35000人の社員が利用する富士通の「テレワーク勤務制度」とは?

35000人の社員が利用する富士通の「テレワーク勤務制度」とは?

画像提供:マイナビニュース

●2年のトライアルを経た全社的な導入
富士通は、4月から全社員を対象とした「テレワーク勤務制度」をスタートさせた。仮想デスクトップやグローバルコミュニケーション基盤などのICTを活用することで、在宅勤務だけでなく出張中やサテライトオフィスでの勤務、移動中の業務遂行を可能にし、場所にとらわれないフレキシブルな働き方を可能にするものだ。

この取り組みは、約2年間のトライアルを経て正式に実現された。

「多様な人材が活躍し続けられる、多様で柔軟な働き方の実現という目的はもちろんありますが、そもそもはホワイトカラーの生産性向上を狙った風土改革の取り組みです。ICTの活用や制度の整備はそのためのもので、テレワークは働き方の選択肢のひとつということになります」と語るのは、富士通 人事本部 人事企画部の永楽智寛氏だ。

富士通は2010年から在宅勤務を取り入れてきた。当時は人事部主導で導入した制度で、週2日まで在宅勤務を認めるというものだった

「今回はトップダウンによる全社一丸となっての取り組みです。2010年当時と比較するとデジタル化も進歩していますし、時間外労働を削減しようという政府主導の取り組みもあります。労働時間を抑えつつ成長するために、ICTを活用した戦略的な働き方改革への取り組みはICT企業としての責務だと思っています」と永楽氏は語る。

○すべての社員に適用、魅力ある企業になるための手段

少子高齢化による労働人口の減少や2020年問題もある中、特に富士通が目指すのは柔軟な働き方を認めることで、社員が長く働き続けることのできる「魅力ある企業」になることだという。

「子育て世代の女性をターゲットにした取り組みではありません。さまざまな層に対応するダイバーシティの実現です。たとえば、育児休暇の取得や育児のための在宅勤務といった働き方も、女性だけでなく男性も実施できるようにと考えています。ワークライフバランスをしっかり実現させ、魅力的な会社にしたいですね」と語るのは、富士通 人事本部 人事企画部 シニアマネージャーの佐竹秀彦氏だ。

育児とともに離職のきっかけになりやすい介護について、今後が心配だと考える社員が多いことが社内アンケートやワークショップでわかったという。今すぐに介護しなければならないという人は少なくても、離れて暮らす親世代が年齢を重ねることで同居の必要性を感じている人や、近い将来、何らかの介護が必要になりそうだと感じている人が多かったという。

「柔軟な働き方ができなければ、働き盛りの世代が退職することにもなりかねません。また育児や介護の主役になりやすい女性にとっても、長く働きやすい良い会社だと思ってもらえなければ、魅力ある企業とはいえないでしょう。そういった問題への対応のひとつが、テレワーク勤務制度なのです」と佐竹氏は語った。

●働き改革における富士通のICT活用とは
富士通ではWeb会議、動画によるeラーニング、社内SNSといったICTを積極的に活用している。Web会議は会議のための移動時間等を削減するためのもので、職場における活用は定着している。動画の利用は社長メッセージなどをはじめとして会社側の考えを伝えるツールとしての利用が主だという。

「社内SNSはプロジェクト管理など業務のための利用が一番多いですが、サークル的なものもあります。またエンジニアの集まる技術コミュニティや、働く女性コミュニティなども作られています」と佐竹氏。社内のコミュニケーション場所として広く使われているようだ。

「他には、IDリンク・マネージャーUというPCの使用時間がわかるツールを利用しています。勤怠管理が打刻制なのですが、これによってPC利用時間とのギャップの見える化が図られます。また、本ツールは、残業申請を行う機能もあり、時間を意識した働き方を後押しします。」(永楽氏)

作業量や納期の関係から残業が必要になる時には、あらかじめツールを利用して上司に作業時間の見積もりを伝え、許可を得てから残業する仕組みだ。作業をしていたら結果的に終わらなかったから終わるまで残業する、というような働き方を認めないことは、個人の効率的な働き方の追求や意識改革にもつながりそうだ。

