日立、若年層向けの「痛くない」乳がん検診装置を発表

日立、若年層向けの「痛くない」乳がん検診装置を発表

画像提供:マイナビニュース

日立製作所は、現在行われている乳がん検診の短所を解消することを目的に、新たな超音波計測技術を開発。それを搭載した検診装置の実用化に向けた取り組みについて発表した。

今回発表された「マルチモード超音波CT」は、現在医療現場で乳がん検診の手段として用いられている「超音波エコー」の課題を解決すべく設計された機器。リング状の超音波デバイスを用いて非接触による計測を行うもので、受診者はうつぶせになって水を満たしたカップに乳房を入れ、そのままの姿勢でいれば検査は完了する。実現可否はまだ不明なものの、実用を目指すにあたり、受診者が触れることになる水の温度は入浴時程度を目指しているという。

日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センタ 川畑健一氏は、開発の背景として、女性のがん罹患・死亡率では乳がんが1位で、特に罹患ピークが米国よりも若い(日本:40代、米国:70代)ことを挙げた。そこで、若年層が受けやすく、負担の少ない検査方法が必要とされているとして、同社が持つ超音波技術を応用した、新たな検診装置の開発に乗り出した。

日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センタ 山田真治センター長は、「日立の研究開発グループとして、QOLの高い社会をつくることは重要な課題。本件だけでなく、以前紹介した線虫と尿を用いるがん検査もこうした流れのひとつであり、いくつかの観点から、がんと向き合っていきたい」と語った。

○「若年層の乳がん検診」の課題を解消

現在、機器で計測する乳がん検診の手法としては、「マンモグラフィ」と「超音波エコー」がある。

「マンモグラフィ」での検査は高年層では高感度に働くものの、若年層をはじめ乳腺が発達している人が検査を受けると、乳腺と腫瘍が同じく白く写るために異常が見つけづらい。アジア人の乳房は高濃度乳腺が多い傾向にあることから、この課題は大きなものとなる。また、乳房を押しつぶしながら撮影するため圧迫痛があること、微量ながら放射線被曝があることも検査のデメリットとして挙げられる。

一方、現在使われている「超音波エコー」は、前述のマンモグラフィにおける課題は解決しているものの、検査精度が術者の技術に依存するほか、図像の輝度による腫瘍の良悪性診断が難しいという別の課題を持っている。これらを払拭すべく、「マルチモード超音波CT」が開発された。

○新開発の技術を用いた乳がん検出

超音波における検出という点では既存機器と基幹技術は同じだが、その計測に際して新開発の技術が2つ用いられている。

ひとつは、乳房と超音波デバイスの分離構造による機器設計だ。既存の超音波エコーでは、検査部位の肌の上を滑らせるようにしてデバイスを動かし、計測を行う。「マルチモード超音波CT」の場合、同じように計測器を部位に密着させる構造とすると、検査容器およびそこに満たした水を他の受診者と共用することになり、衛生上問題が生じる。そこで、検査容器で乳房と超音波デバイスを分離しても計測可能な構造とし、容器による超音波伝搬の影響などによるずれを補正する技術を採用することで、衛生的かつ高精度な計測を可能にした。

また、側方反射波を解析する技術も今回新開発されたもの。腫瘍表面の粗さ、微小石灰化など従来より多くの情報を提供可能となり、検診の精度向上に貢献するという。

なお、「マルチモード超音波CT」は2017年4月より、北海道大学病院との共同研究を開始。今年度は乳がんの手術において摘出された患部を用いて検証を行い、結果に応じて次年度以降、実際の患者に対する検査を実施する。実用化については2020年度をめどに、技術の確立を目指すという回答だった。

現状、乳がん検診においてマンモグラフィと超音波エコーを併用する医療機関も多く、金銭的・精神的、また肉体的負担が大きい面は否めない。川畑氏は、「日本に限らず(乳がん)検査を増やす傾向にあるが、この機械1台で完結するようにしていきたい」と展望を語った。
(杉浦志保)

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