NASA、次期大型探査の最終候補を選定-彗星からの試料回収と衛星探査

NASA、次期大型探査の最終候補を選定-彗星からの試料回収と衛星探査

画像提供:マイナビニュース

米国航空宇宙局(NASA)は2017年12月21日、大型宇宙探査計画「ニュー・フロンティアーズ計画」の新しいミッションとして、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から試料を持ち帰る(サンプル・リターン)探査機「シーザー」と、土星の衛星タイタンを探査するドローンのような探査機「ドラゴンフライ」の2つを、最終候補として選定したと発表した。

NASAでは2019年の春にも、どちらかひとつのミッションを選定。2020年代の中ごろの打ち上げを目指し、開発が始まる。

○ニュー・フロンティアーズ計画とは

ニュー・フロンティアーズ計画(New Frontiers program)は、NASAがシリーズ化して継続的に実施している、大型の宇宙探査計画である。NASAではこのほかにも、同じく大型の「フラッグシップ」、比較的小規模、低コストな「ディスカヴァリー」、「エクスプローラー」といった計画があり、手を替え品を替え、さまざまなやり方で宇宙探査に挑んでいる。

計画は2002年から始まり、まず第1弾として冥王星を探査する「ニュー・ホライゾンズ」(New Horizons)が選ばれ、2006年に打ち上げられた。ニュー・ホライゾンズは2015年7月、目的地である冥王星の近くを通過して探査に成功。現在は延長ミッションとして、2019年1月1日にエッジワース・カイパーベルト天体のひとつ「2014 MU69」を探査するため、飛行を続けている。

続く第2弾の計画として選ばれたのは木星探査機「ジュノー」(Juno)で、2011年に打ち上げられ、2016年7月に木星に到着。現在も観測を続けている。

第3弾は小惑星「ベンヌ」からの試料回収(サンプル・リターン)を目指した「オサイリス・レックス」(OSIRIS-REx)で、2016年9月に打ち上げられ、現在も順調に飛行を続けている。今後、2020年にベンヌに到着し、探査とサンプルの回収を実施。2023年に地球に帰還する予定となっている。

今回選ばれたのは、この3つの探査計画に続く、4番目のニュー・フロンティアーズ計画の最終候補で、今年4月に選ばれた12の候補の中から、2つにまで絞られた。NASAはこの2つの探査計画にそれぞれ資金提供し、さらに検討を進めたのち、2019年の春ごろに審査を経て、どちらかひとつを採択。選ばれた計画は、2020年代の中ごろの打ち上げを目指し、開発が始まることになっている。

○彗星核からのサンプル・リターンを目指す「シーザー」

候補のうちのひとつ「シーザー」(CAESAR)は、「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」から試料を持ち帰ること(サンプル・リターン)を目指す探査機。CARSARはComet Astrobiology Exploration Sample Return(宇宙生物学の探査を目指した彗星からのサンプル・リターン)の頭文字から取られており、古代ローマの偉人カエサルなどと掛けられている。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星というと、欧州の探査機「ロゼッタ」と「フィラエ」が2014年に探査した彗星としておなじみだが、この彗星がふたたび地球に近づく機会にこのシーザーを送り込み、今度はその彗星核の一部を採取し、地球に持ち帰ることを目的としている。

ロゼッタのように探査機に分析装置を積む場合、質量などの都合上、大きさや性能が限られてしまう。しかしサンプル・リターンができれば、地球にある最先端の装置を使ってサンプルを分析することが可能となり、より多くのことが理解できると期待されている。

計画は米コーネル大学とNASAゴダード宇宙飛行センターが主導する。

○土星の衛星「タイタン」の探査を目指す「ドラゴンフライ」

一方のドラゴンフライ(Dragonfly)は、土星の衛星「タイタン」の探査を目指す。

タイタンには窒素とメタンを主成分とする分厚い大気があり、さらにメタンの海や氷の大地があるともいわれており、地下やメタンの海の中に生命がいる可能性も考えられている。

また2005年には、土星探査機「カッシーニ」に搭載されていた欧州宇宙機関(ESA)の着陸機「ホイヘンス」が着陸に成功。初めて地表の様子が明らかになった。

ドラゴンフライは、トンボを意味するその名のとおり、ドローン(マルチコプター)型をしており、タイタンの空を飛んで数十か所の地点を探査し、化学組成や、生命の居住可能性を探るという野心的なミッションである。

計画はジョンズ・ホプキンズ大学の応用物理学研究所が主導する。

奇しくも、シーザーもドラゴンフライも、以前にESAの探査機が初めて探査した天体を訪れる計画となっている。

○エンケラドスと金星探査にも検討資金

NASAはまた、今回は選定しなかったものの、将来のニュー・フロンティアーズ計画、あるいは他の計画での実現を目指し、他の2つの候補にもさらなる検討のための資金提供を行うと発表している。

選ばれたのは、「エルサー」(ELSAH:Enceladus Life Signatures and Habitability)と、「ヴィシー」(VICI:Venus In situ Composition Investigations)。

エルサーは土星の衛星「エンケラドス」の探査を目指した探査機。エンケラドスの地下には液体の海があるとされ、生命がいる可能性も指摘されている。これまでエンケラドスの探査で活躍したカッシーニが今年運用を終えたこともあり、新たな、そしてより詳細な探査に関心が集まっている。

ヴィシーは金星に着陸する探査機で、地表の様子や居住可能性を探る。

このほか、今年4月の時点では、月の南極からのサンプル・リターン計画や、土星探査機、木星トロヤ群の探査機など、8つのミッションが提案されていたが、落選している。

参考

・NASA Invests in Concept Development for Missions to Comet, Saturn Moon | NASA
・NASA picks Cornell-led astrobiology science mission as finalist | Cornell Chronicle
・Dragonfly
・ENCELADUS LIFE FINDER: THE SEARCH FOR LIFE IN A HABITABLE MOON
・VICI: Venus In situ Composition Investigations

著者プロフィール
鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行なっている。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。
Webサイトhttp://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info
(鳥嶋真也)

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