地下鉄、バスにコンビニも... サービス終了相次ぐフリーWi-Fiの「現在地」

「フリーWi-Fi」サービスの終了相次ぐ アクセスポイント減るもサービスの数は増加

記事まとめ

  • 公共交通機関や大手小売チェーンで「フリーWi-Fi」サービスの終了が相次いでいる
  • 東京メトロ、都営バス、セブン&アイ・ホールディングスがフリーWi-Fiサービスを終了
  • 「スマホの使い放題プランなどの普及で以前のような需要は見込めないかも」と専門家

地下鉄、バスにコンビニも... サービス終了相次ぐフリーWi-Fiの「現在地」

外出先でネット環境に無料で接続できる「フリーWi-Fi」が転換期を迎えている。「集客効果」や「外国人観光客への対応」などを目的に2010年代に広がりを見せたが、ここに来て公共交通機関や大手小売チェーンでサービスの終了が相次いでいるのだ。

岐路に立つフリーWi-Fiの現在地は。

■メトロ、都バス、セブンが相次いで終了

東京メトロは2022年6月30日、同社の車両内で提供してきた訪日外国人向けの無料Wi-Fi「Metro_Free_Wi-Fi」を終了した。同サービスは16年12月から銀座線の車両内で開始し、20年度には全路線に導入を完了した。訪日外国人数の増加や東京オリンピック・パラリンピックの開催を受けた施策だった。

同社広報部は6月2日、J-CASTニュースの取材に、コロナ禍による訪日外国人の減少などを踏まえ、提供事業者との契約更新を見送ったと説明した。

公共交通機関のフリーWi-Fiとしては、都営バスの車内で使えた「Toei Bus Free Wi-Fi」も21年11月に終了している。13年12月、終夜バスの運行開始に合わせて導入を進めたもので、外国人旅行者などの利便性を考慮し、英語、中国語、韓国語でも利用可能だった。

東京都交通局の担当者は22年6月9日、J-CASTニュースの取材に対し、スマートフォンの4G・5G回線の普及、携帯電話会社の低価格プランなどの影響で利用者数が減少していたと説明。提供事業者との契約満了に合わせ、サービス終了を決めたとした。

22年3月には、セブンイレブンやイトーヨーカドー、デニーズなどセブン&アイ・ホールディングスの店舗で使えた「7SPOT」が終了している。11年12月に店舗への集客効果を目的にサービスを開始し、当初は「AKB48」の限定壁紙のダウンロードやニンテンドーDS・3DSのコンテンツを遊べる「7SPOTでDS」などを展開していた。

セブン&アイHDの広報担当者は22年6月15日、取材に「通信事業会社によって無料Wi-Fiが十分提供されるようになった為、サービスの停止を判断いたしました」と終了の理由を説明した。

■フリーWi-Fiの現状は?

サービス終了が続くフリーWi-Fiの現状はどうなっているのか。J-CASTニュースは6月23日、全国で公衆無線LAN事業を手がけるエヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)の広報担当者に取材した。同社はサービスを終了した前出3社のフリーWi-Fiのプロバイダを担っている。

NTTBPによると、国内で無料Wi-Fiが普及し始めたのは2011年〜12年頃。スマートフォンの爆発的な普及に伴い、基地局が枯渇したソフトバンク、docomo、auの大手ケータイキャリア3社が、店舗などの光回線を用いたWi-Fiサービスを展開した。Wi-Fiは各キャリアのユーザーが無料で使うことができた。

10年代半ばには、訪日外国人観光客向けの通信環境整備を目的に、国の助成金を活用した自治体などでの導入例が増加。コンビニや商業施設などでは、集客目的で整備されるケースも多かった。フリーWi-Fiのトラフィック(通信データ量)は年々伸び続け、19年10月には過去最高を記録した。

しかし、19年末〜20年のコロナ禍で、訪日外国人観光客の数が激減。煽りを受け、フリーWi-Fiのトラフィックも急減した。NTTBPの担当者は、県間移動を伴う旅行などに制限があった時期には、公園などトラフィックが急増したスポットもあったと話す。その一方で「コロナ禍でサービスの継続が困難になってしまったというオーナーさんも中にはいらっしゃいます」と説明する。

また、キャリア3社のWi-Fiスポットも、基地局の整備や5Gの普及に伴い16年頃から徐々に数を減らしてきた。フリーWi-Fiを展開する事業者の中には、一つのアクセスポイントをキャリアと共用し、それぞれが費用を負担する「重畳モデル」を採用しているところもある。しかし、キャリアWi-Fiの撤退に伴い、費用対効果の観点からサービス終了を決めた事業者もあるという。

全国のフリーWi-Fiのアクセスポイント数は、ピークだった20年の19万8000か所から、21年には15万7000か所へと減少。全国のセブンイレブンで使えた「7SPOT」が終了した影響も大きかった。

■多様化するニーズ、専門家は「インフラ」と指摘

しかし、必ずしもネガティブな話ばかりではない。NTTBPの担当者は「数多くのWi-Fiスポットを展開していたオーナー様が撤退された影響でアクセスポイントの数は減りましたが、SSIDの数(サービスの数)は右肩上がりで伸びています」と話す。

かつては集客効果を目的に大規模チェーンがWi-Fiを導入するケースが目立っていたが、近年は非チェーン店のカフェなど、小規模事業者での導入例が増えているという。ライブ会場の演出に用いるための導入例や、ホテルの外国人向けWi-Fiをコワーキングスペースやワーケーション向けに転用するケース、企業レクリエーションで社員がeスポーツをする際の整備事例もある。

担当者は「ひと昔前まで集客ツールのひとつとして位置づけられることが多かったですが、いまやフリーWi-Fiは『あって当たり前』のサービスになってきています」とし、そのニーズが多様化したと説明する。防災や防犯上の観点から、自治体などがフリーWi-Fiを導入するケースも増えているという。

22年6月10日には外国人観光客の受け入れが再開されたが、以前のような盛況ぶりとはほど遠い。それでも6月現在、フリーWi-Fiのトラフィックはコロナ前に近い水準まで回復してきているという。担当者は「Wi-Fiだけに関わらずオーナー様の新たなビジネスにつながる無線の使い方を提案していけたらと思っています」と今後を見据えた。

フリーWi-Fiの今後を、専門家はどう見ているのか。ITジャーナリストの三上洋氏は6月6日、J-CASTニュースの取材に「スマートフォンの『使い放題プラン』や『格安大容量プラン』が普及したことで、以前のような需要は見込めないかもしれない」と話す。

その一方で「安い料金プランを使っている若年層や、訪日外国人の需要は見込めるでしょう。カフェなどでは、今やないとすごく不便なところもあります」とし、今後は一種の「インフラ」としての役割を果たすのではないかとの見方を示した。

(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)

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