グーグル&ヤフーが2億円超も提供 デマに対抗「日本ファクトチェックセンター」の成算は

ヤフーなどのネット事業者でつくる「セーファーインターネット協会(SIA)」は2022年9月28日、10月1日に「日本ファクトチェックセンター(JFC)」を立ち上げると発表した。サイト上で月に10本以上のファクトチェック記事を掲載することにしており、ヤフーやLINEをはじめとしたポータルサイトにも配信を計画している。教材開発やオンライン講習などのリテラシー教育も行う

ロシアによるウクライナ侵攻や、さまざまな災害で誤情報や偽情報(いわゆる「フェイクニュース」)の発信が後を絶たず、対策は急務だ。ただ、その検証作業は手間がかかる割に、検証記事を出しても十分な広告収入は得づらいとされ、持続可能性が課題として指摘されてきた。JFCは、グーグルとヤフーが拠出した資金で運営。今後は、他のプラットフォーム事業者や通信業界にも支援を求めていきたい考えだ。

■大学生のリサーチチームの上に調査報道の経験者がつく

誤情報・偽情報の問題をめぐっては、20年2月に総務省の有識者会議「プラットフォームサービスに関する研究会」が、法規制ではなく民間による取り組みの推進が必要だとする報告書を発表している。これを受けてSIAが立ち上げた官民連携の「Disinformation 対策フォーラム」が22年3月に発表した報告書では、ファクトチェックのあり方について

「プラットフォーム事業者が提供するサービスやシステムに精通しつつ、それぞれ専門性が異なる各分野に適したアプローチをとることが可能な、中立的なガバナンス体制を有する団体によるチェックの充実が図られることが望ましい」

などと指摘していた。こういった動きを受けてスタートしたのがJFCだ。

運営委員会(委員長:曽我部真裕・京都大学大学院法学研究科教授)のもとで編集部(編集長:古田大輔氏。朝日新聞記者、バズフィードジャパン編集長、グーグルNews Labフェローなどを歴任。NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」理事も務める)が検証記事を出稿する体制。大学生によるリサーチチームやインターンがリサーチや検証を行い、その上に朝日新聞で調査報道の経験があるエディター2人がつく。大学生がリサーチを行い、記者経験者がチェックする体制は、香港大学ジャーナリズム・メディア研究センターの鍛治本正人副教授らが運営するファクトチェック機関「アニーラボ」を参考にしている。国際的なファクトチェック機関、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の認証を受けることも目指している。「アニーラボ」は認証を受けているが、現時点で日本で認証を受けている団体はない。

■陰謀論の検証は「ときに『悪魔の証明』のように難しい」

記事への課金は行わず、広告もつけない。運営資金はヤフーから1年に2000万円、米グーグル社の慈善事業部門から2年間で最大150万ドル(約2億1700万円)の援助を受けてまかなう。事務局長の吉田奨氏(SIA専務理事)は

「今後は広く浅く支援をご提供していただくということが安定した運営に繋がると考えており、他のプラットフォームの皆様や情報通信業界全体からご支援をぜひ頂戴したい」

などと話し、広く支援を呼びかけていきたい考えだ。

すでに6本の検証記事が公開され、そのうちのひとつが「『政府が飛行機雲で有害物質を空から散布している』は陰謀論」。飛行機雲が、危険な化学物質を散布している「ケムトレイル」だとする主張を、過去の米政府機関などの説明をもとに「根拠のない陰謀論」だとしている。記事の最後では「陰謀論に全く根拠がないことを示すのは、ときに『悪魔の証明』のように難しいですが、日本ファクトチェックセンターでは、科学的な根拠などを示しつつ検証に取り組みます」とも説明している。記事で紹介された「ケムトレイル」を主張するツイートは2400件以上拡散されている。荒唐無稽な主張であっても検証の必要があると判断した模様だ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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