世界最大の映像配信会社Netflixだからできる2つの戦略

世界最大の映像配信会社Netflixだからできる2つの戦略

@DIME アットダイム

■連載/折原一也のAudio&Visual最前線

 世界最大の映像配信サービスである「Netflix」は10月6日、又吉直樹原作のNetflixオリジナルドラマ、『火花』のHDR化説明会を実施した。

 Netflixは現在、オリジナルドラマの製作に力を入れると共に、4K/HDR化を強力に推し進めている。世界最大の映像配信会社だからできる、映像の未来をのぞいてみよう。

■オリジナルドラマの4K/HDR化はクリエイティブ世界を拡げる

 Netflixが進める2大戦略は“オリジナルドラマ製作”と“4K/HDR化”である。その好例が、『火花』だ。制作会社であるザフールのプロデューサー佐藤正晃氏と、HDR化を手掛けたイマジカのチーフテクニカルディレクター石田記理氏が説明会に登壇し、制作の舞台裏が語られた。


9月16日よりHDR画質での配信がスタートした『火花』のHDR化を解説


ザフールの佐藤正晃プロデューサーとイマジカの石田記理チーフテクニカルディレクターが解説

『火花』は6月3日から従来の方式であるSDR画質、9月16日からHDR配信を行っているが、「まずSDRで完成した『火花』の様々なシーンが含まれているトレーラーのHDR化を行い、廣木総監督、鍋島監督ら制作者に作品の世界観が失われていないかを確認してもらいました。その上で、本編のHDR化が進められました」(佐藤氏)という。ドラマの内容を尊重しながらも、より高い次元の画質に作品を引き上げようとしているのだ。

 HDRの魅力について石田氏は、「HDRはまぶしい映像というイメージが先行してますが、実際は、明るい部分が拡大されても中間部分の表情は変わらないですし、黒の階調もSDRよりも広がります」という。映像レンジの美しさに伸びが加わるわけだ。

 HDRの良さがわかる具体的なシーンとして、1話の序盤で展開される花火大会の楽屋テントでの映像が取り上げられ、「提灯の明かりにも、HDRなら階調を出すことができます。でも、一番見て欲しいのは、役者さんの演技であって、その邪魔をしないようにしています」(石田氏)と、HDR化を進めた際の配慮が語られた。

 また、HDRならではの映像美が良く表現されているシーンとして、第1話で主人公の徳永が朝焼けの海岸線を走るシーンが紹介された。「HDRでは朝焼けの太陽の美しさを表現しながら、同時に、海岸線も映し出せるんです」(石田氏)と、HDR化により可能となった、新しい映像世界の魅力を説明してくれた。

 
HDR化の効果が現れるシーンとして語られた、朝焼けのシーン
(C)2016YDクリエイション

■Dolby Visionのマスターで制作し最高の画質で視聴者に作品を届ける

 Netflixで製作・配信するHDRのマスター映像はドルビー社のDolbyVision方式を採用している。そして、UltraHD Blu-rayの標準フォーマットであるHDR10、そしてSDRによる配信にも対応する。

 HDR作品の視聴にはNetflix対応のテレビなら、プレミアムプラン(全作品見放題で月額1450円、4K対応、4画面同時視聴可)で観ることができ、25Mbps以上の回線速度を持つインターネット回線があれば、HDR画質も安定して視聴できる。

 説明会に登壇したNetflixのグレッグ・ピータース代表取締役社長は、「インターネットというフレキシブルな技術を使うことで、映像技術が進化する速度は従来の何百倍にも早まっています。われわれNetfixは、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、LGといったテレビメーカーと長い付き合いがあると同時に、自らコンテンツ提供も手がけている、とてもユニークな立場にあると思います」と説明、 さらに、ピータース氏は「Netflixは今年だけで作品制作に60億ドルをかけ、来年には140以上の新作タイトルを世界中の視聴者に届けます」と力強く宣言した。そう、NetFlixは本気なのだ。


Netflixのグレッグ・ピータース代表取締役社長

 4K/HDR化は『火花』の他にも、米国発の作品として、既に日本でシーズン1、2の配信がスタートしている『マルコ・ポーロ』などが、さらに、日本発のアニメ作品『シドニアの騎士』のHDR配信が予定されている。

 自社で最高の作品を最高画質の映像フォーマットで製作し、視聴者にダイレクトで届けることができる、Netflix。世界最大の映像配信事業者だからできる、最高画質へのこだわりが詰まった4K/HDRのオリジナルドラマは、『火花』をはじめ、必見だ。

取材・文/折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。オーディオ・ビジュアルをメインフィールドとし、デジタル機器全般の製品記事を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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