やくみつるの「シネマ小言主義」 アメリカお得意の再現“スペクタクル” 『バーニング・オーシャン』

やくみつるの「シネマ小言主義」 アメリカお得意の再現“スペクタクル” 『バーニング・オーシャン』

(提供:週刊実話)

 2010年、わずか7年前にこんな大事故がメキシコ湾沖で起きていたとは、まったく知りませんでした。本作は、海上に浮かぶ海底油田掘削施設の爆発・火災事故の顛末を描いた映画。
 『ディープウォーター・ホライズン』という、まるで空母のような施設を再現するにあたり、できる限りCGに依存せず、破格の巨大セットを建造してリアルなスペクタクル映像を追求したのだそう。見終わったあと、このメイキング映像をぜひ見てみたいと思ったほど、臨場感がハンパないです。
 海底5500メートルという深度まで削施するこの施設の構造は、パンフレットに載っている図を見ても複雑で分かりにくい。こんな施設の仕組みと事故の原因を理解して、ヒューマンドラマにまで落とし込む脚本家や監督の労苦は、いかほどかと思ってしまいました。

 「世界最大級の人災」というキャッチコピーがついていますが、工期の遅れを取り戻すために、管理職が安全管理に不可欠なテストをショートカットした結果、126名の乗務員のうち11名が死亡。周辺の自然環境や住民の生活に甚大な被害を与える大惨事を引き起こしてしまいます。
 現場の全員が命を落としかねない大爆発。仕事中はアメリカンジョークを飛ばしてばかりの乗務員たちも、いざ事故発生となると、それぞれがプロとして適切な行動をしたから被害の拡大を止められたのでしょう。
 大災害が起きると「◯名が犠牲に!」と、いきなり数字で把握されて、各人の名前や人格はふっ飛んでしまいがちですが、この映画では個々の存在にていねいに光を当てて、埋没させまいとしているのが伝わってきます。
 トランプ大統領のせいで無茶な動きばかりが目につくアメリカですが、この映画を見ると「アメリカの威信を賭けて」という言葉が浮かびます。映画の中では常に星条旗がはためいていましたしね。

 ところで、この映画の主人公は、遠く離れた海上にいても、毎日のようにスカイプを通じて妻の顔を見ながら会話をしてましたが、私も、スカイプなるものの威力を体験いたしました。
 この3月、グリーンランドへの旅行中に、現地と、テレビ番組の『Qさま』を収録しているスタジオとを結び、こちら側はPCで収録の様子をリアルタイムで見てコメントし、スタジオではスクリーンに自分の顔が映し出されていました。
 「実は大阪にいるんじゃないの?」とツッコミが入ったほど自然。こっちは北極にいて、夜中なんですが…。どこでも仕事ができる、えらい時代になったものです。

画像提供元:(C)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

■『バーニング・オーシャン』監督/ピーター・バーグ
出演/マーク・ウォールバーグ、カート・ラッセル、ジョン・マルコビッチ、ジーナ・ロドリゲス、ディラン・オブライエン、ケイト・ハドソン
配給/KADOKAWA
4月21日(金) 全国公開中。
 2010年4月20日。チーフ技師マイク・ウィリアムズ(マーク・ウォールバーグ)はメキシコ湾沖80キロの海上に浮かぶ石油採掘施設『ディープウォーター・ホライゾン』に向かう。安全テストが終わっていないにも関わらず、石油会社の幹部ヴィドリンは掘削再開をさせると、海底油田から逆流してきた天然ガスが引火し大爆発。海上一面が火の海と化す最悪な状況の中、施設内に閉じ込められた作業員たちは決死の脱出を図る。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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