙い通り、彼の姿はコーチ陣の心に深く刻まれ、以降も山中は定期的にトレセンに呼ばれるようになる。その後も、ビーンズドームを拠点とする『テニスラボ』で腕を磨き、今年からはオーストラリアのゴールドコーストに拠点を移して、プロのキャリアを歩み始めた。

 おっとりした口調ながら、「夢は、ウインブルドン優勝」と迷わず明言する山中は、21歳以下に出場資格がある『ATPネクストジェン・ファイナル』の出場を、当面は目指しているという。

「そこに入れれば、グランドスラムで活躍できる確率も高くなる。あと3年くらいですが、そこが1つの目標です」

 夢に向かい、キャリアの原点から再び羽ばたく。
 ■崖っぷちから、決意の再スタート■

 女子の方では、最年長28歳の今西美晴が、清水綾乃との接戦を制し準決勝への切符をもぎ取った。

 今西は現在、中村藍子と古賀公仁男コーチが立ち上げた兵庫県内のアカデミーを拠点としている。中村たちに「うちでやらないか」と声を掛けられたのは、所属先の島津製作所から「来季は契約を更新しない」と告げられ、キャリアを終えることを考えていた矢先だった。

 自分はまだテニスをやりたいのか…と自問自答する1カ月ほどを経て、中村たちのもとで再スタートを切る心を決めたのは、3月末。そこからは球出しや振り回しなどの基礎練習で、ひたすらボールを打ち続けた。
  中村たちから繰り返し言われたのは、「足から力を伝えてボールを打つ」こと。今大会では、試合を重ねても腕の疲労感を感じることがなく、「練習の成果が出ているな」と実感できているという。

 年齢と経験を重ね、環境も以前と変わったなかで、今は「出る試合全てに全力を尽くすことしか考えていない」という今西。

 この大会でも純粋かつ貪欲に、勝利を追い求めている。
 BEAT COVID-19 OPEN
【開催期間】7月1日(水)〜3日(金)
【会場】ブルボンビーンズドーム(兵庫県三木市)
【種目】男女シングルス(男女各10名)
【競技方法】
1)予選は各リーグ5名によるラウンドロビン方式
2)決勝トーナメントは各リーグの上位1と位2位によるトーナメント方式
3)ショートセット(4ゲームマッチ)の3セットマッチ 決勝戦のみ3セットマッチ
4)試合は主審のみ。主審が全てのジャッジを行う。
【賞金】総額1,000万〜2,000万円
※クラウドファンディングにて集まった額に応じて決定
【出場選手】
■男子
Beat1=★ダニエル太郎(1)、★清水悠太(2)、野口莉央(3)、小ノ澤新(4)、山中太陽(5)
Beat2=★斉藤貴史(1)、★伊藤竜馬(2)、望月勇希(3)、田沼諒太(4)、松井俊英(5)
■女子
Beat1=★本玉真唯(1)、★牛島里咲(2)、佐藤久真莉(3)、華谷和生(4)、日比野菜緒(5)
Beat2=★加藤未唯(1)、★今西美晴(2)、岡村恭香(3)、大前綾希子(4)、清水綾乃(5)
※★は準決勝進出。カッコ内はラウンドロビン終了後の順位、

取材●文:内田暁

【PHOTO】伊藤竜馬ら世界で戦う熱き日本人プレーヤーたち!

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