COMPUTEX TAIPEI 2017 - 16コア以外のRyzen Threadripperは? AMD担当者に聞く今後の製品展開

COMPUTEX TAIPEI 2017 - 16コア以外のRyzen Threadripperは? AMD担当者に聞く今後の製品展開

画像提供:マイナビニュース

●デスクトップ向けAPUの存在も示唆
COMPUTEXにおけるAMDの発表会の様子はすでにお伝えした通りだが、正直なところあまり新しい情報はなく、単に公開済みの製品について「スケジュールが確定した」という以上ではなかった。しかし、発表会後にラウンドテーブルを開催し、Exectiveに細かい話を聞くことができた。お相手いただいたのは、James Prior氏(Photo01)とJohn Taylor氏(Photo02)である。話自体は別々に聞いたのだが、テーマがほぼ重複しているので、まとめて内容を紹介したい。

○Ryzen Mobile - TDP15W製品に注力、デスクトップ向けAPUも予定

まずはRyzen Mobileから。説明会での写真はいささか小さかったのだが、実物はこんな感じ(Photo03,04)。

横の10円玉と比較すると、

パッケージサイズ:約37.3mm×約25.5mm
ダイサイズ:約21.7mm×約10.2mm(いずれも撮影した写真からの実測)

となる。ダイサイズはおおよそ221平方mmとなる計算だ。KabyLakeのダイサイズはおよそ183平方mmと推定したが、それよりも2割ほど大きくなる計算である。ただ原価という意味では、Intelの製造プロセスは他社(TSMCとかGlobalFoundriesなど)と比較して割高になるといわれており、そこから考えるとRyzen Mobileの原価はそう大きくKabyLakeと変わらないと想像される。

このRyzen Mobileであるが、現在はTDP15Wの枠に収めるものに注力しているという(Prior氏)。Zenコア+VegaのAPUということは明かされているが、いま時点でGPUのCompute Unitsがどの程度かといった詳細については公開できないという。ただ、あくまでも15WのTDP枠に向けた構成になっていると説明する。

これは何を意味しているかといえば、AIO(オールインワンデスクトップ)などにも利用できるかもしれないが、Ryzen MobileはノートPC向けの製品であるということだ。そしてデスクトップ向けのSocket AM4のパッケージとして別の構成を予定しているそうだ。

これは要するに、もう少しVegaのCompute Unitsを増やしたものということであろう。さらにまだ詳細は説明できないとしながらも、Ryzen Mobileとさして変わらない時期に、グラフィックを統合したRyzenベースのデスクトップ向けのAPUも投入される事をPrior氏は示唆した。

○ThreadRipperについて - 16コア以外の製品も予定

ThreadRipperはEPYCと異なり、2ダイの構成であることがPrior氏から明言された。(Photo05,06)また機械的なパッケージ形状はEPYCと同じだが、電気的には

EPYC:SR3
ThreadRipper:SR3 Rev.2

で異なっており、互換性はない、というのがPrior氏の説明である。

もっともEPYCとThreadRipperでは信号線の数が異なる(DDR4は8ch vs 4ch、PCI Expressは128 Lane vs 64 Lane)から、互換性がないのは当然でもある。そんなわけでEPYCのボードにThreadRipperを装着したり、あるいはその逆の構成をやっても(そうした構成に意味があるかどうかとは別に)動作しないという話だった。

あとうっかり確認し忘れたのだが、EPYCは外部のチップセットが不要という話で、対するThreadRipperはX399チップセットの組み合わせとなる。実際にはX399はPCI Expressの先に接続される形になると思われるので、その意味では変わりがないといえばないのだが、一応このあたりも両者のピンの違いということになるだろう。

ところでThreadRipperが搭載するコアについて"Up to 16 core"と説明されているので、当然のことながら派生型が考えられる。これについては「Ryzenと同じように、2バージョンある」という話だった。もっともそれが16coreと14coreなのか、16coreと12coreなのかは今回明らかにされなかった。