「生産性向上のために、一人一人の時間意識を高めたいのです。テレワークはそのための手段ですが、それ以上に大切なのがマインドの変化です。しっかりと取り組みの趣旨や狙いを伝えていこうとしています。また、深夜労働については育児中の社員などから時間的に余裕のある深夜帯を使いたいという要望もあるのですが、健康に差し障りのない範囲を今後見極めて考えたいところです」(佐竹氏)

●評価はアウトプットを見る!マネージャー層に意識改革を迫りながら導入
制度を作り、システムを導入し、トライアルも行った上での新制度導入だが、全社員を対象にしているものの、現在はまだ段階的な導入を行っている。それは、富士通が重視するポイントをしっかりと社員に伝えるためだという。

「基本的に全社員を対象としていますが、実際の導入・運用は本部単位です。本部ごとに利用するかどうかを決めてもらうのですが、組織的に、積極的に考えてほしいと伝えたところ、予想以上に希望する本部がありました。そのため、何を目的とした制度なのか、どういう風に社員のマインドを変化させてほしいのかといったことを伝えるために時間をかけて説明会を行ったうえで活用をスタートしています。」(永楽氏)

これはトライアルから見えてきた課題に対応したものでもある。管理する上司側も、オフィスを離れて働く労働者側も、勤務状態が見えないことに不安を抱く。時間管理や労働成果の見える化を実現するためにIDリンク・マネージャーUのようなツールも導入したが、成果の図り方等のマインドセットも重要だとわかったという。

「社員が事務所に出社しないことで不安を持つ管理職もいますが、その日にどんな仕事をどれだけやるのかということを事前に上司とコミュニケーションして、納期とクオリティを守って納品してもらえることが重要です。事前コミュニケーションとアウトプットをレビューすればよい問題で、作業の様子を近くで見る必要はないのですが、これにはマネージャーのマインドセットが必要になります。現在はテレワーク向けの説明会で、こうしたマネジメントのポイントを伝えています。」と佐竹氏は語った。

もちろん、実際に働く中で評価がしづらい、業務が行いづらいといった意見が出る可能性はある。そういった声は3カ月程度のスパンで拾い上げ、課題を共有することで解決を図って行く予定だ。

○全社員がフレキシブルかつ効率的に働ける環境を目指す

展開が進めば、最終的に特段の事情があって導入を行わなかった本部を除いて、全社員がテレワークを行えるようになる。業務内容等によって向き不向きはあるため、チームや上司との話し合いは必要だが、基本的には生産性が落ちないのならば育児や介護といった事情のある人だけでなく、誰でも利用になる制度だ。

「私自身テレワークを積極的に利用してみましたが、思った以上に問題なく働けます。こういった制度は社員と企業の両方にメリットがなければダメで、企業のために社員に負担をかけるのもダメですが、社員だけが得をするものでもあってもいけません。その点、生産性を落とさずに柔軟に働けるというのは両者にメリットがあるものです」(佐竹氏)

誰でも使えるとはいうものの、自由気ままに働いてよいという意味ではない。たとえば、二日酔いがつらいから家で仕事をしたいというのでは困るが、交通機関に乱れがあるから効率を考えて家で作業をするというのはよい選択だ。

「むしろ交通機関が乱れている時などは、積極的に使ってほしいですね。日本人の気質なのでしょうが、弊社はいままで台風でも雪でもがんばって出社してしまう人が多くいました。時間をかけて不安定な状態で出社するので、時間も無駄ですし体力的にもロスが大きいです。テレワークを上手に利用して、そういう無駄をなくしたいですね」と佐竹氏は語る。

サテライトオフィスとして汐留本社に「F3rd Shiodome」という、富士通グループの社員が利用できるワークスペースが用意されている。こうしたワークスペースは、各事業所に拡大していきたいという。「必要があれば事業所以外の場所にも拠点を作るなどしたいですね」と佐竹氏は今後の展望を語った
(エースラッシュ)

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