ソニーのハイエンドウォークマン『NW-WM1Z』の“突き抜けた”完成度

ソニーのハイエンドウォークマン『NW-WM1Z』の“突き抜けた”完成度

@DIME アットダイム

■連載/一条真人の検証日記

 ソニーのポータブルオーディオ「ウォークマン」は誰もが知っている世界的なブランドだ。ここ数年、ハイレゾオーディオブームが続いているが、高音質なハイレゾオーディオはモバイル通信機能のノイズをも嫌うので、音にこだわりたいという人は、スマホより専用機としてのポータブルオーディオプレーヤーへの関心が高い。製品ラインアップを見ると、20〜30万円程度の商品はざらにあり、中には50万円ぐらいのモデルも登場している。

 一方で、ソニーは高級モデルでも10万円程度。ハイレゾ対応の高級ポータブルオーディオのバトルの中に加わっていないように見えた。だが、先日、ついにその壁を打ち破る商品が登場した。それが新製品の『NW-WM1Z』(以下『WM1Z』)だ。メインで使われている素材は、現在のハイエンドモデルのトレンドともいえるカッパー(銅)が採用されている。ちなみに、同社の開発陣が様々な素材でボディーを試作して最もいい音が出たのが銅だったそうだ。『WM1Z』の素材に使われている銅は、純度99.96%以上の無酸素銅に金メッキを施してあり、エレガントさを演出している。価格は30万円前後の予定で、発売は10月29日の予定だ。この新型ウォークマンを最新の高性能ヘッドホン『MDR-Z1R』と組み合わせて試聴してみた。


ハイエンドウォークマン『WM1Z』のポテンシャルは?

■外観

 ボディーはマット仕上げのゴールドで、従来のウォークマンとはかなり異なる雰囲気を醸し出している。表面はかなり滑りやすく、サイド部分は上部のほうが広くなっているので、手に持った時のホールド感に不安を感じる。だが、これについては、背面のラバーによってカバーされており、安定感が得られる。背面にラバーを使うのは、最近の同社のハイレゾ対応モデルである『ZX2』や『ZX100』と共通のデザインで、個人的には高級感があって好きだ。ディスプレイはタッチ操作が可能で、表示の発色もいい。そして、大きな前進が見られたのが、JEITA統一規格のバランス接続に対応したこと。ヘッドホンプラグ1本で接続できるので、安定しておりスペースも取らない。


同時発売となるアルミ削り出しシャーシの『NW-WM1A』(右)と並べたところ。色以外の外観はそっくりだがその音作りから異なる。


ヘッドホンを接続したところ。佇まいがいい味を出している。


トップには2つのコネクタを持つ。左側がバランス接続用コネクター。


このラバーで滑りにくくなっている。


例のウォークマンコネクタも継承されている。

■操作感

 タッチ操作に対応しているが、本体の側面には物理ボタンも搭載している。左側にホールド、右側に操作ボタンを配しており、メタル素材でストロークが浅く、操作感がいいわけではないが、この面ではタッチ操作できるから、まったく問題はない。というか、この物理ボタンはデザイン的にもいいアクセントになっており、滑り止めとしても機能している。画面のユーザーインターフェースも自然で使いやすく、音量の調節もしやすい。


タッチ操作でボリュームもコントロールできる。


物理ボタンが高級感を増しているひとつの要因となっている。

■音質

 この音質の1つのキーになっているのが、強化されたフルデジタルアンプ「S-Mster HX」だ。これにより、DSDネイティブ再生とリニアPCM再生の両方の性能が向上しているという。ちなみに、DSDネイティブ再生は最大11.2MHzまで、リニアPCM再生は最大384KHz/32bitに対応。当然、アンバランス接続時の最大出力も向上している。また、標準音源をハイレゾに変換してくれる「DSEE HX」機能は、5つのモードを持ち、曲調に合った変換をしてくれる。

 そんなカタログスペック的な話はさておき、実際に曲を聴いてみると、その再生ポテンシャルが非常に高いのが、すぐに実感できた。アナログ楽器の音を聞いていると、本当に近くでその楽器が演奏されているかのように高い空間表現を実現しており、ナチュラルな音の表現力がすばらしい。女性ボーカルも眼の前で歌っていて、繊細な感情さえ伝わってくるような気がする。

 ちなみに今回はヘッドホンに同じくソニーの『MDR-Z1R』を組み合わせて聴いている。このヘッドホンは10月発売予定のハイエンドモデルだが、装着感もかなりコンフォータブルで、音質も極めて再現性が高い。


高い再現性を持つヘッドホン『MDR-Z1R』。


フィボナッチ係数が取り入れられたグリルデザイン。

 実にその出力周波数は120KHzに達し、ハイレゾオーディオコンテンツを余裕たっぷりで描写する。面白いのはドライバーユニットのグリルにフィボナッチ数列を使った曲線パターンを使っていること。これによって、空気の流れを均等化し、再生の忠実性を引き上げている。個人的にはこのヘッドホンと『WM1Z』の相性はかなりいいという印象だった。『WM1Z』のポテンシャルを最大限、引き出してくれる感じがした。

 また、ブラックボディーのハイエンドウォークマンの下位モデル『WM1A』も借りたのだが、『WM1Z』とは音がかなり違う印象だ。『WM1A』も高いポテンシャルを持っているのだが『WM1Z』のアナログ音源の再生感のよさは格別。ボディ−の重量感もかなり違う。『WM1Z』のカッパー素材はやはり重い。

『WM1Z』と『WM1A』ではボディーの素材が異なるだけでなく、細部までクオリティーがアップしているということだが、それだけでなく『WM1A』と『WM1Z』では音のチューニングも異なっているのではないだろうか。『WM1Z』は『WM1A』よりもアナログ音源再生向けにチューニングされているのかもしれない。普通に音楽を楽しむのであれば、『WM1A』も十分なポテンシャルを持っているのは間違いない。

■『WM1Z』は殻を破ったか?

 30万円前後というウォークマンとしては最近にない価格をつけた『WM1Z』だが、今回、試聴した限りでは、たしかにそれだけの価値のある音を生み出すプレーヤーになったのは間違いない。しかし、一般ユーザーが普通に音楽を楽しみたいのであれば『WM1A』も十分美しい音を聞かせてくれる。『WM1Z』は音楽を最高の音で楽しみたい人におすすめのハイレゾ対応ポータブルオーディオプレーヤーだ。

■関連情報

http://www.sony.jp/walkman/products/NW-WM1Z/index.html
http://www.sony.jp/headphone/products/MDR-Z1R/

文/一条真人

ITジャーナリスト。雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスONE」編集長などを経て現在にいたる。著書50冊以上で、近著は「はじめてのChromeBook」(インプレスR&D)。IchijoMasahto。本名:OSAMU SAKATA。

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