全豪初戦、錦織圭は難敵カレノブスタとどう戦うか?前哨戦でのプレーから見えてきた選択肢〈SMASH〉

全豪初戦、錦織圭は難敵カレノブスタとどう戦うか?前哨戦でのプレーから見えてきた選択肢〈SMASH〉

今季初戦となったメドベージェフ戦、錦織のプレーは悪くなかった。本人もポジティブな言葉を並べていたが…。(C)Getty Images

「思ったより、悪くなかったですね」

 これは錦織が、ATPカップ初戦のロシア戦で、ダニール・メドベージェフに敗れた後に残した言葉である。

 2−6、4−6の敗戦ながら、4か月ぶりの公式戦、そして2週間に及ぶ“完全隔離”明けという状況を考慮した時、十分に手応えを得られる内容でもあった。第1セットこそ世界4位の強打と早い展開のテニスに飲まれたが、第2セットでは、サーブ&ボレーを織り交ぜ相手にプレッシャーをかけるなど、錦織らしい駆け引きの妙やプレーの幅も披露する。

「体力的には意外にできました」「2セット目は全部良かった」など、試合後の本人のコメントも、ポジティブなそれが並んだ。

 ただ、この時に錦織がのぞかせたほぼ唯一のネガティブな思いが、「アップダウンがあるのは否めない」ことである。そして、本人が試合の中で感じた安定感の欠如は、もう少し長いスパンで見た時にも顕在化する、不安要素でもあった。
  メドベージェフ戦から2日後の、対ディエゴ・シュワルツマン戦。高低差も含め、コートを広く用いるのを得手とするストロークの名手との試合後に、錦織は「1試合目の方が、ボールの感覚は良かった」と落胆の表情を見せる。

「まだ多くの感覚を失っている」「自分のしたいプレーに、身体の動きがついてきてくれなかった」と、口をつく言葉にも苦渋ともどかしさが滲んだ。

 対戦相手との相性もあれば、その日の身体の状態や、気温やサーフェスの微妙な差異が影響を及ぼすこともあるだろう。いずれにしても、「ボールを打つ感覚」という本人の中にしか存在し得ない評価基準が、その時々によって大きく上下動するのが、今の錦織のリアルだ。

 シュワルツマン戦においては、1試合の中に見られる感覚や試合勘の上下動は、スコアにもダイレクトに反映された。最初のリターンゲームでデュースに持ち込むもキープされ、続く自身のサービスゲームを3度のデュースの末に落とすと、以降はミスが増え立て直すことができなかった。
  第2セットは逆に、第1ゲームを競りながらもキープすると、続くゲームを即ブレーク。サービスゲームの組み立ても巧みで、ゲームカウント3−0とリードを広げた。ただ、次のゲームでブレークの機を逃すと、途端にリズムを失い3−3に追いつかれる。

 その後は一進一退の攻防を繰り返しながら、最終的にはタイブレークで第2セットを奪取。そして第3セットの最初のリターンゲームでも、深いボールを左右に打ち分けスコア先行。2度のブレークチャンスを作った。

 だが、このゲームを取り逃した時、試合の趨勢は明瞭に決する。以降は、打ち合いを支配しオープンコートを作っても、決めるべきショットがラインを割ったりネットに掛かる、もどかしい時が続く。「あー、もう!」と声を上げ募らせた苛立ちを払拭できず、最終セットは1つのゲームも取れなかった。
  初戦で良い手応えを覚えただけに、それが手元からこぼれ落ちた喪失感と落胆は大きい。メドベージェフ戦の翌日に「凄い筋肉痛」に襲われただけに、体力の回復にも不安を覚えているようだ。

 しかも全豪オープン初戦の対戦相手は、ストロークの安定感に定評のある、パブロ・カレノブスタ。簡単にもらえるようなポイントは、期待できない好選手だ。

 カレノブスタとの過去の対戦を踏まえ、錦織は「なるべく早いタイミングでプレーしたい」との意向を口にする。ただ、シュワルツマン戦では早い展開を心掛けた時ほどミスが増え、その事実が迷いを深める要因ともなった。

 ATPカップでの2試合を終え、錦織は「強いて良い点を挙げれば」と前置きした上で、「じっくりやるプレーは良かった」と言っている。しかしじっくり打ち合えば試合時間は長くなり、体力面での負担が増すのは避けられない。

 試合当日、目覚めた時に身体は軽いと感じられるか? ボールを打つ感覚は、良いのか否か――。

 その時々で移り変わる種々の要素を勘案し、勝機を模索する戦いになりそうだ。

文●内田暁

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