急速冷凍して作った氷、液体だったことが判明 - ストックホルム大など

急速冷凍して作った氷、液体だったことが判明 - ストックホルム大など

画像提供:マイナビニュース

水は私たちにとってもっとも身近な物質の1つだが、「固体より液体のほうが密度が高くなる」「4℃以下で負の膨張率をもつ(冷やせば冷やすほど膨らむ)」など、他の物質にはあまりみられない変わった性質を数多くもっていることでも知られる。このため水の物性に関する研究は今でも活発に続けられている。

ストックホルム大学をはじめとする国際研究チームはこのほど、従来「アモルファス氷」と呼ばれていた特殊な状態の氷が、固体ではなく、実際には液体であることを確認したと発表した。アモルファス氷には低密度と高密度の2つの種類があるため、極低温では液体の水が2種類存在していたことになる。研究論文は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。

水分子が規則的に配列した氷の結晶とは異なり、秩序が乱れた乱雑な構造をもった氷が存在することは以前から知られていた。こうした乱雑な氷は、ガラスにみられるアモルファス構造と似ているため、「アモルファス氷」と呼ばれてきた。

アモルファス氷は日常生活(地球上の自然環境中)ではほとんどみられないが、宇宙空間などでは普通に存在する水の状態であるとされる。液体の水を急速冷却すると、結晶化する時間もないうちに水分子の動きが固まるためアモルファス氷が生成される。あるいは、気相蒸着法を用いたり、氷の結晶に圧力をかけてアモルファス化するといった方法によっても、アモルファス氷を実験的に生成することができる。

研究チームは今回、アモルファス氷の物性について調べるため、米アルゴンヌ国立研究所(ANL)およびドイツ電子シンクロトロン(DESY)のX線施設を利用して、高分解能での構造分析を行った。

高密度のアモルファス氷(HDA)を温めると、体積が約25%突然増大し、低密度のアモルファス氷(LDH)に変化することが知られている。このHDAとLDAの間の状態変化について、原子レベルでの構造特定が可能な広角X線散乱法と、ナノスケールでの動態分析を行えるX線光子相関分光法という2つの手法を組み合わせて分析した。

アモルファス氷中の分子同士の相対的な位置関係の分析から、HDAがLDAに変わるときには液体の水に典型的にみられる拡散現象が起こっていることがわかった。これはアモルファス氷と呼ばれる状態が、実際には非常に粘度の高い液体であることを意味している。X線による測定でこのような分子同士の位置関係の変化まで特定できるのは、極低温では水の粘度が非常に高くなるため、状態変化および拡散現象がゆっくりと進むためであるという。

ガラスは固体のように見えるが、結晶ではないため、「極端に粘性が高く動きが止まった液体である」と説明されることがある。アモルファス氷もこの意味で液体であるといえるが、今回の研究ではさらに、HDAからLDAへの変化において、実際に液体の特徴である拡散挙動が見られることが確認されたことになる。

通常、液体中では分子がランダムに運動しているため、複数の結晶構造が存在する氷とは違って、液体の水であればどれも性質は同じであり区別がつかないはずである。しかし今回の研究では、少なくとも極低温では2種類の液体の水(低密度と高密度)が明確に区別できるとされたわけで、非常に興味深い結果である。

今回の研究は、水の物性解明という基礎科学上の成果であると同時に、生命活動にとって重要な塩や生体分子などがどのように水に影響を及ぼすかという問題にも関係しており、水の浄化や脱塩技術などへの応用可能性もあると研究チームはコメントしている。
(荒井聡)

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