九大、機能性を示す食品成分の組み合わせを簡便に発見できる技術を開発

九大、機能性を示す食品成分の組み合わせを簡便に発見できる技術を開発

画像提供:マイナビニュース

九州大学は、同大学院農学研究院の藤村由紀特任准教授、三浦大典特任准教授、立花宏文主幹教授、早川英介特任助教(現・沖縄科学技術大学院大学)らを中心とする共同研究チームが、混合物試料中の成分情報を簡便かつ迅速に取得できる質量分析技術を構築するとともに、多彩な保健効果が知られている緑茶抽出物の抗酸化活性を、成分組成情報から高精度に評価できる計量化学的技法の開発に成功したことを発表した。この成果は5月23日、国際学術雑誌Nature姉妹誌のオンラインジャーナル「Scientific Reports」に掲載された。

多彩な成分を含む食品の機能性(保健効果)を、単一の含有成分の量や効果の強さで説明しようとする現状の科学的評価技術には、複数の成分の影響を厳密かつ同時に評価できないとう重大な欠点がある。そのため、想定された機能性をうまく享受できず、効能を得るために大量摂取する原因にもなっている。

複合成分混合系の試料の成分分析に汎用される質量分析法、特にイオン化工程前にクロマト分離工程を導入した液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)や ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)では、原理的に混合状態から分離された成分の情報を読み取るため、実際に食品が機能性を示す混合状態における成分組成を捉えているわけではない。また、サンプル調製時に前処理・クロマト分離工程を経るため、一度に測定可能なサンプル数にも限界がある。

これに対し、研究グループが独自に開発したマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS: Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization-Mass Spectrometry)法は、原理的にクロマト分離工程を含まずサンプルを直接分析できるため、機能性を示す混合状態の組成パターンを反映した成分情報の取得が可能であるうえ、1サンプル15秒で測定を行える分析システムとなっており、大規模なサンプル数の測定にも対応できる。

この手法は、マトリックスと呼ばれるイオン化を補助する有機化合物をサンプルと混ぜ、レーザーを照射することで特定成分のイオン化が可能となるが、現状ではその成分には大きな制限があり、多くの興味分子の検出は困難な状況であった。

同研究では有望なマトリックスを探索し、植物中の生理活性物質(ファイトケミカル)を幅広く、かつ高感度に検出可能なマトリックス(1,5-DAN:1,5-Diaminonaphthalene)を見出すとともに、多彩な機能性を有する緑茶抽出物の成分組成情報を取得できたという。

また、MALDI-MSシステムで取得した21種類の緑茶抽出物の成分組成情報と、それらの抗酸化活性(ORAC)との関係性を、計量化学的手法を駆使したメタボリック・プロファイリング法で検討した結果、緑茶抽出物の組成情報から高精度に抗酸化活性を判別・予測できることを見出したという。興味深いことに、同一サンプルを汎用的なLC-MSに供して得られた組成情報よりも、MALDI-MSで取得した組成情報(未分離の成分パターン)の方が、抗酸化活性をより高精度に評価できることを発見したということだ。

この技法により、複数の含有成分中から抗酸化活性を高精度に予測できる「成分の組合せ」を効果的に選別できることが明らかになったほか、このような組合せ(成分バランス)情報をチャート化する方法論を新たに構築することで、緑茶抽出物の機能性の序列を視覚的かつ容易に提示可能になったという。

この研究で得られた「混合状態の成分情報を捉えるMADLI-MSシステム」や「成分と機能性との間に理論的解釈を与えるケモメトリクス」の技術が進展することで、食品や農産物などの混合物試料の多検体迅速測定による簡便な機能性評価、従来法で見落としていた有用成分の発掘、機能性を効果的に享受できる「成分の組合せ」情報を活用した「機能性デザインフード」の開発などに役立つことが期待されると説明している。
(早川厚志)

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