シリコンバレー101 (715) iPad Proをメインマシンにして1年、10.5" iPad Proと新Surface Proを比較

シリコンバレー101 (715) iPad Proをメインマシンにして1年、10.5" iPad Proと新Surface Proを比較

画像提供:マイナビニュース

MicrosoftがSufaceでAppleを真似ているのではなく、AppleがSurfaceを追っているというMicrosoftのRyan Gavin氏のコメントがしばらく前に話題になった。

「Microsoftは長い年月をかけて2-in-1カテゴリの製品を研究し、そして磨き上げてきた。Surfaceを最初にリリースした時、彼ら (Apple)を含めて誰もが懐疑的だった。ところが認めざるを得なくなって追いかけ始めた。iPad Proがその明らかな例である」(Business Insider: A Microsoft exec said that the iPad Pro is a 'clear example' of Apple following Microsoft)

本体はタブレット、マグネットで着脱できるキーボードでノートPCのようにも使える。そうしたスタイルからGavin氏はAppleがSurface Proを「追っている」と言っているのだろう。また、多くの人がSurface ProとiPad Proは同じカテゴリーの製品と見なしている。だが、実際に両方を使ってみると、2つは「似て非なるデバイスである」と分かる。

今年1月に「12.9インチ iPad Proを仕事のメインマシンに、6カ月で変わったのは…」で、私がiPad Proをメインマシンにして半年を過ごしてきた経験を紹介した。それからもタブレット中心のワークスタイルを続けているが、メインマシンが12.9インチのiPad Proではなくなった。今は10.5インチのiPad Proと新しいSurface Proを交代交代で使い比べている。

1月時点ではファイルマネージャー、つまりWindowsのファイルエクスプローラーまたはMacのFinderに相当するようなツールがiOSにはないことに文句を言い、そして12.9インチiPad Proの広い画面を活かし切れていないiOSのユーザーインタフーイスを嘆いていた。その後、6月にAppleがWWDCにおいて、iPadのプロダクティを強化する新機能を多数備える「iOS 11」を発表した。ファイルマネージメント・アプリ「Files」をiPadに追加し、ドラッグ&ドロップを使ったマルチタスクを実現する。今、私がiPad Proに抱いている不満を「全て」とは言わないが、大いに和らげてくれそう。それなら……と、iPad Proを最新の10.5インチモデルにアップデートし、しかしiPad Pro一辺倒ではなく、より深くタブレットをメインマシンにするスタイルを評価できるようにSurface Proも日常使いに組み入れた。

10.5インチのiPad Proは薄くて軽く、120Hzのリフレッシュレートのなめらかなディスプレイを搭載する。Surface Proはキックスタンドを備え、USBポートを持ち、タイプカバーでもキーをクリックする一般的なキーボードが用意されている。どちらかを選ぶ上でのポイントとしてよく挙げられている違いだが、それらは2つが"似た"デバイスの範疇の違いである。2つが"非なる"デバイスであるのは、iPad ProがiOSデバイスであり、Surface ProがWindows 10デバイスであるということだ。「何をいまさら」と思うかもしれないが、どちらが自分に適しているかを判断する上で最大のポイントになると思う。

iOSは画面に触れて操作し、またインターネットに常につながっているのを想定したプラットフォームである。Windows 10はスタンドアロンのパソコン向けOSを根としており、2-in-1でもその特徴が色濃く残っている。つまり、iPadはポストPCデバイスであり、Surface ProはPCであることに軸足を置いている。この違いが、それぞれの良さと課題となっている。

たとえば、ペンである。Webブラウザで長いページを開いて、手にデジタルペンを持っている。ペンを使って、どのようにスクロールするか? 指先でスクロールするスマートフォン世代は、ペン先を画面に当てて動かしたらスクロールされると思う。実際、Apple Pencilは指で触れるのと同じで、ペン先を画面に当ててブラウザをスクロールしたり、ホーム画面の間の移動、スワイプしながら写真を閲覧といったことを行える。SurfaceのSurface Penではそれができない。基本的にマウスと同じで、ペン先で触れるのは左クリック扱いになる。Webページをスクロールするにはスクロールバーにペン先を合わせなければならない。PC世代は苦にならないと思うが、スマホ世代は戸惑うだろう。

