ゲームや電子書籍も対象!国立国会図書館の「納本制度」とは

ゲームや電子書籍も対象!国立国会図書館の「納本制度」とは

大迫猛さん(@oh_gorun)のもとに届いた納本をお願いする書類(大迫猛さん提供)

 日本で刊行された出版物が集まる国立国会図書館。ありとあらゆるものが収蔵されていますが、実はゲームも収集対象って知ってますか?とあるゲーム制作会社に届いた書類から、国立国会図書館を支える「納本制度」についてご紹介しましょう。

■ゲームも国立国会図書館の収集対象!

 ゲームブランド「Qute(キュート)」の代表を務める大迫猛さん(@oh_gorun)のもとに、国立国会図書館から「納本のお願い」と題された書類が届いたのは、2020年2月6日のこと。その様子をTwitterで「国立国会図書館から「納本のお願い」が来たので、ここ十年の弊社製ゲームを全部送りました。記録に残るし、良い環境の保管庫らしいし、ありがたい!もっと早く送るべきだったけど、恥ずかしながらゲームの納本は思いつかなかった。。。」と投稿しました。

 大迫さんは、QuteからリリースされたXbox360向け縦スクロールシューティングゲーム「エスカトス」と、同じくXbox360向け縦スクロールシューティングゲーム「ギンガフォース」、どちらも未開封の新品パッケージを国立国会図書館に送付したとのことです。

 このツイートで、ゲームも国立国会図書館の収集対象であることを知った方も多いのではないでしょうか。

■そもそも国立国会図書館の役割とは

 国立国会図書館は、1948(昭和23)年の「国立国会図書館法」に基づいて設置されたもので、その第二条に「図書及びその他の図書館資料を蒐集し、国会議員の職務の遂行に資するとともに、行政及び司法の各部門に対し、更に日本国民に対し、この法律に規定する図書館奉仕を提供することを目的とする」と規定されています。現在は東京の本館・新館(東京都千代田区永田町1-10-1)のほか、2002(平成14)年10月に開館した関西館(京都府相楽郡精華町精華台8-1-3)、国際子ども図書館(東京都台東区上野公園12-49)の3か所が存在しています。

 法律の前文には「国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立つて、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される」と、その趣旨が記されており、日本だけでなく世界のために存在する図書館なのです。

 このため、国立国会図書館が収集・保存する資料は多岐にわたります。国立国会図書館法の第二十四条に規定されている資料では次の通り。

1. 図書
2. 小冊子
3. 逐次刊行物
4. 楽譜
5. 地図
6. 映画フィルム
7. 前各号に掲げるもののほか、印刷その他の方法により複製した文書又は図画
8. 蓄音機用レコード
9. 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつては認識することができない方法により文字、映像、音又はプログラムを記録した物

 また、第二十五条の三、および四では、インターネットやオンラインで利用できるプログラムや映像、音楽、テキストなどの資料も対象とされています。その目的は「文化財の蓄積及びその利用に資するため(第二十五条)」。日本で生み出された、あらゆるものが対象となっているのです。

■国立国会図書館を支える「納本制度」

 公的機関や、それに準ずる組織が出したものについては、国立国会図書館法第二十四条で、必ず納付しなければならない、とされています。これは公用、そして国際的な資料交換に使用するため、複数部の納付が求められます。いわゆる「観賞用・保存用・布教用」という感じですね。

 民間で出されたものについては、全てを把握するのが不可能なため、第二十三条で「購入、寄贈、交換、遺贈その他の方法によつて、又は行政及び司法の各部門からの移管によつて収集することができる」とされています。しかしこれは補助的なもの。主力となっているのは「納本制度」というものです。

 納本制度は、国立国会図書館法の第十一章(一般資料)、第十一章の二(インターネット資料)、および第十一章の三(オンライン資料)で規定されている資料収集の方法。一般資料の場合は第二十五条により「発行の日から三十日以内に、最良版の完全なもの一部を国立国会図書館に納入しなければならない」とあります。インターネット資料、オンライン資料の場合は、公開日から起算されます。

 ちなみに「納入しなければならない」と条文にある通り、これは法に定められた義務。違反した場合の罰則も、第二十五条の二に「発行者が正当の理由がなくて前条第一項の規定による出版物の納入をしなかつたときは、その出版物の小売価額(小売価額のないときはこれに相当する金額)の五倍に相当する金額以下の過料に処する」と定められています。

 とはいうものの、1948年の国立国会図書館法成立以降、この罰則が適用された例はないそうです。

 納本制度の対象となるのは、商業的なルートで出版されたものばかりでなく、自費出版や同人誌、同人ソフト、同人音楽、コンサートやイベントのパンフレットなども含まれます。ただし、紙1枚だけの資料やカレンダーなどは「刊行物」とみなされないため、除外されます。

■ネット小説なども対象に

 インターネットで公開されている資料については、2009(平成21)年に作成された「国立国会図書館法によるインターネット資料の記録に関する規程」に、対象となるものとして以下の2条件が示されています。

1. 当該インターネット資料を公衆に利用可能とした者の事務に係る申請、届出等を受けることを目的とするもの
2. 長期間にわたり継続して公衆に利用可能とすることを目的としているものであって、かつ、特段の事情なく消去されないと認められるもの

 また、対象となるフォーマットなどについては「特定のコード(ISBN、ISSN、DOI)が付与されたもの」もしくは「特定のフォーマット(PDF、EPUB、DAISY)で作成されたもの」とされています。

 実際の資料収集にあたっては、2017(平成29)年3月に定められた「資料収集方針書」に「無償かつDRMのないものを制度収集の対象とする」とされており、有料会員制サイトで提供されているデータに関しては対象外になっています。

 収集されたオンライン資料のうち、電子書籍・電子雑誌に関しては「国立国会図書館デジタルコレクション(電子書籍・電子雑誌)」において、無償で公開されています。

■2010年からはWEBサイトも収集対象に

 国立国会図書館では、2010(平成22)年度から、インターネットにおける公的機関のWEBサイトを中心に、サイト丸ごとを記録する「国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」がスタートしました。

 いわゆるロボットによる自動収集が中心ですが、情報収集に承諾した民間のWEBサイトも対象となっています。こちらの資料については、発信者からの許諾を受けたものが「国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)」のサイトで閲覧が可能となっています。

■未来に残す人類の遺産として

 収集された資料は、国立国会図書館が最良の状態で、期間の定めなく保存することが定められています。

 今回ゲームソフトを納本した大迫さんも「我々が開発したゲームを、良好な保存方法で半永久的に保存して頂けることをありがたく思いました。 また、紙の本に限らず様々な種類のコンテンツを残し、研究できる環境を残すことは この国の発展のためにも非常に良い制度だと思います」と、意義に共感した様子。

 また、今回大迫さんは、国立国会図書館法の第二十五条第一項の3で規定された代償制度(国立国会図書館が納本者に対し、当該出版物の出版及び納入に通常要すべき費用に相当する金額を、その代償金として交付する制度)を利用せず、寄贈という形にしたそうです。その理由について「単純にありがたかったから」と取材に対して語ってくれました。

 私たちが日本で生み出した様々なものを、世界のため、後世の人々のために収集し、保存する使命を帯びた国立国会図書館。納本は義務となっているので、同人誌なども積極的に納本してみてはいかがでしょうか。残したくない黒歴史だと思う方も多いかもしれませんが……。

<記事化協力>
大迫猛さん(@oh_gorun)

<参考>
国立国会図書館法(e-Gov)
国立国会図書館「納本制度」
国立国会図書館デジタルコレクション
国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)

(咲村珠樹)

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