なぜ、最近の電気シェーバーは"肌にやさしく"なったのか?

なぜ、最近の電気シェーバーは"肌にやさしく"なったのか?

@DIME アットダイム

洗顔とともに男性の欠かせない生活習慣のひとつであり、身だしなみを整えるという観点からも重要な意味を持つシェービング。そんなシェービングには、改めて説明するまでもなく、大きく分けて安全カミソリと電気シェーバーという2つの方法があり、それぞれに特徴を持っている。

まず安全カミソリは、刃が直接肌に触れ、ヒゲをカット。安全カミソリユーザーの多くが、「カミソリの方が剃った後にサッパリ感がある」と話すのも、これが理由だと推察できる。ただし、刃が直接触れるだけに肌が傷つきやすく、肌表面の角質層も剥がれやすい。

これに対し、電気シェーバーは、まず編目状の外刃が肌を押してヒゲを絞り出し、これを内刃がカットする仕組み。内刃が肌に直接触れることがないため、肌にやさしいシェービングが可能だといわれている。

しかし、実際はそれほど単純な問題ではない。外刃がうまくヒゲを捉えることができるのか。そして内刃は確実にヒゲをカットできるのか。実は男性のヒゲは同じ直径の銅線と同レベルの硬度を持つといわれ、これを確実にカットする刃の開発は、たやすいことではない。さらに刃を駆動させるモーターの性能や、刃を肌に密着させるヘッドの構造など、課題は多岐にわたる。

今年9月に発売されたパナソニックの新型メンズシェーバー 「ラムダッシュ」ES-LV9Bは、30°鋭角ナノエッジ内刃や毎分約1万4000ストロークのリニアモーター駆動、ヘッド部が前後・左右・上下に可動する「3Dアクティブサスペンション」といった独自技術で前出の問題をクリア。肌にやさしい深剃り≠ニいうユーザーニーズに応えるプレミアムシェーバーとして、早くも高い評価を獲得している。

パナソニック
メンズシェーバー「ラムダッシュ」ES-LV9B

オープン価格
本体寸法/高さ170×幅75×奥行き60mm、約220g

しかしそんな同社とはいえ、今日のラムダッシュに至るまでには、半世紀以上の日々が必要だった。その原点は1955年12月。この年、パナソニック(当時は松下電工)から、国産初の電気シェーバー『MS10』が発売されたのだ。当時はシェービングといえば、安全カミソリが定番であった時代。そんな時代に「電気でヒゲが剃れる」ということで『MS10』は話題になり、1年9か月で約15万台を販売するヒット商品となった。

今回はそんなパナソニックシェーバーの歴史を振り返りながら、今日につながる技術革新の道をたどっていきたい。

MS10(1955)

その後、パナソニックでは1961年に27mm回転ネット刃、1974年に世界で初めてステンレス刃物鋼による回転刃を採用した『スピンネットES620』を開発するなど、海外製品に対抗できる「刃」の開発を進めていく。

駆動部に関しては1977年、モーターのパワーを直接、刃に伝えるDD(ダイレクトドライブ)と呼ばれる機構を導入した『スーパーレザー ES820』を開発。1981年には浴室で石鹸を付けても剃れる、防水機構を搭載した『スーパーレザーD.W.ES861』が発売された。

スーパーレザーD.W. ES861(1981)

『スーパーレザーD.W.ES861』は、その滑らかな肌あたり、さらに深剃りがユーザーの支持を獲得。同社の電気シェーバーのシェアは30%台から44%台へと躍進を遂げる。

1984年にはチタンコーティング刃を採用した『スーパーレザーTITAN ES343』を発売。1988年には、そのチタンコーティング刃を薄さわずか37μm、外刃半径3.5Rまでに鋭角化が図られた『カーボチタンV ES323』が登場する。

ちなみに刃は薄く、刃先は鋭角であるほど切れ味は増す。日本刀がその好例だ。ES323はチタンコーティングを施すことで硬度はセラミック並みに高まり、肌に負担をかけにくい深剃り、早剃り能力も向上させたのだ。

ツイン&フロート ES702(1991)

