NTTデータ、AI導入における活用例・課題・成功させる秘訣を解説

NTTデータ、AI導入における活用例・課題・成功させる秘訣を解説

画像提供:マイナビニュース

●AIが創作したコンテンツの著作権は誰のもの?

NTTデータはこのほど、AIに関するプレス向けセミナーを開催し、ビジネスの現場でのAIの活用事例、AIの活用を成功させるためのポイント、同社のAI分野における取り組みについて説明した。

○技術的特徴で3世代に分類できるAI

セミナーのスピーカーを務めた技術開発本部AIソリューション開発担当 課長の樋口晋也氏は、書籍『決定版AI 人工知能』の著者でもある。同氏は冒頭、「AIは人間の知能を置き換える技術というイメージが持たれているが、機械により人の知的活動を再現したものにすぎない」と、AIの定義を整理した。

同社はAIを3つの世代に分けているが、現在は第3世代にシフトしているという。

第1世代はルールベースのAI、第2世代は統計・探索モデルのAI、第3世代は脳モデルとなる。第3世代においては、ディープラーニングの進化により、画像や音声認識の性能が上がっているという。

樋口氏は、各世代のAIは技術的に異なっており、特徴を生かして組み合わせて使う必要があると述べた。

AIの活用例としては、「既存業務の効率化や高度化」「AIによる新規サービスの立ち上げ」「ビジネスの拡大加速」「リアル世界のインテリジェント化」が紹介された。

「AIによる新規サービスの立ち上げは今後増えるだろう。例えば、冷蔵庫にAIが搭載されたら、『いつ何を買って、何がいくつ入っている』といったことがわかるようになり、その情報に基づくレシピサービスができるかもしれない。また、ビジネスの拡大加速におけるAIの活用の代表例にUberやAirbnbがあるが、人間がAIを導入する上でのネックとなるので、いかにして人を介さないサービスを考えるかが重要」(樋口氏)

○AIが創作したコンテンツには著作権の課題も

次に、樋口氏はコンテンツを自動生成する分野の技術として、「画像からキャプションの生成」「画像の中のどの位置がどの単語と対応しているかを明示」「キャプションから画像を生成」を挙げたうえで、「この分野には法制上の課題がある」と語った。

法制上の課題とは何か。それは、AIが自動生成したコンテンツは著作物と見なされないというものだ。これは、人間がAIの支援を受けてコンテンツを創作した場合は著作権が発生するが、人間がAIに指示だけを出して創作した場合は著作権は発生しないことを意味する。樋口氏によると、AIが創作したコンテンツに関する著作権の問題を解決する方策は見えていないという。

ちなみに、樋口氏は、この著作権の問題はPoC(Proof Of Concept)においても発生していると述べた。「PoCにおいて顧客のデータを用いる場合、得られた新たな知見がだれのものか議論になることがある。そのため、事前に打ち合わせを行っている」と同氏。

樋口氏はAIが創作するコンテンツに関する実証実験として、ディープラーニングによるニュース記事の自動生成を紹介した。同社が行った実証実験では、4点満点で、文法の正しさが3.86点、意味の正しさが3.07点となったという。

海外でもディープラーニングを活用した記事の自動生成が盛んに行われているが、ルールベースで行われているため特定のジャンルの記事のみが対象となっているが、同社はディープラーニングを使っているため、必要なデータは多いが、ジャンルの横展開が可能とのことだ。

●AI導入の失敗のパターン、成功させるポイントは?
続いて、樋口氏はAIを導入するにあたっての留意点を紹介した。これまで、さまざまな企業のコンサルティングを行う中で得た、AI導入における失敗のパターンとして、以下のように、典型的な例を4つ挙げた。

目的なしにAIの導入の検討を開始した
必要なデータがない、もしくは、データの質が低い
AIで目的を実現できるが、投資対効果に見合わない
従業員の協力を得ることができない

こうした失敗パターンを踏まえ、AI導入を成功させるためのポイントとして、以下の4点が紹介された。

プロセス全体を見て、AIの導入先を決定する
第1世代か第3世代までのAI技術を織り交ぜて、適材適所で使う
ルール化隅のタスクはIT、経験則が必要なタスクはAIといったように分担する
人間とAIの違いを理解する

○「顧客接点」「業務高度化」「複合高度分析」の領域でAIを開発

さらに、樋口氏は同社のAIの開発と活用について説明した。同社は開発を行う上で、NTTグループのAIブランド「corevo」の下、「顧客接点」「業務高度化」「複合高度分析」の3つの領域に重点を置いている。

顧客接点の領域においては、「応対業務に必要な知識量の増大についていけない」という課題解決に向けて、AIの開発に取り組んでいる例が紹介された。「この課題はよくお客さまから言われること。毎年、新しいサービスが出る企業では、その違いを覚えきれず、適切な対処ができなくなっているので、AIで解決することを目指す」と樋口氏。

この課題を解決する技術として、コードネーム「conceptron」が開発されている。この技術は、ユーザーの質問の意図を理解して、正確な回答を支援するものだ。

同技術のポイントは、「音声を正しく認識できる」「多様な言い回しを理解して、正確な回答を支援できる」「語彙の意味体系の精度が高い」だという。

業務の高度化については、ホワイトカラー業務を仮想知的労働者で自動化する「RPA(Robotic Process Automation)」の適用を推進している。導入例として、加盟店審査支援システムにおいて、審査に必要な情報を自動で収集する仕組みが紹介された。

複合かつ高度な分析については、医療機関において患者の状態悪化を予兆検知するソリューション「Smart ICU」が紹介された。同ソリューションにおいては、患者1人当たり毎秒数千点の測定データを分析することで、症状が悪化する予測モデルを開発、予測に基づいたアラートをリアルタイムでドクターに提示する。

これまで行った実証実験では、8割から9割の確率で急病を予測できたとのことだが、樋口氏は「生命に関わるソリューションである以上、残りの2割を解決しなくてはならない」と述べた。

樋口氏は今後の展望として、「AIの進化によって、人間が失業するという報道もみられるが、AIによって人間ができることが増え、それによってビジネスが進化すると考えるべき」という見方を示した。
(今林敏子)