TDPについては、かつてのAMD FX-9590のように220Wに達することはなく、「もっと常識的な数値だ」というのがPrior氏の返事であった。恐らく140W程度に収まると思うのだが、具体的な数字は特に示されなかった。

もう少し先の話について、まずIntelのOptane Memoryをどう思うかPrior氏に聞いたところ「良いアイディアだが高価だ。Optane Memoryを使うのと、512GBのSSDを使うの、どっちがいいと思う?」と返ってきた。また、IntelのThunderboltのプロトコル公開については、「もし本当にプロトコルが無償で公開され、かつその利用にロイヤリティが不要ということになれば、OEMベンダーが興味を持つとは思う」との返答だった。

●「EPYC」やあのARMベースプロセッサ「K12」の動向も
○EPYC - 詳細は6月20日の正式発表までおあずけ

「どこからEPYCという名前が出てきたのか」という質問に対するTaylor氏の答えは「元々のアイディアはEPOCHだ。Epoch-makingのEPOCHだ。我々の製品はまさしくエポックメーキングな製品であることをアピールしたかった」という。

そのうえで「さらにCIPHERという言葉もここに含めたかった。この製品はデータセンター向けに、非常にSecureで安全に利用できる環境を提供する。EPYCのロゴのバックにある丸も、そうした意味をこめたものだ。そして、発音のしやすさとか覚えやすさを考えると4文字単語でないといけない。そこでEPOCHとCIPHERを組み合わせて発音しやすい単語を考えた結果、出てきたのがEPYCだ」とその背景を解説する。

「実のところ、EPYCという単語が出てきたとき、『それじゃItaniumのアーキテクチャ(EPIC:Explicitly Parallel Instruction Computing Architecture)だ』と社内でもずいぶん真剣に揉めたんだが、最終的にこれで決まった」ということだったらしい。ただ「でもEPYCってなんか機械語みたいで格好いいだろ?」というやや中二病的な発言もあったことを併記しておく。

ちなみに最初は"Zen"を入れた、"Ryzen Server"という名前も検討したとか。ただパートナーからこれは却下されたそうだ。

ところでそのEPYC、いまのところ4ダイの製品のみがラインナップされることになるそうだが、コア数はいろいろバリエーションがあることをほのめかしていた。ただ6月20日の発表が公式にアナウンスされていることもあり、「細かい話は(公式発表の6月20日まで)もうちょっと待て」という返事であった。

ちなみにEPYCでどれだけマーケットシェアを取りたいかという質問を投げかけたところPrior氏は「それは答えられない」と逃げ腰だったが、Taylor氏は「現状のシェアを考えると、もしDouble Digit(2桁)のシェアを取れたら大成功だろう」と言っていた。実際最初はそんなところだろうし、もしそれが実現したらかなり大きなインパクトがありそうだ。

○K12 - 64bit ARMベースはどうなった?

Zenコア製品の華々しいアピールの影に隠れているのが「K12」というかARMベースの製品ロードマップ全般である。2014年1月にSeatleことOpteron A1100のアナウンスを行い、同2014年7月には開発キットの提供を開始、2016年1月には正式に製品発表も行ったが、その後が全く続いていない。

2014年に発表されたProject Skybridgeは、その後「顧客からのニーズが無かった」という理由で2015年5月にキャンセルされている。ただ2014年のロードマップでは、これの後継としてZenとK12を同時に開発していると示していた。本来であればK12もZenと同じく、2017年中に市場投入されるはずであった。

ということで、これに関してはストレートに「ところでK12はどうなっているのか?」と聞いてみた。これに対してTaylor氏曰く「確かに我々はアーキテクチャライセンスを保有しており、HPCマーケットに向けてARMを利用する計画をもっている。ただ、現在のデータセンターマーケットはx86アーキテクチャがいまだ支配的であり、EPYCでこのマーケットのシェアを獲得しようとしている。(CEOの)Lisaも、AMDが(EPYCで)HPCマーケットを獲りたいと考えているので、我々はx86でここにチャレンジするつもりだ」という返事だった。

