話題の1冊 著者インタビュー 大津秀一 『死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33』 幻冬舎 1,100円(本体価格)

 ――本書では33編の終末期がん患者さんの話がまとめられています。なぜ、このような本を書こうと思ったのですか?

 大津 患者さんは私に「人生において、あるいは元気な時に、こうしておけばよかった」と数々の示唆をくださいます。私は医療の現場にいるので、頻繁にそれらを耳にする機会がありますが、普段、健康に生きている方が、死を直前に迎えた方の人生の到達点や、そこから得た人生観をうかがう機会はそう多くはないでしょう。
 今、元気だからこそ、ひとたび病を得た方たちの言葉から学ぶことがあるのではないか? そして、それを皆さんにお伝えしたい。その思いが執筆の動機となりました。

 ――関わった終末期の患者さんは2000人を超えるそうですが、なぜ「緩和医療医」になろうと思ったのですか?

 大津 症状緩和のすごさを知ったからです。私が医者になった頃は、今ほど症状緩和の医療が進んではいませんでした。ある時、独学で緩和医療を開始したところ、患者さんの苦痛が非常に軽減されることに驚かされました。元気を取り戻した患者さんが、再びやりたいことに向き合う姿を見て、支えることのすばらしさに気が付いたことが緩和医療の道へ進むきっかけになりました。
 緩和医療というと“看取り”のイメージがありますが、重要なのは「取れる苦痛は取り除き、生きている時間を大切にする」ことです。死の医療ではなく、よりよく生きることを大切にした医療なのです。

 ――末期がん患者への“延命治療”についてはさまざまな意見がありますが?

 大津 重い病気を得た方たちの価値観は人それぞれです。がんといっても、その進み具合や治療への反応性、患者さんの年齢、家族構成など、一つとして同じ事例はありません。どんな治療が延命となり、どれがそうならないか、それは価値観によっても異なります。
 例えばある40代の女性は、できるだけ長く生きて、その姿を小さな子どもたちに見せたいと頑張りました。彼女にとってはすべての医療が、延命して“家族と共にできるだけ長く生きる”という大切なものであり、手段でした。自身の価値観と提供される医療行為が一致することが重要なのです。
 そのためには、医療者ばかりでなく、受け手もしっかり情報収集し、自身の思いを伝えるコミュニケーション力を磨く必要があります。医療者と患者がよく相談し合った結果として選んだ治療は、後悔が少ないという特徴があると思います。
(聞き手/程原ケン)

大津秀一(おおつ・しゅういち)
茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。緩和医療医。多数の終末医療患者の診療に携わる一方、著述・講演活動を通じて、緩和医療や死生観の問題を広く一般に問いかけている。

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