新型コロナで二極化する選手たち。テニス界に活気が戻りつつある中、一部ではクレーシーズン離脱の選手も…【海外テニス】

新型コロナで二極化する選手たち。テニス界に活気が戻りつつある中、一部ではクレーシーズン離脱の選手も…【海外テニス】

6月下旬に新型コロナに感染したディミトロフは、ツアー開催に肯定的な意見を示している。(C)Getty Images

人々の不安の声が渦巻くなか8月31日に開幕した全米オープンも無事終幕。開幕直前にはブノワ・ペールが新型コロナウイルスの陽性反応を示し、濃厚接触者である数名の選手たちは棄権を余儀なくされた。これまでにもテニス界では、世界各地で選手の陽性が報告されており、感染経験者は心身へのダメージのつらさを吐露している。

【PHOTO】全米オープン2年ぶり2度目の優勝を果たした大坂なおみ!今大会を厳選写真でプレイバック!

 6月下旬に感染したグリゴール・ディミトロフは、男子世界ランク1位のノバク・ジョコビッチが主催した非公式大会「アドリア・ツアー」の出場後に陽性が判明。復帰するまでに約1ヵ月間を要し、7月下旬に出場した「アルティメット・テニス・ショーダウン(UTS)」では、当時の状況をこう振り返った。

「ウイルスから受けたダメージは非常につらかったよ。体力が完全回復するには簡単ではないとも感じた。感染時、呼吸がしにくくて、体調が優れずとても疲れていた。食事の味も匂いも感じられず、考えられる限り全ての症状があったと思う。

 ある日、僕はとても気分が良くて、4時間ほど外出する予定だったんだ。でも突然体調が悪くなってしまって、昼寝をして休むことになったよ。コロナに感染すれば20日隔離される、1日が24時間だから…計算できるでしょ?僕は500時間を一人で過ごしたよ。その時、僕は人として、アスリートとして、色んな存在として、考えが悪い方向に行くことを避けられなかったんだ。感染時の精神状態を過小評価すべきではないよ」
  そして7月には、アメリカのフランシス・ティアフォーも感染。練習拠点のフロリダからアトランタへと移動したが、エキシビション大会「ドラフトキングス・オールアメリカン・チーム・カップ」の初戦勝利後に体調不良を訴え、再検査で陽性が判明した。移動時の空港で感染したか、あるいは大会前の数日間で食事を取りに行っている時に会った人から感染したかもしれない。本人も感染経路に悩み考えたうえで、「感染経路の可能性はどこにでもある」と話している。

 しかし、上記のふたりは新型コロナの感染経験者であると同時に、ツアーの開催に対し肯定的な意見を示す選手でもある。全米オープンの開幕前、ティアフォーは同大会の感染リスクに対して「大会に関わる人々は各種のプロであり、うまくいけば彼らは感染予防を高いレベルで実行できる」と語っており、アメリカでイベントの開催に成功している他のプロリーグのようにテニス界の再生と復活を目指す姿勢を示していた。

「明らかにNBAはそれを実現できているよ。そして明らかに野球は苦戦しているね。それはとても大変なことだよ…しかし全員が検査をして感染予防策を守り、正しい行動をすることを望んでいるよ…だから他の選手が何故この大会に出場しないのかわからないよ」
  このほかにも、全米オープンにはアメリカのスター選手であるセレナ・ウィリアムズが6月の時点でプレーすることを約束し、大会開催を後押し。男子はジョコビッチや世界3位のドミニク・ティームも出場し、数少ないトップ選手の参戦に全米テニス協会(USTA)も一安心したかもしれない。ディミトロフは2回戦で敗退となったが、次戦のイタリア国際では「まだ50%の状況だけど、100%何もないよりは良い」と語っていた。

 しかし、その一方でツアーから距離をとっている選手が多いのも事実だ。昨年覇者のラファエル・ナダルは、渡航への懸念を理由に全米オープンをスキップし、クレーコートシーズンに専念。女子の全米オープンは、ランキング上位10選手のうち6名が欠場する異例の事態となった。その中でも、世界1位のアシュリー・バーティは先日、全仏オープンを含むクレーコートシーズンの全欠場を発表。自身のインスタグラムにはこう綴っている。

「昨年の全仏オープンは私のキャリアの中で最も特別なトーナメントだったので、軽い気持ちで決めたわけではない。決断の理由は2つ。1つ目は、新型コロナウイルスにはまだ健康上のリスクがあるということ。もう1つは、オーストラリアの州境閉鎖でコーチと一緒にトレーニングできず、理想的な準備ができないこと」
  バーティと同じオーストラリアのニック・キリオスも、今シーズン離脱の可能性が高い。メディアプラットフォーム「Uninterrupted」に公開されたビデオでは、全米オープン欠場の理由を「人々のために、我がオーストラリア人のために、何百・何千もの命を失ったアメリカ人のために、あなた方全員のために、今回は参加しない。それが自分の決断だ」と報告。6月に陽性反応を示したジョコビッチ主催の「アドリア・ツアー」出場者に対しては「パンデミックを真剣に受け止めていない」と非難を繰り返していた。

 ツアーはヨーロッパ中心としたクレーコートシーズンに突入したが、まだまだ慎重にならざるを得ない状況。無観客での開催も含め、一部選手の欠場はこれからも続き、パンデミック以前のように賑やかなツアーには簡単に戻ることはできないだろう。今後もしばらくは選手の見解や行動は二極化していきそうだ。

文●久見香奈恵
WTA125大会ダブルス優勝、全日本選手権女子ダブルス優勝、混合ダブルス準優勝といった戦績を挙げた元プロテニスプレーヤー。2017年に現役引退後はテニス普及活動や、イベント出演、WEB執筆等を行なっている。

関連記事(外部サイト)