話題の1冊 著者インタビュー 早見和真 『神さまたちのいた街で』 幻冬舎 1,500円(本体価格)

 ――本作では小学生の兄妹が、それぞれ別の宗教観を持つ両親との間で、悩みながら自分だけの“正義”を見つけていく姿が描かれています。なぜこのような物語を書かれたのですか?

 早見 世界にあふれる戦争の理由の一つに宗教があります。戦争を単純化すると「自分が正しい」のぶつかり合い。他者の声に耳を傾けることがない状態です。それを「家族」という一番小さい世界に持ち込んでみたらどうだろう、と考えました。父親と母親が別の宗教を信じていても、お互いが認め合うことができるならば、何かが変わっていくはず。間に立たされ、正しさの基準がなくなってしまった子どもたちがどうやって自分の正義を見つけ出して生きていくのか、それを描いてみたかった。もう一つは、再会した小学校の同級生が、この物語の主人公と同じような人生を歩んでいたことを知ったんです。当時、明るく振る舞っていた彼が、その時代に苦しんでいたことを知り、胸が苦しくなりました。本作で主人公に寄り添おうとする親友の行動は、当時、もし僕が彼の悩みを知っていたら、こんなことができたのではないか、という僕自身の理想の形かもしれません。これは自分が小説として形に残したい、と思いました。

 ――不仲な両親との間で、小5の少年がどう決着をつけるのか? 物語は意外な結末を迎えます。

 早見 実はこのエンディングを書くのに3年かかりました。連載していたものを書籍化する際、無垢な少年が戦争に巻き込まれないために希望のある終わりにしたかった。10歳の少年が思い描く「こうであってほしい未来」をもう一度最初から考えて大幅に書き直したんです。本作のエンディングは、僕が今まで書いた小説の中でも一番だと思っています。

 ――ご自身にも娘さんがいるそうですが、早見さんにとっての“父親像”とは?

 早見 一言で言うと“己が戦っている人”ですね。僕は、家族はこうあるべきだ、という押しつけが嫌い。父親には「お前らのために働いているんだ」なんていうつまらない言い訳もしてほしくありません。本作は、僕自身が親になっていなければ書けなかった。子どもに自分の正義を押しつけていないか、振り返りながら書きました。

 ――次回作の構想はありますか?

 早見 東京オリンピックの後に興味がありますね。2020年以降、焼け野原になった跡にどのように立ち上がっていくのか? 具体的には、移民と政治とお金にまつわる作品を考えています。
(聞き手/程原ケン)

早見和真(はやみ・かずまさ)
1977年神奈川県生まれ。'08年『ひゃくはち』でデビュー。'15年『イノセント・デイズ』が第68回日本推理作家協会賞受賞。その他『僕たちの家族』『東京ドーン』など著書多数。

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