同じコーチに師事する内藤祐希と森田あゆみが初対戦で手にした収穫とは…【全日本テニス】

同じコーチに師事する内藤祐希と森田あゆみが初対戦で手にした収穫とは…【全日本テニス】

2018年は世界ランク600位代だったが、今年2月には175位まで引き上げるなど、日本女子テニス界注目の19歳、内藤が同門の先輩を破り2回戦進出。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

「わたし、あゆみちゃんに当たる気がするんだよねー」

 全日本テニス選手権を前に冗談交じりで周囲の人々に話していた予感は、いざ現実になると、口にしなければ良かったと悔いる言霊となる。

 ドローを見ても現実味がなく、直前まで「リドロ―(やりなおし)」になるのではと思っていた。

「特にやりにくいというのはなくて、いつもどおり緊張して試合に入っていた」という内藤祐希だが、彼女にとって、森田あゆみとの試合が特別な一戦なのは間違いない。

 内藤が、森田の長年のコーチである丸山淳一の門を叩いたのは、18歳になったばかりの昨年の初春のこと。本格的に世界を転戦するにあたり、経験豊富な丸山の知識と慧眼を欲した。

 その時に丸山が出した条件は、「森田あゆみとしてのコーチが、自分にとっては最優先。それでも良いのなら」というもの。その条件を快諾した内藤は、遠征時にはスイス人のコーチに帯同してもらい、国内にいる時は森田とともに、丸山に師事しはじめた。

「試合で感じる緊張から逃げてはだめだ。それを乗り越えてこそのトップ選手だ」

 丸山から伝えられるそのような薫陶の数々は、彼女の中での、世界の捉え方を変えていく。昨年はITF5大会で優勝し、ランキングも600位代から、200位を切るまで大きくジャンプアップした。

 そのように国際大会では実績を残している内藤だが、以外にも、国内のタイトルには縁遠い。

「私は、全国大会のタイトルを取ったことは一度もないので、取りたいという気持ちがあり(今回の全日本選手権出場を)決めました」

 明確に優勝を目標に見定め、彼女は今大会に挑んでいた。
  内藤が渇望するその賜杯を、森田は15年前、15歳の日に手にしている。

 そのタイトルを足がかりに世界へ飛び出した森田は、21歳にして世界ランキング40位に到達。だが、腰や手首など多くのケガを抱えた彼女は、6年ほど前から、徐々に表舞台から姿を消し始める。幾度も手首にメスを入れ、ランキングも大きく下がり、ただそれでも彼女は、再びトップレベルで戦う日を諦めはしなかった。

 長く続く治療とリハビリの日々を過ごした森田は、昨年の夏から試合に出始め、手首に痛みのない日は、全盛期を彷彿させるプレーを見せまでになる。それだけに、コロナ禍によるツアー中断に落胆はしたが、同時に「手首は時間が経つほど以前の状態に近づく」とポジティブに捉えた。

「今年最後の試合ということもあるし、全日本の舞台では、常に『自分の力を出し切りたい、いい試合がしたい』という思いがあった。それは今回も変わらない」

 結果よりも、今持てる全てを出しきることを誓い、森田は13年ぶりに全日本に出場した。
  立ち上がりで両者ともミスが多かったのは、緊張に加え、慣れぬ新設コートへの適応に時間がかかったこともあるだろう。互いにサービスキープに苦しむなか、競った局面でこそ攻める内藤の強気が勝機を引き寄せる。その姿勢こそまさに、内藤が丸山から得たものだろう。

 その内藤が第2セットでは、「大切なところで弱気になった」と省みる。対する森田は相手の弱気を見逃さず、両手打ちの強打を左右に打ち分け、中盤まで先行した。

 その流れを再び変えたのは、ドロップショットなどを用いた内藤の緩急。ゲームカウント2−4から4ゲーム連取で、内藤が勝利へと駆け込む。試合終了の瞬間、いずれも笑みをこぼす勝者と敗者は、ネット際で堅い握手を交わした。
 「その時にできるベストを最初から最後まで出そうと思い、それはできた。自分の中では次に繋がる試合だったなと思います」

 森田がそう明言すれば、内藤は「自分のプレーが6割くらいできたので、まぁ良かったかなと思います」と一定の満足感を見せつつも、「サービスは明日改善しなくてはいけない点」と表情を引き締めた。

 初戦で交錯した2人の足跡は、互いに得た収穫を携えて、それぞれの「次」へと向かっていく

【女子シングルス1回戦】
○内藤祐希(亀田製菓)[2]  6-3 6-4 森田あゆみ(安藤証券)●
※名前の後の数字はシード

取材●文=内田暁

【全日本テニス選手権PHOTO】女子/1日目|内藤祐希ら出場選手のプレー集!
 

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