ジョコビッチが”ぶちまけた”全豪オープンの舞台裏。メディアの攻撃に辟易、コーチも激昂「誰もがノバクを叩いた」【現地発レポート】〈SMASH〉

全豪オープンの優勝会見でノバク・ジョコビッチが告白 メディアの攻撃に辟易

記事まとめ

  • 全豪オープンの優勝会見でノバク・ジョコビッチが、"内なる怒り"を赤裸々に語った
  • ジョコビッチは「パフォーマンスが雑音により乱されることを良しとしなかった」と発言
  • 専用機で入国した関係者から陽性者が出て、一部選手が隔離に不満を発信し住民が批判も

ジョコビッチが”ぶちまけた”全豪オープンの舞台裏。メディアの攻撃に辟易、コーチも激昂「誰もがノバクを叩いた」【現地発レポート】〈SMASH〉

ジョコビッチが”ぶちまけた”全豪オープンの舞台裏。メディアの攻撃に辟易、コーチも激昂「誰もがノバクを叩いた」【現地発レポート】〈SMASH〉

批判を受ける中で優勝と勝ち取ったジョコビッチ。(C)Getty Images

決勝のスコアは圧勝だったが、それでも今大会の優勝は、これまでで最も困難なものだったか――?

 歓喜の瞬間から、およそ1時間半が経過したインタビュールーム。優勝会見の皮切りとなったその問いに、9度目のトロフィーを抱いたばかりのノバク・ジョコビッチは、堰を切ったように語りはじめた。

「色々な感情があった。このパンデミックの最中に、選手たちがここに来ることに対する報道においても。我々は多くの困難と犠牲を払ってやってきた。だが最初の頃、僕らは歓迎されていないと感じた。テニス選手がやってきたことについて、メディアが色々と書き立てたから」

 確かに、大会開幕の3週間前……。選手をはじめとする関係者が海外から渡って来ることに、批判的なメディアの論調がなかったわけではない。国民すら帰国できないほど厳しい入国規制が敷かれているなか、チャーター便で入国した関係者から複数の陽性者が出たことで、メルボルン市民間で不安が広がっていると報じられた。

 それにもかかわらず、一部の選手たちが“2週間の隔離”に対する不満をソーシャルメディア等で発信したため、住民からの批判の声が高まっている……と。

 そのメディアからの攻撃の矢面に立ったのが、ノバク・ジョコビッチである。ジョコビッチが、州政府に「テニスコート付きプライベートハウスへの選手の移動」「隔離期間の短縮」「良い食事」などを求め、それに対し州首相が「誰しも要求を出す権利はある。だが答えは、ノーだ」と断言する映像が、繰り返しニュースに流れもした。
  ジョコビッチは、それらの報道から距離を置こうと試みるが、ふとテレビをつけた時、耳に入ることもある。

「もちろん、良い気分はしない。特に、きちんと事実を確認もせず、不当に批判する人の声を聞くのは。ただこの手のことには、もう慣れた。僕の人生で初めて起きることではないし、そして、最後でもないだろう」

 今大会、この件につきジョコビッチがここまで赤裸々に想いを語るのは、この時が初めてだった。それは翻せば、優勝するその瞬間まで、常に胸の内に燻ぶらせていたということでもある。

 ジョコビッチの内なる怒りは、最も身近にいた人物の一人である、コーチのゴラン・イバニセビッチにも痛いほど伝わっていたようだ。
 「彼は悲痛なまでに、この優勝を必要としていた」

 やはり決勝戦後の会見で、元世界2位の“レジェンド・コーチ”が、選手の想いを代弁する。

「高い所から見ている人物は、彼がどれだけ不当な目にあってきたか知っているだろう。昨年の全米オープンでの出来事、そして全仏オープン決勝での不甲斐ないプレーを受け止めるのは、簡単なことではない。ここに来てからの彼は、14日間の隔離生活を送りながら、他の選手たちを助けようと務めた。立ち上がったのは彼だけだった。なのに、誰もがノバクを攻撃した。他に叩く人がいない、じゃあノバクを叩いておけ……とでもいうように」

 イバニセビッチの言葉は、止まらない。「大会が始まりケガをしても、今度はそれを疑った。彼は(ケガをした)フリッツ戦の後にMRIも撮ったんだ。医師の説明も受けた。痛みにどう対処するか、どれくらい我慢できるかは人それぞれだ。鍵となったのは、ラオニッチ戦、そしてズベレフ戦。そこからはどんどん良くなってきて、今日の試合は傑作の類だ。信じられない、信じがたいパフォーマンスだ」
  勝利を「欲していた」ではなく「必要としていた」と表現するあたりに、切迫感が込められる。そのイバニセビッチの発言を伝え聞いたジョコビッチも、コーチの意見に同意した上で、隣に置かれたトロフィーに一瞥を投げると、会見室を見渡すようにして断言した。

「結局のところは、誰しも自分の意見を述べる権利はある。それに対し、反論するかどうかは僕の問題だ。僕は、自分のパフォーマンスが、雑音により乱されることを良しとしなかった。このトロフィーを勝ち取ったことこそが、僕からの返答だ」

 すでに、ランキング1位の最長在位記録更新を確定させているジョコビッチは、「これで、グランドスラムに集中できる」と、さらなるタイトル獲得と記録更新に焦点を定めた。

現地取材・文●内田暁

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