「テニスが苦痛なこともあった」コロナ禍で翻弄される日本のジュニア選手たち。全仏OP出場で得られた新たな指標とは

「テニスが苦痛なこともあった」コロナ禍で翻弄される日本のジュニア選手たち。全仏OP出場で得られた新たな指標とは

力試しの場が失われ、進路に悩む三井。(C)Getty Images

「ラストの年なので、ウインブルドンとUSオープンには出たかった……」
 無念を隠しきれない声で、三井駿介は言った。
 5月に18歳を迎えた彼にとって、今年はジュニア最後の1年。胸を張ってプロになるためにも、グランドスラムJr.で結果を残し、スポンサーを得たいとの思いもあった。

 そのプランは、新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、日を追うごとに崩れていく。ジュニアの国際大会は次々に中止になり、ウインブルドンは大会そのものがキャンセルに。開催された全米オープンも、ジュニア部門は廃止された。

 国内外の大会が消えていく中で、三井は「僕は幸い、練習はできていた方だと思います」という。ただ、軽快なフットワークをベースに配球の妙で勝負する三井のテニスは、実戦経験が不可欠だ。

 今回の全仏オープンJr.で、7ヵ月ぶりの公式戦を戦った三井は、クレー慣れしている第6シード相手に、序盤はリズムを築けない。
 「自分は、試合勘が大切な方なので……久しぶりの試合で、なかなか勝負どころで良いプレーが出来ませんでした」

 プロ転向の一つの指標としていた、グランドスラムJr.ベスト8に届かなかった三井は、今はアメリカの大学進学も選択肢に入れているという。

 三井と共に今大会に出場した磯村志も、ジュニア最後の年を迎える高校3年生。単複ともに初戦で敗れたが、彼の場合はグランドスラムJr.初出場ということもあり、半ば諦めていた全仏に出られたことが、一つの刺激になったようだ。コロナ対策に窮屈さを覚えながらも、会場をたっぷり堪能できたため、観客が少なかったのはむしろ「良かった」のだとも言う。

「いろんな場所を探検できたし、プロの選手も普通に会場を歩いていたので、近くで見ることができました」と語る表情は初々しい。

 コロナ禍で、多くの大会がキャンセルされたのは残念ではあったが、そのぶん、国内でプロ選手と練習する機会があったことも、プラスに捉えている様子。特に頻繁にボールを打ち合ったのが、内田海智。

 初めての練習の時には、「40分で熱中症になって倒れた」と苦笑いを浮かべるほどの差を見せつけられたが、回数を重ねるごとに内田の剛球にも慣れていったという。

 目に見える結果ではないものの、この半年ほどで新たな視座を得た磯村は、「プロになろうと思っています」と明言した。
  女子の方では、シングルスの出場は成らなかったものの、長谷川愛依と松田絵理香がダブルスのワイルドカード(主催者推薦枠)を得て出場。久々に組んだ急造ペアではあったが、2試合連続で逆転勝利の勝負強さを発揮し、ベスト8入りを果たした。
 
 高校2年生の長谷川は、今年を「勝負を掛ける年」と見定めていたという。それだけに、国際大会中止の報を聞くたび落胆し、「テニスをするのが苦痛なこともあった」と明かす。

 それでも、コロナ禍で多くの人々が苦しんでいることを知るにつけ、「テニスという頑張れることがある自分は、幸せだなと思った」と言う。今季序盤に思い描いた、「ウインブルドンJr.に予選から出場し、全米では本戦。結果を残してプロ転向を決め、来年はその準備にあてる」という青写真は、幻に終わった。
  それでも今は、「来年に向けて頑張ろう」と気持ちを切り替えつつある。

 なお長谷川は日比野菜緒と同郷で、以前は、日比野が通ったテニススクールを拠点としていた。今でも日比野が帰省する年末などは、一緒にボールを打ってもらい、助言ももらっているという。

「菜緒ちゃんの試合や結果は、いつも見て励みにしています」と目を輝かせる長谷川は、「いずれは菜緒ちゃんと同じところでやりたい」と断言することをためらわなかった。

 突如世界を襲ったコロナ禍は、ただでさえ進路に悩む少年・少女たちの視界に濃い霧を落とす。その中で迎えた今大会は、出場した選手たちに、進むべき道を選ぶ根拠や指標を与えそうだ。

文●内田暁

【PHOTO随時更新】世界の舞台で躍動する日本人トップジュニア特集

関連記事(外部サイト)