アナログブームで注目度急上昇!国内唯一のレコードプレス工場に潜入

アナログブームで注目度急上昇!国内唯一のレコードプレス工場に潜入

@DIME アットダイム

■連載/ゴン川野のPC Audio Lab

■Introduction

アナログレコードが世界的にブームになっている。欧米では8年前から、日本でも5年前から需要は右肩上がり、2年前から急増しているという。その動きに応じて、アナログプレーヤーの新製品を発売するテクニクス、レコード針のナガオカ、レコード製造の東洋化成がコラボした「レコード再発見プロジェクト」第2弾が開催された。その内容は国内唯一のレコードプレス工場見学である。ラッカー盤のカッティングとレコードのプレス現場を間近で見られるのだ。開催に先立ってゲストにアーティストの土岐麻子さんを迎えたトークイベントも実施され特別にカッティングされたレコードが再生されると会場は大いに盛り上がった。

左からナガオカ 寺本博氏、土岐麻子さん、パナソニック 志波正之氏、東洋化成 石丸仁氏。主催3社の代表がアナログレコードに対する熱い思いを語った。

今回のイベントのためにカッティングされた7inch「BeautifulDay」をテクニクスのリファレンスオーディオシステムで参加者と共に試聴する土岐麻子さん。

会場にはの9月9日発売予定のアナログプレーヤーTechnics『SL-1200G』、ネットワークオーディオコントロールプレーヤー『SU-R1』、ステレオパワーアンプ『SE-R1』が展示された。

ズラリと並んだナガオカのカートリッジ。今回、使われたのは左端のハイエンドモデル『MP-500H』である。削り出しアルミフレーム、ボロンカンチレバー、ラインコンタクト・ダイヤチップを採用。

■Cutting

レコードの製造工程は、意外と複雑である。電気信号を針の振動に変換して溝を刻む。ここまではシンプルなのだが、カッティングしたラッカーマスターから1枚のマスター盤が作られ、そこからマザーを起こして、さらにスタンパーを作って、これを使ってプレス作業がおこなわれる。やっていることは凹んでいる溝から、凸状の盤を作り、さらに凹んだ盤を作る工程でねずみ算式にスタンパーを増やして量産態勢を整えるのだ。それで最初にカッティングされたラッカー盤はどうなるのかと言えば、1回使ったらあっさり廃棄。保存されるのはメッキされたマザー盤なのだ。そんな儚い命のラッカー盤をどうやって作られるのか。

まず、音源が持ち込まれる。対応しているのは、ハーフインチと1/4インチのアナログテープ、そして3/4インチUマチックとは懐かしい! 現在はほとんどがデジタル音源でCD-RかDATで持ち込まれるという。デジタル音源はD/A変換されてから、RIAAカーブ補正をかけられてカッティングマシンに送り込まれる。マシンは1970年代に作られたもので、「VMS 70 GEORG NEUMANN GMBH」の銘板が貼られていた。つまりドイツの名門ノイマン社の製品である。もちろん生産中止モデルなのでメンテンナンスは東洋化成と古くから協力してくれる会社の手によっておこなわれているという。

東洋化成がプレスしているレコードには7inch(17cm)と12inch(30cm)があり、回転数は33 1/3RPMと45RPMの2種類がある。この組み合わせで収録できる時間が決まる。レコードは線速度一定なので、内周よりも外周の方が音質が良くなる特性があり、最もダイナミックレンジが広くとれるのが12inch45RPMの外周部ということになる。カッティングマシンには溝の間隔を示すメーターがあり、1mmに何本の溝を入れるかを設定できる。例えば10本に設定しても実際カッティングすると音量が大きくなるので溝の幅が広がって本数は減ってくる。実際のカッティングより約1秒早くピッチ信号が来るので、このバリアブルピッチコントロール機能を使って、隣の溝に干渉しない幅に溝を収めていくことが可能になり、ダイナミックレンジの確保と長時間録音の両立が実現したのだ。1時間のレコードをカッティングするには約4時間もかかるという。カッティングされた音溝は顕微鏡によって全てチェックされる。低音成分が多いと溝の幅が広くなり、収録時間は短くなる。このような兼ね合いや収録する曲順をレコード発注者と打ち合わせしながら、カッティング作業は進められていく。

説明してくれたのはレコーディング・エンジニアの手塚和巳さん。最近の音源はデジタルがほとんどで、こちらのシステムで再生する

ミキシングコンソールでは、以前さまざまな作業をおこなったが、現在は持ち込まれる時点で音源は加工済みの事が多く、レベル合わせと簡単なEQをおこなう程度だという

ノイマンのカッティングマシン。右側にあるのがRIAAカーブ補正するためのアンプ

カッティング針には電極が付いており、ニクロム線に電流を流すことで針先を温めて切れ味を向上させている

ラッカー盤を固定するためにバキュームシステムを採用。センタースピンドルから吸引することで盤全体を吸着している

バリアブルコントロールのためのメーター。カッティング中は微妙に動く。実演はジャズだったが、無音部分が長いクラシックでは針の動きがもっと大きくなるという

カッティング後の溝を顕微鏡でチェックする。溝の深さと幅などを見る

検聴用のトーンアームがあるので、カッティングしたての音が聴ける。レコード盤の偏心ゼロなので、最高の状態で音楽が再現されるのだ

■Press

完成したスタンパーを使ってレコードを作るのがプレスマシンである。塩化ビニールの塊をレーベルで挟んで100トンの力でプレスすることでレコード盤が完成する。この時の温度は150度〜180度ぐらいになる。外周の余りを切り落として完成。可動しているマシンは7inch用2台と12inch用3台の計5台で、30年ほど前にスウェーデンのツーレックスアルファと呼ばれるメーカーのマシンである。この会社はもう存在しないため社内でメンテナンスをおこなっているという。LPは30秒に1枚、EPは20秒に1枚プレスされる。

LPであれば1時間に120枚ぐらいプレスできる。1日にプレスできる枚数は2500枚が限界で、完成したレコードは手作業で袋に入れられ梱包される。

レコードの材料ペレットを溶かした塩化ビニールの塊からレコードが作られる。カラーレコードの場合は着色した材料を溶かして作る。

レーベルは接着材を使わずにプレスの圧着のみでレコード盤に貼り付いているのだ。説明してくれたのは粟野さん

プレスマシンはスタンパーと呼ばれる表面が凸状になっている盤を塩化ビニールに圧着してレコード盤の溝を作り出している

30年前から、現役で働いているTOOLEXαのプレスマシン。現在も元気な音とリズミカルな動きでレコードをプレスし続けている

文/ゴン川野

オーディオ生活40年、SONY『スカイセンサー5500』で音に目覚め、長岡式スピーカーの自作に励む。高校時代に150Lのバスレフスピーカーを自作。その後、「FMレコパル」と「サウンドレコパル」で執筆後、本誌ライターに。バブル期の収入は全てオーディオに注ぎ込んだ。PC Audio Labもよろしく!

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