そこで「ではK12はホールド状態なのか、水面下では進行しているのか、それとも中断(Suspended)したのか?」と念押ししたところ「公式なコメントを言える立場ではない」と断ったうえで「我々はRyzenやEPYC、これに続くZen2やZen3に全精力を傾けている」という答えであった。

現実問題としてどうか? というと、すでにK12のTape outは2015年の第3四半期内に済ん
でいると見られる。2015年第3四半期のEarning Callにおける質疑応答でCEOのLisa Su氏がJPMorganのHarlan Sur氏の質問に答える形で

"Relative to process technology, we have taped out multiple products to multiple fabs in FinFET and we believe that they're also on track in terms of overall ramp. So we continue to focus on both of those aspects, both the architecture and the process technology, but so far, so good."(「プロセス技術に関して、我々はFinFETを使う複数のFabで複数の製品のテープアウトを完了しており、全体として立ち上がりは計画通りである。我々はアーキテクチャとプロセス技術の両面で引き続きフォーカスし続けており、いまのところ順調である」)

と答えている。明確にK12とは述べていないのだが、一応この段階でK12のTape outが済んだことを表明したと見られている。ZenとK12はフロントエンドのデコーダ部が異なる(x86 vs ARMv8a)だけで、後はほぼ同じ構成と思われるから、両方同時にTape outしても不思議ではない。

したがって、少なくとも1st Siliconは存在するだろうとは思うのだが、その先(動作検証とか互換性テスト、実際のプラットフォームの開発、etc...)の人員がRyzen/EPYCに集中してしまい、ほとんど進展が無いままホールドされているというあたりではないかと思う。

とはいえ、こんなスライドを公開している以上、何もなしというわけにもいかないだろうから、何かしら動きはあると思うが、どういう形を落としどころにするかはちょっと判断つきかねるところだ。

○Process - RyzenとVegaではUpdateが行われる

5月16日のFinancial Analyst Dayに併せて更新されたロードマップ(Desktop CPU、GPU、Server CPU)によれば、RyzenとVegaに関しては、14nmの製品とは別に、14nm+の製品があることが明らかにされている。

この14nm+について、「これはProcess Enhancementなのか、Architectual Enhancementなのか、それとも両方なのか」と尋ねた所、Prior氏は明確に「Both(両方)」と述べた。「いまのRyzenは最初のZenコアなので、もちろんいろいろ改良する余地がある。なので、Archtectureの改良(Enhancement)もある。それとは別にProcessも改良される」とのことだ。

実はCOMPUTEX開催中の5月31日に、Globalfoundriesが都内で記者説明会を開いており、ここで「現在同社は、より幅広い顧客ニーズへの対応を図るために、さらなるパフォーマンスの向上に向けた改良(おそらくこれが14nm LPP+といった名称で提供されるものとなると思われる)を進めている」という説明があった。

実は個別質問の中では、14nm世代ではトータル2回の性能アップが想定されているという話もあったそうで、強いて型番をつけるとすれば14LPP+と14LPP++というあたりになる。

タイミングを考えると、Zenで使われるのは14LPP+になりそうだが、Zen世代でも1回、Skylake→KabyLakeの時のように、基本構造は変わらないにしても、多少動作周波数が上がりやすく、かつ消費電力が若干落ちるといった効果は期待できるかもしれない。

話を戻すと、RyzenとVegaにはUpdateがあることになるが、EPYCに関してはこれが予定されていない。この理由について「Serverの場合、製品のライフサイクルが長い。我々は14nmに続いて14nm+の製品をリリースし、次いで7nmの製品を出すことになるが、この7nmの製品はよりサーバーに適したものになる予定だ」という話だった。
(大原雄介)