話題の1冊 著者インタビュー 西村健 『最果ての街』 角川春樹事務所 1,600円(本体価格)

 ――週刊実話で1年間にわたる連載、お疲れ様でした。そして、早速の書籍化となりました。そもそも、なぜ山谷とホームレスを題材にしたのですか?

 西村 山谷のなじみの店で、ある出版社の編集者と飲んでいた時、自分が労働省の研修で山谷に来た話になりました。22歳だった自分にとってまさに驚きの光景でした。日雇いの職を求めるおっちゃん達の怒号が飛び交い、立ち飲み屋では日銭の入った人達が昼から飲んで酔っ払い、道端で寝ている人がゴロゴロいました。あの頃の山谷は活気がありましたね。
 その編集者は、そんな面白い経験をしたのなら、それを小説で書いてみては、と打診されたのです。僕自身も、何で今まで気が付かなかったのかと(笑)。早速、労働省にいる昔の同僚に連絡して取材を申し込みました。
 今は山谷も高齢化が進み、以前のような活気はありません。簡易宿舎も様変わりして、外人のバックパッカーや受験生が泊まっています。それでも吹き溜まりのような独特の雰囲気はまだ残っていますね。

 ――福島から山谷へ流れ着いた人が出てきますが、福島を題材にしたきっかけ、実際にモデルになった人はいたのですか?

 西村 一部を除いて登場人物は、僕が想像して創作したキャラクターです。山谷にいる人たちは個性的ですから、登場するキャラクターも個性的になりました。
 この小説を書くにあたってドキュメンタリー映像作家の熊谷博子さんに相談しました。熊谷さんとは三井三池炭鉱の記録映画を製作している時からの知り合いで、福島を取材しているというので、原発事故から山谷に流れ着くというのはどうだろうかと聞いてみたのです。そしたら、ありなんじゃないかと言ってもらえて、実際に行ってみたんです。

 ――単行本でここを読んでほしいという箇所はありますか?

 西村 全部ですね(笑)。これを読んで、山谷の昔と今の独特な雰囲気を読者にも感じ取ってもらえたらと思います。

 ――今後の活動について伺えますか?

 西村 '95年の元気だった雑誌編集部の話を書いています。これは書下ろしで講談社から出版予定です。
 また業界紙「電気新聞」で連載をスタートします。電気業界の新聞なので、やはり電気にまつわるストーリーにしてもらいたいという要望もあり、主人公は電気のメーターの検針員の女性。検針先で殺人を目撃してしまい、狙われるというサスペンスを書く予定です。
(聞き手/飯塚則子)

西村健(にしむら・けん)
1965年生まれ。東京大学工学部卒。労働省勤務後フリーライターに転身。'95年に「ビンゴ」で小説家デビュー。「劫火」「残火」で日本冒険小説協会大賞受賞。他吉川英治文学賞新人賞、大藪春彦賞など受賞。

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