今こそ自社の「存在価値」を見極める時 「CEO Study 2021」に見る、ニューノーマルの高業績企業像

今こそ自社の「存在価値」を見極める時 「CEO Study 2021」に見る、ニューノーマルの高業績企業像

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 世界の約3000人のCEOにインタビューし、それを集計・分析した「CEO Study 2021」。新型コロナウイルス感染症のパンデミックまっただなかで行われた今回の調査では、「ポストコロナ時代に高業績を上げる企業像」が浮き彫りになった。同調査の日本側責任者である日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)執行役員 カスタマートランスフォーメーション事業 戦略コンサルティング事業担当の藤森慶太氏に、「CEO Study 2021」の注目ポイントと、ニューノーマルにおける企業のあり方を聞いた。

AIが成熟に至っていないことが数字に表れた

「『過去6カ月間で下した最も困難な意思決定』として、『従業員の給与等の減額』を挙げた企業は、低業績企業より高業績企業の方が多かった」。そんな意外な事実も判明した「CEO Study 2021」。

「CEO Study」とは、米IBMのシンクタンクであるIBM Institute for Business Value(IBV)が、世界のCEOを対象に2003年より実施してきた大規模調査だ。これまでに総勢5万5000名以上の経営層にインタビューし、データを解析・蓄積してきた。最新の「CEO Study 2021」では、英調査会社・Oxford Economicsの協力のもと、約50カ国・26業界のCEO約3000人にインタビューが行われた。

 そんな「CEO Study 2021」を俯瞰して、藤森氏はこう話す。

「今回の調査で浮き彫りになったのが、レポートのタイトルにもなっている『Find Your Essential=本質を見極める』ことの重要性です。コロナ禍という変化が激しく先が見えない状況をむかえ、その会社にとって本当に大切なもの・本質的な提供価値を見極める必要性が大きく増していると思います」

 以下藤森氏に、「CEO Study 2021」で特に注目に値するポイントを挙げてもらった。ちなみに同調査では、調査した企業を@過去3年間の同業他社と比較した売り上げ成長率 A2020年のコロナ禍における同業他社と比較した売り上げ成長率という2つの基準を設定。その上位20%を高業績企業、下位20%を低業績企業とし、両者の回答にどんな差異が見られたかを分析している。

「2003年の調査開始以降ずっと聞いてきたのが、『自社に最も影響を与える外部要因』です。今回は『テクノロジー』(1位)と『市場の変化』(3位)、そしてコロナ禍もあって『法規制』(2位)が上位トップ3に挙がりました。テクノロジーに関しては、2000年代はそこまで高くありませんでしたが、個人の生活にモバイルが広く浸透し出した2012年以降は、トップの座をほぼ毎年占めています。

 また『今後2〜3年で事業成長に最も寄与できると期待するテクノロジー』という質問に対しては、1位が『IoT』で79%、2位が『クラウド』で74%、3位が『AI』で52%となりました。

 AIは離れた3位にとどまっていますが、実は多くの企業にとって、最終的にはAIによるデータ活用をゴールにしたいというのが本音ではないでしょうか。ただそれには、まずIoTでデータを集め、クラウドでデータを格納した後、AIで活用するという、まさにこの順位の通りに進められるのが普通です。つまりAIというものが、まだ広い意味では成熟に至っていないことを、この数字は物語っていると分析しています」

 そして藤森氏がとりわけフォーカスするのが、「今後2〜3年で優先的に推進したいこと」という質問に対し、「アジャイル(俊敏)で柔軟なオペレーション」がトップに挙がったことだ。

「すぐに変われないこと」が命取りとなる時代

「同質問における回答の2位は『セキュアなデータ/システム』、3位は『データに対する透明性の向上』でした。調査前は、これらデータ周りの項目が当然上位を占めると考えていましたが、意外にも6割近くのCEOが『アジャイルで柔軟なオペレーション』を最も支持した。その要因の大きな1つには、やはりコロナ禍があると考えています。

 今回の調査は、コロナ禍まっただなかの2020年の9月〜10月に実施しています。多くの企業が事業継続計画の再整備や、補助金の申請、リモートワークへの対応、非対面における営業方法の構築などに取り組む中で、事業のあり方を短期間で変える必要性に直面しました。

 それと同時に、変革が思うように進まない現実にも直面し、多くの企業が『これからの時代は、変わろうと思った時にスピーディに変われないと、大変なことになる』ということに、気づいた。それが『アジャイルで柔軟な〜』という回答に表れているのではないでしょうか。

 実はIBMが提唱してきた『コグニティブ・エンタープライズ』という次世代の企業像も、『アジャイルで柔軟な〜』と考え方は同じです。日々集まってくるデータを、AI等も活用しながら解析し、そこに何か変化が起こっていれば、それにともなって柔軟にワークフローやオペレーションを適宜アップデートし続けていく。そんな考え方です。それこそが、未来のあるべきデータドリブンな会社ではないかと思います」

