植物種子、情報統合が可能 - 弘前大など オオバコの発芽実験

植物種子、情報統合が可能 - 弘前大など オオバコの発芽実験

画像提供:マイナビニュース

弘前大学農学生命科学部の山尾僚助教と、森林総合研究所の向井裕美研究員は、オオバコの種子が、近くに存在する種子を識別して発芽タイミングを変化させることを発見した。これは植物の種子が情報統合を可能とすることを示す初の報告だ。また遺伝子的に近い種子が存在する中で他種に遭遇した場合、発芽タイミングが同期することもわかった。

あらゆる生物は、生活の中でさまざまな選択に直面しており、複数の異なる情報を総合的に考慮して決定を下す必要がある。こういった情報統合は、情報処理システムを備えた成熟した個体を中心に検証されてきた。しかし、未熟な発達段階である動物の卵や植物の種子もまた、捕食や競争などの危険にさらされており、孵化や発芽のタイミングを変える等して対処しなくてはならない。そこで、生物の胚も成熟個体と同様に情報統合能力を備え、複数の生物的な情報に応じて孵化や発芽のタイミングを決めることができると予想し、オオバコを用いて「同種の種子の遺伝的類似度」と「他種競争者の有無」という2種類の異なる条件が存在する環境で種子の発芽応答を調査した。

本研究では、オオバコと同所的に繁茂しているシロツメクサの種子を用いて、1つの栽培容器の中に、遺伝的に近いオオバコの種子・遺伝的に遠いオオバコの種子・シロツメクサの種子を組み合わせを変えて入れ、各実験で約80個のオオバコの種子の発芽タイミングがどのように変わるかを調査した。なお、同じ親株から採取された種子を「遺伝的に近い種子」、別の親株から採取された種子を「遺伝的に遠い種子」とする。

その結果、オオバコの種子は、遺伝的に近い種子が近くに存在する状況で他種と遭遇した場合のみ、発芽を早めることが分かった。またこのとき、他種に遭遇した遺伝的に近い種子同士は 他種に遭遇していない場合に比べてより同期して発芽することも明らかにした。これらの結果は、オオバコの種子が「同種の種子の遺伝的類似度」と「他種の存在」という2種対の情報を統合して発芽のタイミングを変化させること、遺伝的に近い種子は互いに情報のやり取り(コミュニケーション)を行い発芽するタイミングを計っていることを示唆している。種子が温度や光などの非生物的な環境情報に応じてふるまいを変えることは以前から知られていたが、同種や他種の競争者といった複数の生物学的情報を利用していることは、本研究により初めて明らかになった。

さらに、種子を水に浸漬して得た抽出物を用いた実験より、オオバコの種子は水溶性の化学物質を介して周囲の情報を識別していることも明らかになった。種子が水溶性の化学物質を受容できることは多くの種でも確認されているため、オオバコ以外の種子でも、化学物質を利用した情報統合やコミュニケーション能力を普遍的に獲得している可能性がある。

本研究では今後、オオバコの種子が周囲の情報を識別し統合、あるいは遺伝的に近い個体とコミュニケーションをするメカニズムについて解明していく考えだ。さらに、このような種子の情報統合能力が、発芽以降の植物の成長や生存に果たす役割についても解明が期待される。
(田中省伍)

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