ジョコビッチも「失格の可能性が減る」と自虐しつつ賛同。「クレーにも持ち込む時」全仏OPで高まるビデオ判定導入の気運

ジョコビッチも「失格の可能性が減る」と自虐しつつ賛同。「クレーにも持ち込む時」全仏OPで高まるビデオ判定導入の気運

全米オープンでの失敗を絡めて、ビデオ判定導入に賛同するジョコビッチ。(C)Getty Images

クレーコートで、ホークアイ(ビデオ判定)は必要か――?
 
 ここ数年、大会のたびに俎上に載せられるこの議題が、今年は一層の関心を集め熱を帯びている。火付け役となったのは、2回戦で敗れたデニス・シャポバロフ(カナダ)が、試合後にソーシャルメディアに載せた一枚の写真だ。

「When will we have Hawkeye on clay? (いつになったらクレーにホークアイを導入するの?)」

 そのような文言と共にアップされたのは、自身が敗れた2回戦、テレビ中継の一場面をキャプチャーしたもの。映っていたのは、ファイナルセットのゲームカウント5−4の局面で、インと判定された相手のリターンが、指一本分ほどラインをオーバーしていたシーンである。もし判定がアウトとなっていたら、シャポバロフは、2連続のマッチポイントを手にしていた場面でもあった。
  グランドスラムがホークアイによるビデオ判定を採用したのは、2006年の全米オープンが最初である。発端となったのは、その2年前。セレナ・ウィリアムズ(アメリカ)が、準々決勝のジェニファー・カプリアティ(アメリカ)戦での一つの判定を「ミスジャッジだ」と糾弾し、後に主審も誤審だったと認めた出来事だった。

 スター選手の声に呼応するようにテニスシーンに出現したホークアイは、2007年には全豪オープンとウインブルドンでも採用され、今では複数の大会が全コートに導入するまで、メジャーな存在となっている。

 それら世の趨勢に背を向けて、ホークアイを用いない唯一のグランドスラムとして残っているのが、全仏オープンだ。その理由は、クレーではボールの落下跡が可視的に残るため、カメラは不要という理論。またクレーでは、ホークアイの判定精度が低いとの話もある。それらのロジックを根拠とし、全仏トーナメントディレクターのギ・フォルジェ氏は、「うちにはホークアイは必要ない」との旗幟を鮮明にしていた。

 ただ今回ばかりは、FFTも旗色が悪い。シャポバロフの訴えを受け、多くの選手たちが彼の主張を援護射撃しているからだ。
  先の全米オープン優勝者のドミニク・ティーム(オーストリア)は、「100%、ホークアイの導入に賛成だ。デニスの試合ではミスジャッジがあったし、僕の試合でも誤審があった」と語気を強める。

 また、クレーではビデオ判定の精度が低いとの見識に関しても、ティームは異論を唱えた。
「リオの大会では“フォックス・テン”システムが採用され、非常に正しく稼働していた。僕はリオで3試合やったが何も問題はなかった。来年は、全てのクレーの大会でも導入されれば良いと思う」

 フォックス・テンはスペイン人が開発したビデオ判定システムで、楽天ジャパン・オープンを含む複数の大会で採用されている。ホークアイを上回る台数のカメラを用いており、判定の際にモニターに表示される動画も実際の映像を用いるため、ホークアイよりも信ぴょう性が高いとの声も多い。

 若手の旗手のステファノス・チチパス(ギリシャ)も、「ホークアイをクレーに持ち込む時だ。この時代で、そうならない理由が分からない。技術は進化し続けているし、どのサーフェスでも正確に働くはずだ」と、ティームらの意見に賛同する。
  世界1位にして、選手評議会会長のノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、より先鋭的な見解だ。
「この競技の歴史や文化、携わる人びと全てに敬意を表した上で言うのだが、線審にこだわる理由が分からない」

 ジョコビッチのこの意見は、今年ニューヨークで開催されたウェスタン&サザンオープンと全米オープンで、ホークアイがラインジャッジも代行したことに由来する。この機械判定は既に、米国開催の“ワールド・チーム・テニス”や“NextGen ATPファイナルズ”でも採用されていたが、ランキングポイントのつくツアー大会等では初の試みだった。それが問題なく2大会を終えたことで、他の大会での活用を求める機運も高まっている。

「もちろん機材導入にはお金が掛かるだろうが、我々は先に進まなくてはいけない。早晩、線審を置く必然性はなくなると思う」
 それらの見解を毅然と述べるジョコビッチは、最後には、照れくさそうに相好を崩して付け加えた。

「そうすれば、僕がニューヨークでしでかしたこと(線審にボールをぶつけた廉で失格)が起きる確率も、ぐっと低くなるしね」

文●内田暁

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