 では、それを実現するには、どんな方法があるのか。

「アジャイルで柔軟なオペレーションを実現するための『俊敏性』を企業が存分に発揮するには、一般的によく言われるDX戦略とそれを支えるテクノロジー基盤はもちろんですが、組織や企業文化、人材などを含む企業変革までをトータルで整備する必要があります。正しい戦略がなければ成功しないし、いかに優れた戦略を立てても実行できるシステムがなければ意味がない。そして実行できるシステムがあっても、実際にそれを活用できる組織体制やアジャイル文化、人材スキルが整備されていなければ役に立たないからです。

 そこで重宝するのが、戦略立案からシステム構築、オペレーションに至るまで一気通貫で支援できるコンサルティングファームです。手前味噌にはなりますが、その点で当社は単にシステムを作るだけでなく、戦略からオペレーション、さらには映像制作などエクスペリエンス面までをE2E(エンド・トゥ・エンド)でサポートできる、数少ない総合系ファームであると自負しています」

 そして今回の調査で特に意外だったのが、冒頭で紹介した「過去6カ月間で下した最も困難な意思決定」という質問に対する答えだ。普通に考えれば、「従業員の給与および福利厚生の削減」を行ったのは低業績企業の方が多そうだが、結果は高業績企業57%・低業績企業35%と、高業績企業が大幅に上回った。これは、コロナ禍でも高付加価値人財の福利厚生(well-being)を維持するために、それ以外の従業員のレイオフや待遇見直しを実施している傾向が、高業績企業ほど強いのではないかと推察できる。逆に、同じ質問に対して「投資の断念」を挙げたのは、高業績企業10%・低業績企業32%と、低業績企業が上回った。

 加えて2つの企業群で顕著な差が出たのが、パートナーシップに対する向き合い方だ。「コロナ禍において業績の向上に対する重要性が高まった要素」という質問に対し、「パートナーシップ」と答えたのは高業績企業が63%だったのに対し、低業績企業はわずか32%にとどまったのだ。

なぜ危機下であっても成長投資を行えるか

「そして興味深いのが、これらの質問に対する日本企業の回答が、上記の低業績企業郡の回答とほぼ同じ傾向にあったことです。日本の場合、そう簡単に従業員の待遇を引き締められない事情があるので一概にどちらが正しい・正しくないとは言えませんが、コロナ禍にあっては雇用を優先し、外部コストを抑えて『自前主義』をとる日本企業が多かったことを、数字が表していると言えます。

 一方でグローバルの高業績企業の多くは、むしろコロナ禍という有事にあるからこそ、成長を重視して投資をあまり打ち切っていません。そうして自社にとって本当に必要なところを残し、そのぶん無駄な部分は削ぎ落とし、足りない部分はパートナーシップで外部に委託する。“餅は餅屋”というわけですね。それらの結果として、高業績・高成長を実現している。そんな構図が数字から浮かび上がってきます。

 ただ日本企業も、66%が『今後2〜3年でパートナーシップの機会は増加する』と答えており、本質的・潜在的には外部活用をもっと進めたいと考えていることもうかがえます」

 こうした状況をふまえたうえで、冒頭で触れた「CEO Study 2021」のレポートタイトル『Find Your Essential=本質を見極める』に、いまいちど思いを馳せたい。

「投資や外部とのパートナーシップに注力するといっても、当然ながら会社がつぶれてしまっては、元も子もありません。だから、まずは『生き残ること』を唯一・最大の目的とするのも、理解はできます。とはいえそれでは、結局いつかは淘汰されてしまうのではないでしょうか。極端な例ではありますが、『生き残るために』とマスクを売る事業に切り替えても、どこかで立ち行かなくなるのは必然です。

 そんな今だからこそ、『自社がやるべきことは何なのか』を再考する必要がある。市場環境が劇的に変わり、目的を失いがちになる時代だからこそ、自社の存在意義をあらためて見極め、そこへ徹底的に注力する。一方、自社でやらないことは、パートナーシップで他社にお願いする。以前から言われてきた言葉ではありますが、まさに選択と集中ですね。そしてそれを具現化するために一層重要になるのが、『リーダーシップ』です」

 実際に今回の調査では、『コロナ禍において業績を後押しする重要な要因』という質問に対して『リーダーシップ』を挙げたのは、低業績企業が69%だったのに対し高業績企業は85%と、リーダーシップに対する考え方でも明確な差が表れた。なぜ今、リーダーシップが一層重要になるのか。

「基本的に全ての意思決定は『トレードオフ』であり、何かを選び取るには、何かを捨てなくてはいけません。当然、結果がはじめに分かるわけではないので、とりわけ今のように先が予測しづらい時代は、常に正しい選択ができるとは限らない。でももし間違えたとしても、また選択し直せばいい。そうすることで、前に進み続けられる。そうした意思決定を毅然と行えるリーダーシップが、ものをいってくるわけです。もし何も選ばず・何も捨てないという選択を行うのであれば、言葉は悪いですが、この先はじわじわ衰退していくだけではないでしょうか」

 何より求められるのは、自社ならではの価値を見極めてそこに注力することと、その方向に大きく舵を切れる強いリーダーシップ。COVID-19が引き起こした未曾有の事態により、企業というものの本来あるべき姿が、かえってくっきり浮かび上がったようだ。

*CEO Study 2021 日本語版はこちらから
https://www.ibm.com/thought-leadership/jp-ja/institute-business-value/c-suite-study/ceo/
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