AppleのiCloudメールとGoogleのGmail、ビジネスのあり方としてどちらがより健全に見えるか?

AppleのiCloudメールとGoogleのGmail、ビジネスのあり方としてどちらがより健全に見えるか?

画像提供:マイナビニュース

先週末から今週前半にかけ、Googleが同社の提供するメールサービス「Gmail」において、ユーザーの受信メールの「内容をスキャン」するのを年内でやめるというニュースが国内外のWebメディアなどに掲載された。

テック系のメディアの論調は比較的穏やかなものだったが、筆者のような、IT業界を外から覗いてる人間、つまり一般消費者からしてみたら、「内容をスキャン」って、要は「盗み見」してるってことじゃんと映るニュースであったと思う。

Gmailは無償で提供されているが、広告が表示される。その広告がユーザー個人個人に向けて最適化されるよう、受信したメールを覗き見していたのである。こういうこと書くと、テック系のジャーナリストから、覗き見とは人聞きが悪い、New York Timesが報じてるように、Googleは、スキャンの範囲についての混乱の収束と、有料のものを含め、サービスの中味を同質にしたいっていう目的があるんだよといったような批判の声が上がるかもしれない。

しかし、Googleがユーザーの情報を使って、それを自分たちのビジネスに利用しているのは明らかであって、論難の口火をつけたところで擁護しきれるかどうかというと、厳しいように見える。その感覚は一般ユーザーに寄り添っているとは言い難い。多くの人は、他人のメール全部読んでるのかよ? 警察国家向けの機能? と考えるのではないだろうか。

今回のGoogleの判断は、一般常識に照らし合わせて妥当な線だろうという評価はできる。また、声明にある通り、ユーザーのプライバシーとセキュリティを最優先とするということならば納得がいくのであるが。

筆者は広告出るのが鬱陶しくてGmail使うのはとっくにやめている。使っているデバイス(Apple製品)が多いこともあるが、利用しているのはiCloudメールだ。Gmailでも個人に向けて最適化された広告を表示させない機能はあるらしい。だが、広告表示を完全に停止することはできないし、しかも、その設定に、すぐには辿り着けないようになっている。やっとのことで設定方法を発見すると、「パーソナライズド広告を表示しないようにする(オプトアウトする)」ときた。「パーソナライズド広告」はまだいいが、「オプトアウト」って何? Googleに限ったことではないが、IT業界はなぜか訳語がなかったり、原義とは異なる意味で使われる単語や熟語が多かったりする。Webメディアの業界に足を踏み入れたばかりの頃「コンバージョン」の意味が全く分らなかったのを思い出した。筆者の暮らす世界で「コンバージョン」と言ったら、建築物の転用を指すのだけれど。

話が逸れたが、メールサービスの広告表示について言うと、Gmailを使ってる以上、広告が表示されるのは避けられないということが、オプトアウトがどうのというページを見て分った。とりあえず、メール覗くのはやめるとしても、YouTubeなど他のGoogleが提供するサービスが採っている方法(検索や動画閲覧の履歴などから表示させる広告を選別)に代わるというだけの話なのだ。

一方、iCloudメールはGmailと同じく無料であっても、最初から広告表示がされない。大体、Appleは、iPhoneやiCloudのユーザーの個人情報を商売に使うなんてことはしない。Appleのプライバシーに関する取り組みは明快だ。提供するソフトウェアとサービスは、デバイスをより良いものにするためだけに作られている、そのユーザー体験は、プライバシーを犠牲にして生み出されるのものではない、これだけである。だから、その発想と矛盾する広告用のネットワーク「iAd」も提供をやめた。

また、セキュリティについてもiCloud自体の強固さもさることながら、多くのデバイスにTouch IDという指紋認証が搭載されているし、OS自体の安全性も高いのである。iPhoneを例に出すと、端末に格納されている重要なデータははじめから暗号化され、設定したパスコードで守られる。「マップ」や「Safari」などのApple製のアプリは、行った場所や訪れたサイトの情報をすべて保護できるようになっている。Googleも先のステートメントで「他の電子メールサービスでは、Gmailのように、スパム、ハッキングおよびフィッシングからユーザーを守れない」と鼻息を荒くしているが、では、Android OSはどうかとなると、疑問符が夥しい数になってしまう。

Googleは、多くのウェブサイトにとって、広告は不可欠な収益源であると考えている。しかしながら、そろそろ、そのアイディアから脱却する必要があるのではないか。Webメディアも広告見せるから無料にするというのではなく、キチっとユーザーからお金をとる購買モデルへの転換を図るのが順当だ、そのほうがタイトルだけで釣られてゴミを食わされるという機会も圧倒的に減る。お前が言うなという話なのは承知の上で言うと、ビジネスのあり方として、どんなモデルが、より健全であるかといった議論はもっと活発になってしかるべきだと思うのであるが。
(稲葉雅己)

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