錦織圭が12年前のツアー初優勝に「テニスはエキサイティング」と語った理由【海外テニス】

錦織圭が12年前のツアー初優勝に「テニスはエキサイティング」と語った理由【海外テニス】

少年時代からテニスが大好きだったという錦織の言葉には、テニスの上達はもちろん、仕事やプライベートでも役立つエキスが感じられる。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

昨年は、10月に右ヒジを手術してツアーを離脱した錦織圭。当時8位だったランキングは31位まで落としたが、現在はヒジの状態を含めてコンディションには問題ないようで、1年ぶりとなる全米オープンを前に「すごくワクワクしている」と心境を語っている。

 そんな錦織は海外の選手と比べると体格的には恵まれていないが、それでも2014年の全米準優勝をはじめ、厳しいツアーのなかで数々の結果を手にしてきた。

 では、その強さの秘密はどこにあるのか……。ここでは錦織が口にした「言葉」からそのヒントを探ってみた。

 錦織は中学生になると、フロリダにあるIMGアカデミーへ留学するため、盛田ファンドが主催する選考会に参加した。そこで「人に負けないものは?」と質問され、

「テニスがすごく好きなところ」

 と答えているが、この言葉通りに錦織が重要なポイントでも委縮せず楽しそうにテニスをする姿にIMGのコーチは驚いたという。そして一緒に選ばれた2人と留学することになる。
  IMGアカデミーでは、世界中から集まった有力ジュニア男女300人が、プロを目指して寮生活を送っていた。試合に勝てば待遇が良くなる厳しい競争の世界。その中で実力を認められた錦織は、有望選手が集まるトップグループで練習を続けた。その頃を振り返って

「結果を出さなくてはいけない。良い意味でも悪い意味でもプレッシャーがあり、より強い気持ちを持てた」

 と振り返る。当時は背も低く、身体の線も細かったので、海外の大柄な選手を相手に結果を出すのは大変だったはず。だが本人は、そうした身体的なハンディは感じていなかった。「それぞれのスタイルがあるのがテニスの面白さ。背が低くてパワーがないからと悩んだことは1回もなかった」のだ。

 身体的なハンディを補うものとしては、

「僕には他の選手が持っていないスピードだったり、テクニックだったりがある。パワーの部分では負けているかもしれないけど、他の部分では十分、テニスという競技では補えるので……」

 と自分自身の能力を冷静に分析して進化につなげた。
  18歳になるとATPツアーにも出場。

 初優勝することになる2008年のデルレイビーチは、予選からの出場であった。当時の錦織にとっては本戦に出るだけで大変なので、彼自身も予選突破で十分だと考えていた。

 だが、本戦に上がると接戦を制しながら決勝へと駒を進めた。

 当時、錦織の世界ランクは244位で、決勝の相手ジェームズ・ブレークは12位。決勝の第1セットをブレークが先取した時は、誰も錦織が勝てるとは思ってもいなかった。
  ところが、そこから逆転して松岡修造以来の日本男子16年ぶりのツアー優勝を達成する。勝因について聞かれた錦織は、

「自分ではあり得ないぐらい落ち着いていた。アップダウンもなかったし、ミスに怒って自分を見失うこともなかった」

 さらに技術的な進歩について聞かれると、

「無駄なショットがなくなったこと。守るだけではなく、攻めながらもミスをしないというテニスを目指していた。それがすごく良くなってきたと思う」

 と自己分析した。

 決勝で敗れたブレークは、錦織が放つ『エア・ケイ』について「実戦であんなに決められるのはすごい」と驚いたが、それは錦織の目指すテニスができていた証拠とも言えるだろう。

「テニスはエキサイティング。身体が小さくてもトップ選手になれるんだから」

 この優勝を自信に変え、さらに実績を上げていくことになる、錦織が今から12年前に発した言葉である。

※月刊スマッシュ2019年11月号から抜粋・再編集

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