産総研、高温・高圧耐性に優れ形状を維持できる安全性の高いOリングを開発

産総研、高温・高圧耐性に優れ形状を維持できる安全性の高いOリングを開発

画像提供:マイナビニュース

産業技術総合研究所(産総研)は、同所ナノチューブ実用化研究センターCNT用途チームの小松正明特定集中研究専門員、阿多誠介研究員らのグループが、スーパーグロース法で作製した単層カーボンナノチューブ(SGCNT)を用いた、高温・高圧耐性に優れ、高温でも形状を維持できる安全性の高いOリングを開発したことを発表した。

配管や容器の漏れを防止するために、さまざまな材質のシール部材が用いられている。なかでも柔軟性を持つゴム製シール部材のOリングは、温度変化による漏れが生じにくく、取扱いが容易で繰り返し使用できるため使用範囲が広がっている。

現在、150℃以上の高温環境下で使われるゴム製シール部材には、球状のカーボンブラックを配合したフッ素ゴムが使用されているが、高温・高圧耐性には課題がある。具体的には自動車用途、化学プラント用途、発電用途、石油掘削用途などの過酷環境下において使用されるゴム製シール部材には、さらなる高温・高圧耐性が必要とされる。さらに、過酷環境下では内容物の漏洩は重大な事故につながるため、高温・高圧耐性を長期にわたり保持する長期耐久性も求められる。

産総研では、ゴムとSGCNTの複合化の研究開発を進めており、これまでにフッ素ゴムにSGCNTを複合化した耐熱性や耐熱水性の高いゴム材料や、それらの特性向上に向けたフッ素ゴムへのSGCNTの分散技術を開発してきた。また、ゴム製シール部材の開発も進めており、繊維構造のSGCNTをゴム中で分散して複合化すると、高温・高圧耐性は向上するが、ゴムの変形に対する復元力は低下することが明らかになっていた。

今回、ゴムの復元力を維持しながら部材の高温・高圧耐性を得るため、SGCNTとカーボンブラックを併用し、フッ素ゴムとの配合比率と混錬・架橋工程の最適化に取り組んだ。カーボンブラックは、フッ素ゴムに配合しても復元力に影響を与えないため、高温・高圧耐性とゴムの復元力を両立した新規なゴム製シール部材と、それを用いたOリングの開発に成功した。

このOリングは、SGCNTとフッ素ゴムを複合化しており、高温耐性においては230℃においてシール性を500時間以上保持し、フッ素ゴムが熱劣化・分解する400℃を超える高温環境下においてもSGCNTの繊維補強効果によって形状を維持できるなど、高温・高圧耐性に優れており、フッ素ゴムが熱劣化をする高温でも粉々にならず形状を維持できる。

さらに低温特性にも優れ、ゴム試験片を1.5倍に伸ばして凍結し、その後温度を上昇させ試験片が伸ばした量から10 %収縮した時の温度を測定した結果、-15℃という低温環境下でもゴムとしての柔軟性を保持することが確認された。

また、このOリングに用いられたSGCNTとカーボンブラックの配合比率、混錬・架橋工程は、さまざまな種類のフッ素ゴムに適用できるため、フッ素ゴムの種類を適切に選定することで、さまざまな応用用途に向けたOリングやゴム製シール部材の開発が可能だという。

今後は、CNT複合材料研究拠点においてゴム製シール部材の量産技術を確立し、成型金型のラインナップを増やし、3年以内に実用化する予定でだという。また、今回開発した配合比率、混練・架橋工程を活用し、要望のある応用用途に対応したゴム製シール部材の各種成形品のサンプル試作、提供を開始する予定とのことだ。
(早川厚志)

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