IoT広告が目指す未来 (1) IoT・ウェアラブルの普及は、広告のあり方をどのように変えていくのか?

IoT広告が目指す未来 (1) IoT・ウェアラブルの普及は、広告のあり方をどのように変えていくのか?

画像提供:マイナビニュース

日本ではまだまだ定着していないコネクテッドホーム製品・IoT家電・ウェアラブルデバイス(以下、IoT)。海外では、日常に欠かせないものになりつつあります。本稿では、IoTがどのように消費者の生活と企業のマーケティング活動のあり方を変えていくのか。IoTを活用した広告の可能性について触れていきます。

例えば、米国では現在800万世帯がアマゾンエコー(Amazon Echo:スピーカ兼スマートホームハブ)を所有しています。「今日の天気を教えて」や「ビヨンセの最新アルバムが聞きたい」など、あなたの声と言葉に反応し、スマートフォンをポケットから出さずとも、音楽をかけたり、天気予報などの情報を得たりすることが可能です。

インターネット接続された冷蔵庫・食洗機、Google's Nestなど、照明やサーモスタットなど、家庭内のスマート化が進むと同時に、外出先でもIoT(Internet of Things)化された駐車メーターからチェックアウトカウンターまで、オートメーション社会は着々と進んでいくと考えられます。

IoTの世界市場は年平均16.9%のペースで成長し、2020年には1.7兆ドル(約191兆円)規模が見込める(IDC Worldwide Internet of Things Forecast, 2015 - 2020)一方、国内IoT市場は、2016年の支出額は5兆270億円であり、2016年〜2021年の年間平均成長率は17.0%(CAGR:Compound Annual Growth Rate)で成長し、2021年の支出額は11兆円に達すると予想されています(国内IoT向けITサービス市場予測/IDC Japan 2017年4月発表)。

IoTデバイスの急速な普及は、消費者の生活を変える可能性を秘めているだけでなく、遠くない将来、消費者行動に紐づく企業のマーケティング活動のあり方も変えていくでしょう。

5回の連載を通し、IoTの普及は、広告のあり方をどのように変えていくのか?というテーマを紐解いていきます。IoT向けサービス事業者のみならず、広告主、マーケティング関係者にもぜひ、読み進めてもらいたいと考えています。

○IoTと広告について

辞書の定義によれば、広告とは、商品・サービスなどを広く世間に告知し,購買欲をそそるためのコミュニケーション活動となっています。つまり、歴史的に、広告とは、ブランドと消費者の関係を構築するように設計されたメッセージで、広く遍くマスの関心を引きつけるためのものでした。

しかし、インターネットが登場し、特にモバイル革命が起きたことで、マーケターは、データを活用し、より顧客となる可能性が高い消費者に向けて、適切な手法やタイミングで、メッセージを配信することができるようになりました。

この点について、消費者のライフスタイルに寄り添うIoTは、広告プラットフォームとして、モバイル以上の可能性を秘めています。

以下のシーンを想像してみてください。

「朝起きてハミガキ粉が切れていることに気づいたときに、スマートミラーからマウスウォッシュやハミガキ粉の提案を受けたら?」「ランニングからの帰宅途中に、スマートウォッチから近所のスーパーでポカリスウェットがセール中と知らせを受けたら?」「仕事帰りの運転中にナビのモニターから、冷蔵庫のミルクが切れそうだというリマインド通知がされたら?」

広告主は、TVCMやドラッグストアの陳列スペースなど、消費者の興味関心を引きつけることにやっきになっています。しかし、洗濯用洗剤を購入してもらう最適なタイミングは、消費者が洗濯をしていて、今にも使っている洗剤が切れそうだと気づいた時ではないでしょうか。

このように、欲しいタイミングにすぐに注文できる時短に対する潜在的なニーズにいち早く気づき、応えたのがアマゾンダッシュボタン(インターネットに接続されたシングルボタンデバイス)でした。ワンプッシュで、いつものお気に入り洗剤、ミネラルウォーター、コンフレークなどの消費財を注文できてしまうのです。

ほしいタイミングに気の利いた提案を受け、すぐに注文できるという消費者の生活に寄り添うことが可能なIoTデバイスや、それとインテグレートしたアプリケーションの広告プラットフォームとしての可能性は無限大です。

さて、適切なメッセージを適切なタイミングで消費者に送信するという点において、IoT家電は広告との親和性が非常に高いと考えられます。にも関わらず、活用が進んでいないのはなぜでしょうか。

その現状に着目したのが、ウォートン・スクール(Wharton School、ペンシルベニア大学のビジネススクール)です。そして、パートナーとして、NY発の広告配信ソリューションを提供するGlassViewが業界初で、IoT家電やスマートウォッチに広告を配信する実証実験を開始しました。

○新たな機会

IoTが私たちの日常となり、消費者行動のデータ収集の新たなインタフェースとなれば、マーケティングのあり方は今とは異なるものになるでしょう。例えば、消費財メーカーは、消費者が詰め替えを必要とする可能性が高いことを知ることができ、自動車メーカーは消費者の日々の通勤ルートや、どのスーパーを通るかのデータを得ることができるようになります。

消費者にとっても、データを共有することのメリットがあります。IoTは彼らを日用品の購入というルーティーンから自由にして、余った時間をもっと別のやりたいことに活用できるようにするからです。そして、時短のみならず、スマートサーモスタットやスマートディッシュウォッシャーなどのIoTデバイスはさらに、自動的に無駄な電力と水をコントロールし、光熱費の節約にも役立ちます。

○課題:消費者データ

もちろん、良い面ばかりでなく、同時、課題も存在することをマーケターは認識する必要もあります。

適切なメッセージを適切なタイミングで消費者に送信することは、マーケティング担当者がその消費者に関する実用的なデータを持っていることを前提としています。言うまでもなく、このようなデータは消費者の個人情報であるため、消費者にデータ活用の了承を得ることが必要です。

日本国内では、まだまだ個人情報の提供に抵抗があるのが現状です。一方で、Intel Securityが行ったグローバル調査によれば、消費者の54%は、インセンティブとの引き換えに、IoTデバイスを通した個人データの収集に協力したいという調査結果を発表しました。

上記のように、マーケティング担当者が新しいフロンティアであるIoTの広告について、より深く考える時代が到来しつつあります。次回の記事では、IoTを活用した広告が本当に有効なのかについて、広告主から見たプロスコンス、実証実験データに基づいて触れていきます。

●(翻訳: 岩本香織 / GlassView Japan)

○MG(マイケル・ゴーフロン)

元IAB(Interactive Advertising Bureau)デジタルビデオ委員会の共同会長。現在は、世界をリードするソーシャルビデオ・プラットフォーム、GlassView(グラスビュー)の創設メンバーとして、業界初の最高ブランドセーフティ責任者を務める。これまでに、MTV、コンデナスト社に代表される、テレビ業界、パブリッシャー大手、広告代理店、動画アドテック大手を経験し、20数年に渡るキャリアをデジダル広告業界に捧げ、常に一歩先を行くテクノロジーの進化に貢献。2014年に、IABデジダルビデオ委員会の共同会長に抜擢され、現在のオンライン広告のおける技術的標準規格の策定・法整備に携わった。

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