話題の1冊 著者インタビュー 平坂寛 『喰ったらヤバいいきもの』 主婦と生活社 1,400円(本体価格)

 ――生物ライターになろうとしたきっかけはなんですか?

 平坂 生き物の本を書くのが夢だったからですね。物心ついた頃から生き物が好きで、動物図鑑やファーブルの昆虫記を読むのが日課でした。実家が古本屋で、その手の本を売り物から拝借できたこともあり、多くの生物本に囲まれて幼少期を送りました。そのため、いつか自分も本を書く側に立って、子供たちに生き物の魅力を伝えたいと思うようになっていったのです。
 当初は研究者になることが出版への道と考えていましたが、ネットが普及した現代では、個人ブログを含めた執筆の場、あるいは書いた文章を読んでもらう環境は無限にある。
 ならばいっそ、ウェブライターからキャリアを積む方が近道かなと思い直し、大学院を休学して執筆活動を始めました。

 ――今まで食べた生物の中でおいしかったものと、危険だったものをそれぞれ教えてください。

 平坂 おいしかったのはバラムツという巨大な深海魚ですね。この魚は浮袋を持っていなくて、代わりに筋肉に大量の脂肪を蓄えることで浮力を保ちます。そのため、全身に大トロも顔負けの脂が乗っているんです。ただし、ほんの少ししか食べてはいけません。刺身を数切れも食べると、お尻から油が垂れ流しになるんです。彼らの体内に含まれる脂肪分はいわゆるワックスで、人間の胃腸では消化も吸収もできないためこうした悲劇がおきます(笑)。他には、カミツキガメやグリーンイグアナもおいしいですね。
 危険だったのはデンキウナギです。感電したときは心臓がギュッ! と締め付けられる感覚がありました。ヒョウモンダコも食べるのに勇気が要りましたね。

 ――今後、捕獲したい生き物や、行ってみたい場所はありますか?

 平坂 北極や南極の深海にいる訳の分からない深海魚たちを食べてみたいです! 自分が一度も身を置いたことのない過酷な環境に暮らす生物たちがどんな身体を持っているのか、舌を通じて知りたいですね。また、アフリカも未踏なので近いうちにぜひ訪問したいです。デンキウナギに続いてデンキナマズにも感電したい!
 直近の目標は東南アジアに分布するキングコブラの捕獲です。毒ヘビの扱いは心得ているつもりですが、あまりにも巨大で咬まれたらほぼ確実に死ぬので、さすがに緊張しています。死んでしまってはこの活動も続けられませんからね。あと、あの3メートル以上もある巨体をちゃんと完食できるかどうかも心配です(笑)。
(聞き手/程原ケン)

平坂寛(ひらさか・ひろし)
1985年、長崎県生まれ。生物ライター。琉球大学理学部海洋自然科学科卒業。その後、筑波大学大学院へ。珍生物を自ら探し、捕らえ、味わうという独自の取材姿勢が反響を呼ぶ。

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