カーボチタンVで剃り味は向上したが、肌との接地面積が少ないため、ヒゲを剃る時間がかかるという新たな問題が浮上。これを解決するため考案されたのが、上下に2枚の刃を持つ複合刃構造である。しかも、ツイン&フロート ES702には刃を肌に密着させるうえ、押し付ける力を最適化するという、画期的な肌追従機能も搭載された。

リニアスムーサー ES881(1995)

駆動部に関しては、3枚刃の開発と並行して、回転式モーターに代わるモーターの開発が進められた。それがリニアモーターである。リニアモーターは回転数に加え、振動や騒音など回転式モーター比較して多くのメリットを持つが、当時、世界中を探してもシェーバーに搭載可能な小型・高性能のリニアモーターは存在しなかった。

そこでパナソニックの開発チームでは4年半の歳月をかけ、独自のシェーバー用リニアモーターを開発。それが世界初のリニアモーター搭載モデルとして毎分1万2000ストロークという、当時としては驚異的な高速駆動を実現した『リニアスムーサー ES881』だった。

こうして「内刃」「ヘッド」「リニアモーター」という、肌にやさしい深剃りを実現する技術の開発に成功していったパナソニック。2002年、満を持して「ラムダッシュ」が誕生する。

ラムダッシュ ES8093(2002)

このラムダッシュには当時としては世界最高レベルであった「30°鋭角内刃」「世界最大可動の全方位フロートヘッド」「世界最高速ダイレクト・リニアドライブ」という3つの技術を導入。シリーズ年間販売台数24万台突破という、メンズシェーバー初の快挙を達成する。

その後、2007年には4枚刃のラムダッシュ ES8259、2011年には5枚刃のラムダッシュES-SV61が登場。画期的な5枚刃シェーバー℃梠繧フ到来を告げた。以上のような足跡をふまえ、もう一度、最新モデルであるラムダッシュ ES-LV9Bを見てみよう。まずヘッドはフィニッシュ刃×2、クイックスリット刃×1、くせヒゲリフト刃×2の5枚刃構成。

なかでも60μmの厚刃と41μmの薄刃で構成されているフィニッシュ刃に注目したい。

一般的な電気シェーバーは同じ厚さの製品が多いが、ラムダッシュは内刃が肌に触れないように守る60μmの厚刃と、ヒゲの根元にもぐりこみ深くとらえる41μmの薄刃で構成。深剃りと肌へのやさしさを両立させているのだ。

また、外刃自体も、これまた通常の製品は電気めっき法で製造されるが、ラムダッシュは強度があり、摩擦にも強いプレス加工で作られている。ただし、プレス加工には金型が必要。その金型もラムダッシュの場合、わずか12×38mmというサイズに約1300個の穴が要求される。

このようにシェーバーの製造過程においては高い技術力が要求されるのだが、パナソニックではES-LV9Bの製造を、その技術水準を維持するため、滋賀県の彦根工場で行なっている。実際、金型製作は1000分の1mm単位の誤差も正確に削り取る匠≠ェ活躍。手作業により、3か月を費やして完成させたという。

一方、内刃は素材に摩耗に強いステンレス刃物鋼を採用。これを焼き、鍛え、研ぎ澄ますといった、日本刀と同様の製法で鍛え抜き、刃先角度を30°まで鋭角化。このナノレベルまで鋭角にした内刃を、高速のリニアモーターで駆動することで刃の能力を最大限に引き出し、硬いヒゲもスパッとカットしていくのだ。

そんなヘッド部と肌に、かつてない密着を実現したのが「3Dアクティブサスペンション」だ。今回のES-LV9Bでは、前後の可動域が約20°と、従来モデルと比較して約15%アップという改良が図られている。

またチタンコーティングされた、ゴールドに輝く2つのスムースローラーが肌への摩擦を低減。よりスムーズな剃り心地を実現する。

このように1955年に国産1号機を発売して以来、どの時代においても技術革新を止めなかったパナソニックのメンズシェーバー。その歩みはMade in Japanの誇りとともに、「肌にやさしく圧倒的な深剃り」を追求してきた日本のシェーバーの歴史そのものといえるだろう。

撮影/久保田育男

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