ハイレゾワイヤレスか?超ハイエンドか?ヘッドホントレンド最新事情

ハイレゾワイヤレスか?超ハイエンドか?ヘッドホントレンド最新事情

@DIME アットダイム

■連載/折原一也のAudio&Visual最前線

 ソニーはドイツ・ベルリンで開催されたIFA2016の会場でワイヤレスとノイズキャンセル対応したハイレゾヘッドホンの最上位モデル、『MDR-1000X』を発表、欧州での発売価格は429ユーロを予定している。また、”Signature Series”として、欧州での実売価格2249ユーロになるフラッグシップヘッドホン『MDR-Z1R』も発表された。

 新『iPhone 7』ではヘッドホン端子が廃止されるなど、ワイヤレスヘッドホンが今後の大きなトレンドとなるのは間違いない。一方、音を極めた超ハイエンドのヘッドホンの世界も熱い。ソニーの最新作から、ヘッドホンの最先端トレンドを追いかけてみよう。

■ワイヤレス高級ヘッドホンブーム到来!? ソニーの『MDR-1000X』

『MDR-1000X』は見どころの多い機種だが、まず特徴的なのが、強力なノイズキャンセル機能だ。今回、業界最高スペックを更に塗り替えたほか、個人の耳の形状に合わせてノイズキャンセル機能を最適化する新機能「Personal NC Optimizer」を搭載。今まで、個人の顔の形の違いによりイヤパッドのすき間からもれ聴こえていた外音でさえも、ノイズキャンセルの対象となったのだ。


IFA 2016に出展された『MDR-1000X』


頭部への密着性を高めたイヤパッドが音漏れまで最適化する

 また、ユニークな機能として右側のイヤパッドに手をかざすと「Quick Attention」モードになり、電車の車内アナウンスなどを聞き取れる状態にできる。この「Quick Attention」ならヘッドホンを身につけたまま普通に人と会話もできるほどで、ボタン操作ナシでシンプルに、ノイズキャンセルの効果を抑えられて重宝しそうだ。

 ほかにも状況に応じて、適度に外部環境音を取り込み、自動車の接近など安全にも配慮された「Ambient Sound Mode」も対応と、ワイヤレスを常用するための条件が整いつつある。

■ハイレゾヘッドホンとしての高音質を極める

『MDR-1000X』は、ワイヤレスでハイレゾを再生できるヘッドホンとしても最上級の性能を持つ。ドライバユニットは40mm径で、再生周波数帯域は4Hz〜40kHzのハイレゾ帯域をカバー。振動板は液晶ポリマーにアルミニウム薄膜をコーティングしたものを採用する。


ウォークマンの技術を投入しヘッドホンのハイエンドとしての位置づけ

 ワイヤレスヘッドホンとなるとヘッドホン部分にアンプが組み込まれる事になるが、『MDR-Z1000X』は同社のウォークマンシリーズで投入されているアンプ向けの高音質技術を投入した。

 さらに、Filled VIAと呼ばれる基盤や、高級オーディオにも採用される高音質はんだなど、手軽なワイヤレスヘッドホンとは一線を画すハイエンドな作りこみが魅力だ。


イヤパッドには外面に縫い目のない合成皮革を採用

 ワイヤレス接続にはソニーのウォークマンやXperiaに採用されるLDACを用いることで、ハイレゾ音源の伝送にも対応する。SBC/AAC/aptXといった業界スタンダードなコーデックもカバーし、汎用性も高い。

■IFAでお目見えしたソニーヘッドホンの”Signature Series”の頂点、『MDR-Z1R』

 海外メーカー製を中心にハイエンドヘッドホンがひしめく超高級ヘッドホン市場に、ソニーが新たに”Signature Series”を投入、欧州での実売価格2249ユーロ(約25万円)となるフラッグシップヘッドホン『MDR-Z1R』が登場した。

 ソニー製ヘッドホンの現行機種では『MDR-Z7』が実売7万円程度となるなか、一気に超ハイエンドに飛び込むトップモデルの投入となったわけだ。


IFAのソニープレスカンファレンスで発表された『MDR-Z1R』

『MDR-Z1R』が目指したのは”聴く”の領域を超えた、”感じる”領域のサウンドで、ライブの空気感さえも表現するものだ。そのため、ハイレゾのスペックの基準である40kHzを大幅に超える120kHzまでの超高周波数帯域をカバーする、70ミリの大口径ドライバーユニットを搭載している。

 大口径ドライバーユニットを構成する各パーツも、ソニーが高音質を追求するため、こだわりが詰まっている。

 ドーム部には軽量・高剛性で理想的なユニット素材の薄膜マグネシウムを採用している。30μという薄さのユニットは加工が難しく、一般的には入手できない水準の技術となるが、『MDR-Z1R』のために製造装置から作り上げたという、渾身の代物だ。エッジ部にはアルミニウムコートLCPを採用し、ドームとエッジで異なる高内部損失材料となる。その組み合わせにより、クリアな音を再現する。


「MDR-Z1R」の内部構造

 グリル部にはフィボナッチ数列を参考にした「フィボナッチパターングリル」を搭載し、開口部を均等化すると共に、特定の周波数帯域の音の流れが阻害する要素を排除。ネオジウムマグネットには最大エネルギー積400J/m3という 最上級グレードのものを採用し、磁束ロスを最小限に抑えている。…難しくなってしまったが、そう、すべての要素がハイレゾの信号をピュアに再生する目的で構成されているのだ。

■ユニット内の共鳴を排除する「音響レジスター」を採用

『MDR-Z1R』では「レゾナンスフリーハウジング」と呼ばれる、音の共鳴を抑える構造も特徴としている。巻き貝を耳に当てると響きが聴こえるように、一般的なカップ形状の物体には独特の共鳴を持つのだが、『MDR-Z1R』ではカナダ製の針葉樹のパルプで立体成形したカップにより、共鳴を除去。これもハイレゾ信号に含まれる微小音をクリアに鳴らすための配慮だ。


ポータブルオーディオの”Signature Series”として登場

 ヘッドホン性能が超一級なだけに、モノとしての作り込みもそれに相応する水準で仕上げられた。イヤパッドの構造は、厚みのある低反発ウレタンフォームを人の顔の形に合わせて立体的に作り、日本でなめし加工を施した上質の羊革で覆う。天然素材だからこその適度な保湿性も確保している。

 ベースベンドはチタン製、ヘッドホンカバーも本革という力の入れようだ。

『MDR-Z1R』には、黒色のアタッシュケースのような専用設計のハードケースも付属。長く保存して持ち運べるような形というだけでなく、『MDR-Z1R』をケーブルをつけたままに収納できるなど、ケースとしての機能性にも十分な配慮がなされている。

 超高級ヘッドホンと呼ぶ以外にはない『MDR-Z1R』、商品の製造は、ソニー製のレコーディングスタジオ向けマイクの『C-38C』や『C-80G』、ハイレゾモニターイヤホンの『MDR-CD900ST』など、プロフェッショナル向けの製品を扱う日本国内の工場で行われ、厳格な検査をパスした製品のみがシリアルナンバーを刻印されて出荷されるという。

取材・文/折原 一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。オーディオ・ビジュアルをメインフィールドとし、デジタル機器全般の製品記事を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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