土居美咲や穂積絵莉ら女子トッププロ8名がツアー再開前に真剣勝負!【国内テニス】

土居美咲や穂積絵莉ら女子トッププロ8名がツアー再開前に真剣勝負!【国内テニス】

『ONEIROS』に出場した女子プロ選手たち(写真左から、本玉真唯、村松千裕、小堀桃子、穂積絵莉、土居美咲、大前綾希子、二宮真琴、清水綾乃、井上明里)。写真=内田暁

「始まりを思えば、ここまで来られたことが奇跡ですよ」

 今回のイベント発起人の土居美咲と井上明里は、揃って安堵混じりの笑みをこぼした。

「ツアーが再開する前に、選手が何人か集まって本格的な練習試合ができないかな」

「せっかくなら楽しい要素も入れた、イベントにしちゃおうか?」

 2人の間で、そんな世間話に似た『企画会議』が交わされたのは、わずかに1カ月半ほど前のこと。

「参戦選手は関東在住の8名」「真剣勝負とエンタメとの2本立て」などの柱を立て、大まかな枠組みを定めると、実現までの足取りは軽かった。

 無観客だが、イベントの一部始終を撮影し後日オンライン配信すること。

 イベント当日までのプロセスも公開し、参加選手8名のキャラクターも広く知ってもらうこと。

 そのプロセスの中で、有志のファンを招いてのZoomミーティングが行なわれ、クラウドファンディングが始まり、イベント名がギリシャ神話の夢の神にちなんだ『ONEIROS(わんいろ)』に決まった。

 そうして迎えた、7月9日のイベント当日――。
  コートサイドにはオンライン配信用のカメラクルーに加え、複数の取材陣や、クラウドファンディングで観戦券を入手した数名のファンも顔を並べる。

「思っていた以上に人が多い!」

 エキジビションとはいえ、久々に“ギャラリー”の見守る中でプレーする選手たちは、懐かしい緊張感を覚えながらボールを打った。

 その真剣勝負の空気感を作ったのは、先陣を切ってコートに立った土居と清水綾乃だろう。両者がいきなり繰り広げるデュース続きの熱戦に、続く穂積絵莉も「2人が良いテニスしていたから、余計に緊張した」と苦笑い。

 ツアー中断中は、フォアハンドの改善に努めていたという穂積だが、いざ試合形式の打ち合いになれば、力みや焦りが手元を狂わせた。

「練習と試合って、こんなに差があるものなんだ」

 そのような気づきもまた、どこか心地よい「ないものねだり」だった。

 それら真剣勝負から一転、午後に行なわれたのは、お遊び要素満載の“エンタメ試合”である。

 内容の一部を明かすと……各ポイント前に両選手が、「サーブ&ボレー」「スライスオンリー」などと書かれた“条件カード”を引き、その指示通りにプレーしなくてはいけない……というようなもの。

 その他にも“ターゲット当て”や“トリックプレーに挑戦”などのミニゲーム的な内容満載。予測不能な珍プレーの連発に、選手たちも文字通り抱腹絶倒、コートから笑い声が溢れ続けた2時間となった。(※このイベントのオンライン鑑賞券は、クラウドファンディングのリターンとして入手可能)

 かくして予定していた全てのプログラムを終え、撤収準備を進めていく土居や井上の顔には、種々の感情が入り交じる複雑な表情が浮かんでいた。
  今回のイベント名の考案に時間をかけ、デザイナーに依頼し普遍性の高いロゴやグッズを作成したのは、一過性の盛り上がりで終えるのではなく、継続して開催していくためでもある。

 その嚆矢となる今回は、何より実行することに意義があり、ミーティングに参加したファンも含む当事者たちが楽しむことが不可欠だった。

 ただ今後もつづけていくとなった時には、何を理念とし、誰に向けてやっていくべきなのか――?

「今回は選手もみんな時間があったからできたけど、ツアーが始まったらこのやり方では難しい。国内でのテニス人気は高めたいけれど、そのために選手が世界で活躍する機会が少なくなったら本末転倒ですから」

 WTAツアーを主戦場とする土居は、選手としての本分と普及活動の両立の難しさを漏らす。

 また、今回はコアなテニスファンとの交流に重きを置いたが、これからはより広い層にリーチしていく必要性も出てくるだろう……それらの思いが、イベント終了と同時に早くも頭を駆け巡った。
  現在、小堀桃子のコーチをつとめる井上にしても、次への一歩をどこに踏み出すかは頭を悩ます課題だ。一選手のコーチである自分が、複数の選手を集めイベントの指揮をとってよいものか?自分たちにとって楽しいことが、果たしてファンの楽しみにもなるのか?

「終わったら答えが見えるかと思っていたけれど、ますますわからなくなりましたね……」

 その自問への答えが見えるまで、井上にとっても今回のイベントは終わらないようだ。

 もっとも、土居や井上らが考え悩み動いていく姿は、第1回『わんいろ』参加者それぞれの胸に、何かしらの種を産み落としもしただろう。

 参加選手最年少の本玉真唯は、「ファンの方の姿も見えて、こんなに応援してくれる人たちが居るんだと思えた。少し周囲を見る目が変わった」と言った。

 今回のイベント名『わんいろ』には、選手それぞれが持つ色を用いて、1つの大志を描くとの意味が込められているという。

 この先、選手やファンたちがどのような絵を描いていくのか? 

 可能性は無限にある。

取材・文●内田暁

【PHOTO】土居美咲ら世界で戦う熱き日本人プレーヤーたち!

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