話題の1冊 著者インタビュー 廣末登 『組長の妻、はじめます。 女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録』 新潮社 1,300円(本体価格)

話題の1冊 著者インタビュー 廣末登 『組長の妻、はじめます。 女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録』 新潮社 1,300円(本体価格)

(提供:週刊実話)

 ――廣末さんがヤクザを取材・研究し始めたきっかけは何だったのですか?

 廣末 私が10代の頃に抱いた疑問に端を発します。当時、私は親不孝通り(福岡市中央区)などにたむろする中途半端な不良でした。遊び仲間の中には、ヤクザの事務所に出入りする者もいました。彼らは徐々に持ち物がよくなりますし、不良仲間からも一目置かれるようになります。「よかねえ、ヤクザになったらリスペクトされるったい」という、少年らしい憧れはありましたが、実際にその門戸を叩くには至らず、かえって“一線を超える”ことに疑問と畏怖を感じていました。
 この疑問に正面から取り組んだのは、北九州市立大の大学院に入り、犯罪学を専攻した時です。博士論文執筆のため、有名な刺青クリスチャンの大阪教会に赴いて調査協力を依頼したことが、ヤクザの取材・研究の直接的なきっかけです。約2年間、断続的に教会に寝泊まりして調査しました。この時、牧師から紹介された元ヤクザの方々を起点として、元ヤクザや現役のヤクザの方々と知り合いになり、現在に至っています。

 ――かつて『極道の妻たち』が大ヒットしました。実際に“姐さん”を取材してみて、どのように感じましたか?

 廣末 家田荘子さんが描いた『極道の妻たち』は、ヤクザの絶頂期の話です。そこで活躍する姐たちは、まさに銀幕のスターでした。しかし、私が姐さんを取材した時期は暴排条例下、ヤクザにとっては冬の時代です。初めて姐さんと会った時“大人しそうないい方”という印象を持ちました。彼女が幼児を抱いていたからかもしれませんが、映画で見る派手な姐さんとは大違いでしたね。もっとも、ヤクザの絶頂期に生き、かつて300人の若い衆を抱えた組織の姐さんや、拙著『組長の娘』(新潮文庫)のお母さん(ビッグママ)は、昭和の極妻の輝きを残しています。現代の『極道の妻たち』は、姐であると同時に母であり、とても多忙です。盃事等以外では、オシャレを楽しむ余裕すらないのがリアルな現状のようです。

 ――ヤクザ社会における女性の存在とは?

 廣末 ヤクザ社会は男社会です。しかし、そこでヤクザが男として輝くためには、一家の姐として陰で支える女性の存在が不可欠です。若い衆を束ね、昼も夜も所作(ヤクザの礼儀作法)の教育に努め、妹分(舎弟の妻)たちの悩みを聞き、懲役に行っている若者の世話を焼くのは姐の役目です。彼女の存在は、一家を支える要石的な存在といっても過言ではないでしょう。
(聞き手/程原ケン)

廣末登(ひろすえ・のぼる)
1970年福岡市生まれ。北九州市立大学社会システム研究科博士後期課程修了。専門は犯罪社会学。現在、大学非常勤講師、日本キャリア開発協会のカウンセラーなどを務める。

関連記事(外部サイト)