さよならiPod nano、iPod shuffle【前編】- iPodが音楽プレーヤーに与えた影響とは

さよならiPod nano、iPod shuffle【前編】- iPodが音楽プレーヤーに与えた影響とは

画像提供:マイナビニュース

●ウォークマンを圧倒したiPod
先日「iPod nano」と「iPod shuffle」の販売が終了した。今後Appleの純粋な音楽プレーヤーは「iPod touch」に一本化される。2000年代に音楽プレーヤーの一時代を築いてきたiPodは、スマートフォン全盛の時代に、これからどこへ向かうのか。また、音楽プレーヤーが果たすべき役割についても改めて考えてみた。

iPodが販売開始されたのは2001年のことだった。当時の日本国内の音楽プレーヤー事情を振り返ると、ソニーの「ウォークマン」はカセットテープからCDやミニディスク(MD)を中心とした光記録メディアを使うものへ完全に切り替わっていたし、シャープやケンウッド、パナソニック、アイワなどもその流れに続いていた。

筆者も通勤時間にはCD/MDウォークマンを併用して音楽を聴いていたものだが、CDプレーヤーは一緒にCDを持ち歩かなければないのが面倒でならなかった。かたやMDは市販のコンテンツが少なかったので徐々に使用頻度が下がっていた。

そんな折に登場したiPodは、パソコンとiTunesを使ってたくさんのCDを音楽ファイルとして取り込んで持ち歩ける、衝撃的に便利なポータブル音楽プレーヤーだった。発売当初はMacのみ対応していたが、2002年にWindows互換のあるiPodが発売されてから、筆者のまわりは瞬く間にiPodユーザーであふれかえったことを覚えている。

やがて間もなく、iPodの後を追うように国内外のオーディオメーカーがMP3やWMAといったフォーマットの音楽ファイルを再生できるHDD内蔵のプレーヤーを発売。ポータブル音楽プレーヤーの主流は、CD/MDからパソコンで取り込んだファイルを再生するものへと急速に切り替わっていった。

日本が世界に誇る音楽プレーヤーと言えば、誰もがソニーのウォークマンシリーズを思い浮かべるはずだ。iPodが発売された頃、ソニーは一足先にメモリースティック型のウォークマン「NW-MS7」を発売して、CDから取り込んだ音楽ファイルを聴くというスタイルを提案していた。

ところが、より音が良いとしていた独自規格「ATRAC3」に変換したファイルしか再生できなかったため、MP3やAAC、Apple Losslessといった幅広いファイル形式をサポートするiPodに大きく水をあけられてしまった。2004年に発売されたウォークマン「NW-HD3」がようやくMP3再生に対応した時点では時すでに遅し、iPodとの間には完全な差が付いてしまっていた。特に欧米では、ウォークマンはしばらく苦難の時を迎えることになる。

●iPodが音楽プレーヤーにもたらしたもの
独自のクリックホイールと大型の液晶ディスプレイによる快適な操作感も人気の要因だったが、iPodがこれほどまでに注目を浴びたのは、ポータブルCDプレーヤーに比べて圧倒的にコンパクトだったからだろう。ポータブルCDプレーヤーはどうしてもCD (直径12cm)以上の大きさになってしまうが、小型のHDDを記憶媒体とするiPodは大容量なのに圧倒的に本体が小さく、CDプレーヤーのように「音飛び」が発生する心配もなかった。

やがて、デジタル機器の記憶媒体としてフラッシュメモリが普及し始めたころにAppleから登場したのがiPod shuffle、iPod nanoだった。フラッシュメモリーはHDDよりもさらにサイズが小さいため、音楽プレーヤーに「デザインの自由」を与えるきっかけを作った。当時発売されていた他社の音楽プレーヤーも、奇抜なデザインを採用するものから、iPod nanoよりもコンパクトなサイズをウリにするものまで多種多様となった。

このように、iPodは音楽プレーヤーを光ディスクメディアの記憶容量や可搬性の縛りから解放した製品だったと言えるかもしれない。当時を振り返れば、iPodの登場によって「音楽は便利に楽しむもの」という価値観が若い音楽ファンを中心に根付いていったように思う。その流れを汲んだ音楽プレーヤーの新しい姿が「スマートフォン」である。

スマートフォンの登場以前、フィーチャーフォンでも音楽を聴くことはできたが、iPodなど音楽プレーヤーの方が圧倒的に楽曲再生のハンドリングが手軽、バッテリーも長持ちだったので、広く浸透することはなかった。ところが2008年にAppleが発売した「iPhone 3G」を皮切りに、「ケータイで音楽を聴く」というスタイルが普及していくことになる。

以降は、2007年に発売された「iPod touch」との両輪により、iTunesを使ったCDリッピングや手軽なファイルの送受信、iOSとマルチタッチ液晶、アプリによる音楽再生が認知を広げていった。そして、マルチタッチ液晶とアプリのトレンドは、Androidスマートフォンにも広がっていくことになる。

スマートフォンで音楽を楽しむことがすっかり定着した今では、音楽のダウンロード再生やストリーミングサービスの利用が一般的になった。CDから音源を取り込む機会も次第に減りつつある。

このような環境において、iOSやマルチタッチ液晶、インターネット接続といずれの機能も実装されなかったiPod nanoとiPod shuffleが、徐々に時代のメインストリームから取り残されてしまったのは、残念だがどうしようもないことだったとも思う。

後編ではiPod nano、iPod shuffleが音楽プレーヤーの発展に果たしてきた役割について掘り下げながら、そのDNAが未来の音楽プレーヤーにどんなかたちで受け継がれることになるのか予想してみたい。
(山本敦)

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