一方で、iPad ProのSmart Keyboardは「キーボードも使える」というシンプルなもので、ソフトウエアキーボードでテキストを打つスマホ世代には十分かもしれないが、生産性の高いキーボードとは言いがたい。Suface Proはデスクトップ版のWindows 10で動作するだけに自由度が高く、キーボード/トラックパッド、そしてマウスも使用できる。その操作体験はPCユーザーがノートPCに期待するレベルだ。

「Mac用のOSでiPadを使いたい」と言う意見を時々目にする。たしかにPC用OSの自由は魅力だが、macOSをそのままiPadにインストールしても使いにくいと思う。タッチ操作デバイスであるiPadにはタッチ操作に最適化されたiOSが適している。Windows 10はタブレット・モードというタッチ操作向けのUIモードを備えるが、タッチ操作に最適化されたiOSに比べると、タッチ操作で戸惑うことが多い。タブレットとして優れるSurface Proを使っていると、タブレット・モードで活かされていないのが残念で、私の場合は「Surface ProをiOSで使ってみたい」と思ってしまう。

AppleのTim Cook氏は「iPad Proは多くの人にとってノートPCやデスクトップPCの代わりになる。使い始めたら、スマートフォンを除いて、他のデバイスは必要ないという結論に至る」とTelegraphのインタビューで述べていた。

「代わりになる」といっても、iPad ProはノートPCではない。ノートPCでできること全てをiPad Proで行うことはできない。PCでなければできないこと、PCの方がうまくできることは、これからもあり続け、PCは求められ続けられるだろう。iPad ProはノートPCの完全な代わりにはならない。でも、ノートPCがiPad Proの完全な代わりにもなれない。iPad ProはPCとは違った形で多くの人々のニーズを満たし、PCにはない体験も提供する。iPad Proで十分に満足できるという人がすでに「多く」であるかは意見が分かれるところで、私はまだPCを求める人の方が多いように思うが、時間とともにPCにこだわる人は少なくなるだろう。

スマホ世代はすでにiPad Proにすんなりと入っていけている。たとえば、YouTubeで「how to take note with tablet」と検索すると、大学生によるiPad Proを使ったノート取りのハウツー動画がたくさん結果にリストされる。Surface Proを使った動画とは数にかなり差がある。しかし、PCユーザーがこれまでのPCの体験をイメージしてiPad Proで何でもやろうとすると「あれもできない、これもできない」になってしまう。そうしたユーザーのニーズをSurface Proは満たしてくれる。

Surfaceで評価したいのは、一般的なユーザーが欲しいものを提供する「ユーザーを見据えた設計」であること。AppleのポストPC推しに戸惑っていたPC世代の要望に、Surfaceチームは巧みに応えた。次はポストPC世代である。5月に発表した「Surface Laptop」は外観こそノートPCだが、Windows 10 Sを搭載する同製品は、PC世代向けのWindows 10を搭載したタブレットであるSurface Proの逆。ポストPC世代にフィットするWindows 10を搭載したノートPCである。

Windows 10の次期メジャーアップデート「Fall Creators Update」には間に合わないが、MicrosoftはWindows 10プラットフォームで「Timeline」「Pick Up Where You left off」「Cloud Clipboard」といった機能の提供を計画している。ファイル、アプリ、Webサイトなどの履歴をクラウドに保存し、同じMicrosoft IDで接続している複数のデバイスの間で、作業の再開、クラウドを介したコピー&ペーストを実現する。このクラウドをハブにデバイスが連携するプラットフォーム機能と、年内の登場が期待されている常時接続可能なARMベースのモバイルWindows 10 PCで、MicrosoftもポストPC世代の攻略を本格化させる。 AppleがiOS 11でiPad Proの生産性を向上させるのとは逆、MicrosoftはWindowsデバイスのモビリティと接続性を強化し、Appleの市場に本格的に食い込んでいく。本当の競争はそこからだ。
(Yoichi Yamashita)

関連記事(外部サイト)